「固定残業代じゃ割に合わない!」退職者からの差額請求通知書

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「固定残業代じゃ割に合わない!」退職者からの差額請求通知書

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【1】書式概要

 

この書式は、会社を退職した方が、在職中に「固定残業代」や「みなし残業代」として処理されていた残業代について、実際の労働時間が対象時間を超えていたにもかかわらず差額が支払われなかった場合に、元の勤務先に対して未払い分を請求するための通知書テンプレートです。

 

固定残業代とは、「月給に30時間分の残業代を含む」といった形で、あらかじめ一定時間分の時間外労働に対する割増賃金を給与に組み込む制度です。求人票で「月給25万円(固定残業代40時間分含む)」などと記載されているのを見たことがある方も多いでしょう。この制度自体は違法ではありませんが、実際の残業時間が固定残業代の対象時間を超えた場合には、超過分を別途支払う義務が会社にあります。ところが、この超過分を払わないまま放置している会社が非常に多いのが実態です。

 

この通知書は、退職した元従業員が、在職中の雇用契約でどのように固定残業代が定められていたか、実際にどの程度の時間外労働をしていたか、深夜労働や休日労働の有無などを整理して記載し、元の勤務先に対して差額の支払いを正式に求める内容になっています。月60時間を超える時間外労働の追加割増(50%)についても請求項目に含めています。

 

IT企業やベンチャー、営業職など、固定残業代制度がよく使われている業界を退職した方が、「あの残業代、ちゃんともらえていなかったのでは」と気づいた際に、元の勤務先に送る最初の一歩としてお使いいただけます。Word形式なので、ご自身の状況に合わせて退職日や具体的な数字、会社名を自由に編集できます。

 

 

 

 

【2】項目タイトル

  1. 固定残業代制度の運用実態  
  2. 請求の根拠
  3. 請求の内容
  4. 回答期限

 

 

 

 

【3】各項目の解説

 

1. 固定残業代制度の運用実態

この項目では、在職中に会社がどのように固定残業代制度を運用していたのか、そして実際の労働時間がどうだったのかを具体的に説明します。退職後に請求する場合、在職中の事実関係を明確に整理しておくことが重要です。

 

(1) 雇用契約上の定め

ここでは、入社時に交わした雇用契約書や労働条件通知書に固定残業代がどのように記載されていたかを明らかにします。固定残業代が有効と認められるためには、基本給と固定残業代が明確に区分されていること、何時間分の残業に相当するかが明示されていることが必要です。

 

たとえば、「月給28万円」とだけ書かれていて内訳の説明がなかった場合、そもそも固定残業代として有効かどうかが疑わしくなります。採用面接で「残業代込みです」と口頭で言われただけで、書面に何も書いていないケースも問題があります。退職後でも、手元に残っている雇用契約書のコピーや、入社時のメールなどを確認してみてください。

 

(2) 在職中の実際の労働時間

ここでは、在職期間中に実際どのくらい残業していたかを説明します。固定残業代が「月30時間分」と定められていたのに、毎月60時間以上残業していたといった実態があれば、30時間を超えた分は別途支払われるべきでした。

 

あるIT企業を退職したCさんのケースでは、「固定残業代は月45時間分と説明されていたが、実際は毎月70〜80時間残業していた。超過分は在職中一度も支払われなかった」という状況でした。退職後に計算してみたところ、2年間で100万円以上の未払いがあることがわかり、請求に至りました。

 

(3) 深夜労働・休日労働について

固定残業代に深夜割増や休日割増が含まれているかどうかは、契約内容によります。多くの場合、固定残業代は通常の時間外労働(25%増し)のみを対象としており、深夜労働(さらに25%増し)や休日労働(35%増し)は別途支払われるべきものです。

 

在職中にシステム開発のプロジェクトで徹夜作業が続いた、毎週のように土日出勤があったといった方は、この部分も請求対象になる可能性があります。退職してからでも、当時の勤務実態を思い出して記載してください。

 

2. 請求の根拠

この項目では、なぜ退職後でも差額を請求できるのかという根拠を説明しています。固定残業代制度は、対象時間を超えた分について差額を支払うことが大前提です。「固定」という名前から「何時間働いても同じ」と誤解している会社もありますが、それは間違いです。

 

また、固定残業代が有効であるための3つの要件(基本給との区分、対象時間の明示、超過分の支払い)についても触れています。これらの要件を満たしていない場合、そもそも固定残業代自体が無効となり、在職期間中の残業代全額が未払いとして請求できる可能性もあります。

 

3. 請求の内容

この項目では、在職期間中の未払い分として具体的に何を請求するのかを列挙しています。固定残業代を超過した分の割増賃金に加え、月60時間超の追加割増(50%部分)、深夜割増、休日割増、そして遅延損害金を請求項目として挙げています。

 

遅延損害金は、本来支払われるべき日から遅れた分に対して発生する利息のようなものです。退職後の未払賃金については年14.6%の遅延損害金が認められる場合があり、在職期間が長いほど金額が膨らむことがあります。

 

4. 回答期限

この項目では、元の勤務先に対して14日以内の回答を求めています。退職後の請求であっても、期限を明示することで会社に対応を促し、放置された場合の次のステップへの布石になります。

 

労働基準監督署への申告、労働審判の申立て、その他法的措置という選択肢を示すことで、会社側に「このまま無視すると問題が大きくなる」と認識させる効果があります。退職者からの請求だからといって軽視できないことを伝える重要な項目です。

 

 

 

 

【4】FAQ

 

Q1:退職してからどのくらいの期間まで残業代を請求できますか?

残業代の請求権には時効があります。2020年4月1日以降に発生した賃金は3年間、それ以前に発生した賃金は2年間が時効となっています。退職後も時効は進行しますので、「あのとき残業代がおかしかった」と気づいたら早めに行動することをおすすめします。

 

Q2:退職時に証拠を持ち出していませんでした。今からでも請求できますか?

請求自体は可能です。会社には労働時間の記録を一定期間保管する義務がありますので、通知書と併せて勤務時間記録の開示を求めることができます。また、当時の業務メールの送信時刻、スマートフォンのGPS履歴、交通系ICカードの利用履歴なども証拠として活用できる場合があります。

 

Q3:固定残業代の金額や時間数が雇用契約書に書いていなかった場合はどうなりますか?

基本給と固定残業代が明確に区分されていない、または対象時間が明示されていない場合、固定残業代自体が無効と判断される可能性があります。その場合、在職期間中の給与全額が基本給として扱われ、残業代は一切支払われていなかったことになります。請求額が大幅に増える可能性があるため、当時の契約書の記載内容をよく確認してください。

 

Q4:月60時間超の割増率50%は、いつから適用されますか?

大企業では2010年から適用されていましたが、中小企業については2023年4月から適用されています。それ以前の期間については、中小企業でも通常の25%割増のみとなります。在職期間がいつだったかによって計算方法が変わりますのでご注意ください。

 

Q5:退職時に「一切の請求をしない」という書面にサインしてしまいました。

退職時の合意書や誓約書の内容によりますが、労働者の権利を一方的に放棄させるような合意は無効とされる場合があります。サインしたからといって必ずしも請求できなくなるわけではありません。

 

 

 

 

【5】活用アドバイス

 

この通知書を効果的に使うためのポイントをお伝えします。

まず、手元に残っている雇用契約書や労働条件通知書を探してください。固定残業代が何時間分でいくらと定められていたか、基本給との区分が明確だったかを確認することが出発点です。見つからない場合でも、求人票のコピーや採用時のメール、給与明細の記載などから情報を集められることがあります。

 

次に、在職中の労働時間を証明できる資料を思い出してください。退職前にタイムカードのコピーを取っていなくても、当時の手帳やカレンダーへの書き込み、業務メールの送信時刻、チャットツールのログ、交通系ICカードの利用履歴などが参考になります。同僚の証言が得られる場合もあります。

 

通知書は内容証明郵便で送付することをおすすめします。「いつ、どのような内容の文書を送ったか」が記録に残り、時効の完成猶予効果も得られます。電子内容証明(e内容証明)を使えばオンラインで手続きできます。

 

退職後の請求では、会社側が「もう辞めた人だから」と対応を後回しにすることがあります。期限を過ぎても回答がない場合は、労働基準監督署への相談や労働審判の申立てを検討してください。退職者だからといって権利がなくなるわけではありません。

 

請求金額が大きい場合や、固定残業代の有効性自体に疑問がある場合は、弁護士への相談をおすすめします。残業代請求を得意とする弁護士は着手金無料・成功報酬制で受けてくれる事務所もあり、退職後の請求案件も多く扱っています。

 

 

 

 

 

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