【1】書式概要
この就業規則は、会社が従業員との雇用関係を明確にし、職場の秩序を保つために必要不可欠な基本文書です。労働基準法の改正に完全対応しており、従業員10名以上の事業所で義務付けられている就業規則の作成・届出要件を満たしています。
新しく会社を設立した経営者や、既存の就業規則を見直したい人事担当者にとって、専門的な知識がなくても安心して使用できる実用的な雛形となっています。採用手続きから退職まで、従業員の労働条件や服務規律を体系的に定めており、労働トラブルの予防にも効果的です。
特に中小企業やスタートアップ企業では、限られたリソースの中で適切な労務管理を行う必要があり、この規則があることで従業員との信頼関係構築や組織運営の安定化を図ることができます。労働基準監督署への届出時にもそのまま使用でき、専門家への相談費用を大幅に削減できる経済的メリットもあります。
【2】逐条解説
第1条(目的)
会社の就業規則が何のために存在するのかを明確にした根本規定です。従業員の労働条件や職場でのルールを定めることで、お互いが安心して働ける環境を作ることが狙いです。例えば、給料の支払い方法や休暇の取り方など、曖昧になりがちな部分を明文化することで後々のトラブルを防げます。
第2条(適用範囲)
この規則がどの従業員に適用されるかを定めています。正社員が対象で、パートタイマーや契約社員には別途規定があることを示しています。これにより、雇用形態によって異なる労働条件を整理できます。
第3条(規則の遵守)
従業員に対して就業規則を守ることを義務付けています。単なる形式的な約束ではなく、会社の発展に向けて協力する姿勢を求めている点がポイントです。
第4条(採用手続き)
会社が従業員を採用する際の基本的な流れを定めています。選考を経て採用することを明記し、採用プロセスの透明性を確保しています。
第5条(採用時の提出書類)
新入社員が入社時に提出すべき書類を具体的に列挙しています。誓約書や住民票などの基本書類から、前職がある場合の年金手帳まで、人事手続きに必要な書類を網羅しています。また、住所変更などがあった場合の届出義務も定めています。
第6条(試用期間)
新入社員の試用期間を3ヶ月と定めています。この期間中は会社と従業員がお互いを見極める期間として位置づけられ、不適格と判断された場合の解雇も可能としています。ただし、試用期間も勤続年数に含まれる点は従業員にとって有利な規定です。
第7条(労働条件の明示等)
採用時に労働条件を書面で明示することを義務付けています。また、就業規則や労使協定を従業員がいつでも確認できるよう備え付けることも規定しており、透明性の高い労働環境を目指しています。
第8条(人事異動)
会社が業務上必要な場合に従業員の配置転換を命じることができる根拠を示しています。ただし、事前に本人の意向を聞くことを義務付けており、一方的な異動を防ぐ配慮がなされています。
第9条(休職)
従業員が病気やその他の事情で長期間働けなくなった場合の取り扱いを定めています。3ヶ月を超える病気欠勤や、1ヶ月を超える私用欠勤などが対象となります。休職期間中は給与が支給されないことも明記されています。
第10条(服務)
従業員の基本的な心構えを定めた条文です。会社の指示に従い、責任感を持って業務に取り組むことを求めています。職場の秩序維持への協力も義務付けています。
第11条(遵守事項)
従業員が守るべき具体的なルールを9項目にわたって列挙しています。職務専念義務から始まり、会社の設備の私的利用禁止、利益相反行為の禁止、機密保持義務、副業禁止、セクハラ防止まで、現代の職場で問題となりやすい事項を網羅しています。
第12条(出退勤)
タイムカードによる勤怠管理と、始業時刻前の出勤準備を義務付けています。労働時間の適正な管理と、業務の円滑な開始を目的としています。
第13条(遅刻、早退、欠勤等)
遅刻や早退、欠勤時の手続きを定めています。事前申請が原則ですが、緊急時の事後報告も認めています。また、14日以上の病気欠勤には医師の診断書が必要とされています。
第14条(労働時間及び休憩時間)
標準的な9時-18時勤務(休憩1時間)を設定しています。休憩時間の自由利用も保障されていますが、遠方外出時の届出義務も課しています。
第15条(休日)
週休2日制(土日)に加え、祝日、年末年始、夏季休暇を休日として定めています。業務都合による振替休日の可能性も規定しています。
第16条(時間外及び休日労働)
残業や休日出勤の可能性を示しつつ、育児・介護との両立支援策を別途定めることを明記しています。関連する社内規程や労使協定の優先適用も規定しています。
第17条(年次有給休暇)
労働基準法に基づく年次有給休暇の付与日数を表で明示しています。6ヶ月継続勤務で10日から始まり、最大20日まで段階的に増加する仕組みです。取得時の事前申請も義務付けています。
第18条(産前産後の休業)
妊娠・出産に関する休業制度を定めています。産前6週間(多胎妊娠は14週間)、産後8週間の休業を保障し、産後6週間経過後の就業については医師の許可を条件としています。
第19条(育児時間及び生理休暇)
1歳未満の子を持つ女性従業員への育児時間(1日2回各30分)と、生理休暇の取得権を定めています。働く女性への配慮が盛り込まれています。
第20条(育児休業)
育児休業制度については別途規程で定めることを明記しています。詳細な制度設計は専門的な規程に委ねる構造となっています。
第21条(介護休業)
介護休業制度についても別途規程で定めることとし、家族の介護が必要な従業員への支援体制を整備しています。
第22条(慶弔休暇)
結婚、出産、死亡など人生の重要な局面での特別休暇を定めています。本人の結婚で5日、配偶者の出産で2日、親族の死亡で2-3日など、関係の深さに応じて日数を設定しています。
第23条(給与)
給与や昇給、賞与については別途定めることを明記しています。複雑な給与制度は就業規則とは別の規程で詳細に定める方が実務的です。
第24条(賞与)
年2回(6月・12月)の賞与支給を原則としつつ、会社業績による変動の可能性も示しています。在籍要件や個人の成績による査定も規定しています。
第25条(定年等)
60歳定年制を採用し、高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度への対応も言及しています。定年退職の時期を月末と明確にしています。
第26条(退職)
自己都合退職から死亡まで、様々な退職事由を列挙しています。退職時の証明書発行義務も規定し、従業員の転職活動への配慮も示しています。
第27条(解雇)
解雇事由として勤務成績不良、心身の障害、事業縮小、その他やむを得ない事情を挙げています。解雇予告や解雇予告手当についても労働基準法に従った規定を置いています。
第31条(表彰)
従業員の優れた業績や貢献を表彰する制度を設けています。創意工夫、永年勤続、災害防止、社会貢献など多様な功績を対象としています。
第32条(懲戒の種類)
懲戒処分を軽い順に譴責、減給、出勤停止、解雇、懲戒解雇の5段階で設定しています。減給の上限額など労働基準法の制限も反映されています。
第33条(懲戒の事由)
懲戒処分の対象となる行為を軽微なものから重大なものまで具体的に列挙しています。無断欠勤、勤務態度不良、業務上の事故、素行不良、セクハラ、刑法犯など、現代の職場で問題となりやすい行為を網羅しています。
第34条(安全衛生の基本的事項)
会社の安全配慮義務と従業員の協力義務を定めています。火気の管理、禁煙場所の遵守、通路確保など、日常的な安全管理事項も具体的に列挙しています。
第35条(健康診断)
年1回の定期健康診断実施と、特定業務従事者への6ヶ月ごとの健診を義務付けています。従業員の健診受診義務や、結果に基づく就業制限の可能性も規定しています。
第36条(災害補償等)
業務災害については労災保険、私傷病については健康保険による給付を明記しています。災害補償制度の基本的な枠組みを示しています。
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