【1】書式概要
この文書は、企業が管理職や役職者に対して毎月支給する役職手当の支給ルールを明確にするためのものです。会社で係長や課長、部長といった役職に就いている社員に、その責任や役割に応じた追加の手当を支給する際、金額や支給のタイミング、どんな場合に手当が止まるのかといった基本的な決まりごとを文書化しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
特に中小企業やこれから組織を大きくしていく会社では、人が増えてくると役職も増え、それに伴って給与体系も複雑になってきます。そんなとき、口約束だけで運用していると「昇進したのに手当がいつから付くのか分からない」「兼務している場合はどうなるの?」といった疑問や不満が出てきてしまいます。この規程を作っておけば、社員も会社側も同じ基準で判断できるので、給与計算がスムーズになりますし、社員からの信頼も得やすくなります。
実際に使う場面としては、新しく管理職制度を導入するとき、既存の手当制度を見直すとき、または労務監査や社労士さんからの指摘で規程整備が必要になったときなどが挙げられます。Word形式で編集できるので、自社の役職名や金額、細かいルールを簡単にカスタマイズできるのも便利なポイントです。専門的な知識がなくても、必要な部分だけ書き換えればすぐに使い始められます。
【2】条文タイトル
第1条(総則) 第2条(支給対象者) 第3条(支給額) 第4条(支給期間) 第5条(役職兼務のとき) 第6条(支給制限) 第7条(時間外手当等の取り扱い)
【3】逐条解説
第1条(総則)
この条文は規程全体の目的を示しています。つまり、この文書が「役職に就いている人への手当をどう決めるか」を定めたものだと宣言しているわけです。会社の中でいろんな規程がある中で、この規程が何を扱っているのかを最初にはっきりさせておくことで、読む人が迷わずに済みます。例えば、基本給や賞与については別の規程で決めるけれど、役職手当についてはこの規程を見てね、という整理ができるんです。
第2条(支給対象者)
誰が役職手当をもらえるのかを定めた条文です。ここでは「係長以上」と線引きしています。つまり、一般社員や主任クラスは対象外で、係長、課長補佐、課長、次長、部長といった管理職的なポジションに就いている人だけが受け取れるということです。会社によっては「課長以上」とすることもあるでしょうし、逆に「主任から」とする場合もあります。この条文を自社の組織に合わせて調整することで、どこから管理職扱いにするかが明確になります。
第3条(支給額)
各役職ごとにいくら手当を支給するかを具体的に示す条文です。●●の部分に実際の金額を入れることになります。例えば部長なら月5万円、課長なら3万円、係長なら1万円といった具合ですね。この金額設定は会社の規模や業界、地域によって全然違ってきます。スタートアップなら少額から始めることもあるでしょうし、大きな組織なら責任の重さに応じてかなり高額に設定することもあります。ここを明文化しておくことで、昇進のモチベーションにもつながりますし、給与計算のミスも防げます。
第4条(支給期間)
手当をいつから支給して、いつ止めるのかというタイミングを決めた条文です。役職に就いた月から支給開始、役職を外れた翌月から停止というのが基本ルールです。さらに第2項では、昇進や降格があった場合の扱いも定めています。例えば4月1日に係長から課長に昇進したら、4月分の給与から課長の手当が付くということです。逆に降格の場合は、その月はまだ元の役職の手当がもらえて、翌月から新しい役職の手当に切り替わります。この辺りをあいまいにしておくと、給与明細を見た社員から「今月はどっちの手当なの?」と問い合わせが来たりするので、きちんと決めておくと楽です。
第5条(役職兼務のとき)
一人で複数の役職を兼務する場合の取り扱いを定めています。例えば営業課長と企画課長を兼務しているような場合、二つ分の手当を出すのではなく、上位の方だけを支給するというルールです。実務的には、同じ職位の役職を兼務しているなら一つ分だけ、もし課長と部長を兼務しているような場合なら部長の手当だけを支給する形になります。これは二重払いを防ぐための規定で、コスト管理の面でも重要です。
第6条(支給制限)
手当を支給しない場合について定めた条文です。ここでは「給与計算期間のすべてを欠勤したとき」という条件が書かれています。つまり、1ヶ月間まるまる休んでいた場合は役職手当も出ませんよ、ということです。数日の欠勤なら通常通り支給されますが、病気や私用で1ヶ月丸ごと休むような場合には手当もストップします。会社によっては育児休業中や休職中の扱いをもっと細かく決めることもあるでしょう。
第7条(時間外手当等の取り扱い)
課長以上の管理職には残業手当や休日出勤手当を払わないという内容です。労働基準法では、管理監督者は時間外手当の対象外とされていますが、どこから管理監督者扱いにするかは会社が決められます。この規程では「課長以上」と線引きしているわけです。つまり係長や課長補佐は残業すれば残業代が出るけれど、課長、次長、部長は役職手当をもらっている代わりに残業代は出ないという整理になります。ただし、これは法律上の「管理監督者」の要件をきちんと満たしている必要があるので、実態として経営判断に関与していない名ばかり管理職には適用できません。その点は運用する際に注意が必要です。
【4】FAQ
Q1. この規程は必ず作らないといけないものですか?
A. 義務ではありませんが、役職手当を支給しているなら作っておくことを強くおすすめします。規程がないと、支給基準があいまいになり、社員とのトラブルや給与計算ミスの原因になります。
Q2. 金額部分が●●となっていますが、どう決めればいいですか?
A. 自社の給与水準や業界相場、責任の重さなどを考慮して決めてください。同業他社の水準を調べたり、社労士に相談するのも良い方法です。一度決めた後も、定期的に見直すことが大切です。
Q3. 係長以外から対象にしたい場合はどうすればいいですか?
A. 第2条の「係長以上」という部分を「主任以上」や「課長以上」など、自社の組織に合わせて書き換えれば大丈夫です。
Q4. パートやアルバイトの役職者にも適用できますか?
A. 基本的には正社員を想定していますが、パート社員でもリーダー職などに手当を出したい場合は、第2条に「ただし、パートタイム従業員については別に定める」などの文言を追加すると良いでしょう。
Q5. 就業規則との関係はどうなりますか?
A. この規程は就業規則の下位規程という位置づけになります。就業規則に「役付手当については別に定める」といった記載を入れておくとスムーズです。
Q6. 役職手当は社会保険料の計算に含まれますか?
A. はい、含まれます。役職手当も賃金の一部なので、社会保険料や雇用保険料、所得税の計算対象になります。
Q7. 一時的に代理で役職を務める場合も手当は出ますか?
A. この規程では明確に定めていないので、別途ルールを決める必要があります。例えば「1ヶ月以上の代理期間については手当を支給する」といった規定を追加すると良いでしょう。
Q8. 降格時の手当はいつから変わりますか?
A. 第4条第2項により、降格した月の翌月から新しい手当額になります。降格した月は元の手当がもらえるということです。
【5】活用アドバイス
この規程を導入する際は、いきなり全社に配布するのではなく、まず経営陣や人事担当者で内容を精査し、自社の実態に合っているか確認しましょう。特に金額設定は慎重に検討する必要があります。業界水準や自社の給与テーブル、今後の昇進予定者数なども考慮して、無理のない設定にすることが大切です。
規程を作ったら、必ず全社員に周知してください。特に現在役職に就いている人や、これから昇進する可能性のある人には丁寧に説明しましょう。「今まで口約束だったものを明文化しました」と伝えれば、むしろ透明性が増したと評価されるはずです。
また、この規程は一度作って終わりではありません。組織が大きくなったり、新しい役職ができたり、人事制度を見直したりするタイミングで定期的に見直すことをおすすめします。年に一度、人事評価の時期などに合わせてチェックする習慣をつけると良いでしょう。
給与計算ソフトや勤怠管理システムを使っている場合は、この規程の内容を設定に反映させることも忘れずに。役職情報と連動して自動で手当が計算されるようにしておけば、計算ミスを防げます。
さらに、社労士さんがいれば、この規程を見てもらってアドバイスをもらうのも効果的です。特に第7条の管理監督者の扱いは労働基準法との兼ね合いがあるので、専門家のチェックがあると安心です。
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