【1】書式概要
この雛型は、不動産会社が住宅営業スタッフやハウジングアドバイザーを契約社員として雇用する際に使用する契約書です。不動産業界では、物件の案内から契約手続きまでを担当する専門スタッフの確保が重要な経営課題となっています。特に繁忙期や新規店舗開設時には、正社員採用よりも柔軟な契約社員での雇用が求められることが多く、そうした場面で活用いただける実用的な書式となっています。
この契約書は、労働条件の明確化から服務規律、機密保持まで、雇用関係において必要な項目を網羅的に定めています。不動産業界特有の顧客情報の取り扱いや競業避止についても適切に規定されており、トラブル防止と円滑な業務運営を支援します。また、契約更新の条件や賞与制度についても詳細に記載されているため、双方の権利義務が明確になります。
Word形式で提供されるため、貴社の就業規則や業務内容に応じて自由に編集・カスタマイズが可能です。給与額や勤務時間、休日設定などは、実際の雇用条件に合わせて簡単に変更できます。人事担当者や経営者の方々にとって、採用業務の効率化と労務管理の適正化を実現する実用的なツールとしてご活用いただけるでしょう。
【2】条文タイトル
第1条(契約の目的) 第2条(契約期間) 第3条(試用期間) 第4条(業務内容) 第5条(勤務場所) 第6条(勤務時間) 第7条(休日) 第8条(時間外勤務) 第9条(給与) 第10条(賞与) 第11条(退職金) 第12条(昇給) 第13条(社会保険) 第14条(年次有給休暇) 第15条(特別休暇) 第16条(服務規律) 第17条(機密保持) 第18条(競業避止義務) 第19条(契約解除) 第20条(損害賠償) 第21条(個人情報の取扱い) 第22条(その他)
【3】逐条解説
第1条(契約の目的)
この条文は契約全体の基本的な枠組みを示しています。雇用契約書の冒頭で、会社がハウジングアドバイザーとして従業員を雇用することを明確に宣言し、労働条件や就業規則について定める旨を記載しています。例えば、後々「どのような業務を想定していたのか」といった争いを避けるため、ハウジングアドバイザーという職種名を明記することで、住宅営業に関わる業務であることを明確にしています。
第2条(契約期間)
契約社員の雇用期間について詳細に定めています。通常の契約社員制度では、労働契約法により更新回数や期間に制限があるため、この条文では最大3回までの更新制限を設けています。ただし、やむを得ない事由がある場合の例外規定も置いており、例えば優秀な人材を長期的に確保したい場合や、特殊な業務スキルを持つ従業員を継続雇用したい場合に対応できます。更新時期の30日前通知は、双方が準備期間を確保するための配慮です。
第3条(試用期間)
新規採用者の適性を見極めるための期間を定めています。不動産業界では、顧客対応能力や営業スキルが重要になるため、3ヶ月間の試用期間を設けることで、実際の業務を通じて従業員の能力を評価できます。例えば、物件案内での説明力や顧客との信頼関係構築能力などは、面接だけでは判断が困難な要素です。試用期間中の解除権限は、会社側のリスク軽減策として機能します。
第4条(業務内容)
ハウジングアドバイザーの具体的な業務範囲を明確に定めています。顧客のニーズヒアリングから物件提案、案内業務、契約サポート、アフターフォローまで、住宅営業に必要な一連の業務を網羅しています。業務内容変更の協議規定により、市場環境の変化や会社の事業展開に応じて柔軟に対応できます。例えば、オンライン内覧サービスの導入や新築物件の販売開始時に、業務内容を適切に調整することが可能です。
第5条(勤務場所)
基本的な勤務場所を支店名で明記しつつ、業務上必要な場合の配置転換についても規定しています。不動産業界では、営業エリアの変更や新店舗開設に伴う人員配置が発生することが多いため、この条文により柔軟な人事運営が可能になります。ただし、従業員の生活への配慮義務も明記されており、例えば通勤時間の大幅な増加や家族の事情を考慮した運用が求められます。
第6条(勤務時間)
基本的な勤務時間を午前9時から午後6時までと定め、1時間の休憩時間を明記しています。不動産業界では顧客の都合に合わせた営業活動が必要になることが多いため、従業員の同意を得た上での勤務時間変更権限を会社に付与しています。例えば、土日祝日の物件案内や夜間の契約手続きなどに対応するため、シフト制勤務への変更などが考えられます。
第7条(休日)
週休2日制を基本とし、祝日や年末年始、夏季休暇を明確に定めています。不動産業界の特性上、土日祝日に顧客対応が必要になることが多いため、業務都合による休日出勤の規定も設けています。代休付与または割増賃金の支払いにより、従業員の権利を保護しています。例えば、住宅展示場でのイベント開催や繁忙期の物件案内対応時に、この規定が適用されます。
第8条(時間外勤務)
労働基準法に基づく時間外勤務の取り扱いを明確にしています。契約社員であっても正社員と同様の労働時間管理が必要であり、割増賃金の支払い義務を明記することで、適正な労務管理を確保しています。不動産業界では、契約手続きの関係で夜間作業が発生することもあるため、深夜勤務に対する割増賃金規定も重要な要素です。
第9条(給与)
基本給の金額と支払い方法、欠勤控除の計算方法を詳細に定めています。通勤手当と住宅手当の支給規定により、従業員の生活面をサポートしています。不動産業界では、営業成績に応じた歩合給制度を採用することも多いですが、この雛型では固定給制度を採用しており、安定した収入を保証しています。月末締め翌月払いは、一般的な給与支払いサイクルに合わせた設定です。
第10条(賞与)
業績連動型の賞与制度について規定しています。支給保証をしない旨を明記することで、会社の業績悪化時のリスクヘッジを図っています。算定期間を明確に定めることで、従業員の期待と実際の支給額との乖離を防ぐ効果があります。例えば、夏季賞与では前年12月から当年5月までの業績を反映するため、従業員も期間中の業務成果を意識しやすくなります。
第11条(退職金)
契約社員には退職金制度を適用しないことを明確に宣言しています。これは正社員との処遇差を明確にし、後々のトラブルを防ぐための重要な規定です。退職金制度の有無は採用時の重要な判断材料となるため、契約締結前に十分な説明が必要です。
第12条(昇給)
業績と勤務成績に基づく昇給制度を規定しています。年1回、契約更新時に実施することで、従業員のモチベーション維持と処遇改善を図っています。不動産業界では、市場環境の変化が激しいため、会社の業績を考慮した昇給制度は合理的な設計です。例えば、地価上昇や金利変動により業績が大きく変動する場合でも、適切な昇給判断が可能になります。
第13条(社会保険)
各種社会保険への加入義務を明記し、保険料負担の法的根拠を確認しています。契約社員であっても、労働時間や契約期間によっては社会保険の加入義務が発生するため、この規定により適正な手続きを確保しています。健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の4つの保険を明記することで、漏れのない加入を保証しています。
第14条(年次有給休暇)
労働基準法に基づく年次有給休暇の付与と取得手続きを定めています。事前申請制度により、業務の継続性を確保しつつ、従業員の休暇取得権を保護しています。不動産業界では、物件案内や契約手続きなど、顧客との約束が重要になるため、計画的な休暇取得が業務運営上重要です。緊急時の事後申請制度により、柔軟な対応も可能にしています。
第15条(特別休暇)
慶弔休暇などの特別休暇制度を詳細に定めています。結婚や出産、家族の死亡など、人生の重要な節目に対して適切な休暇を付与することで、従業員の福利厚生を充実させています。例えば、本人の結婚時には5日間の特別休暇を付与し、新生活の準備期間を確保しています。親族の範囲と休暇日数を明確に定めることで、運用上の混乱を防げます。
第16条(服務規律)
従業員が遵守すべき基本的な行動規範を定めています。会社の施設や物品の適正使用、利益相反行為の禁止、職務専念義務など、健全な職場環境を維持するための重要な規定です。不動産業界では、顧客情報の取り扱いや高額商品の取り扱いがあるため、特に倫理的な行動が求められます。例えば、物件情報を私的に利用することや、競合他社から不当な利益を受けることを禁止しています。
第17条(機密保持)
業務上知り得た情報の秘密保持義務を詳細に定めています。不動産業界では、顧客の個人情報や物件情報、価格情報など、機密性の高い情報を扱うことが多いため、この規定は特に重要です。退職後も継続する義務として定めることで、転職後の情報流出リスクを防いでいます。例えば、顧客の年収情報や家族構成、住宅ローンの詳細などは、競合他社に流出すると大きな損害を招く可能性があります。
第18条(競業避止義務)
在職中および退職後1年間の競業避止義務を定めています。不動産業界では、顧客リストや営業ノウハウが重要な企業資産となるため、この規定により会社の利益を保護しています。ただし、地域的制限を設けることで、従業員の職業選択の自由にも配慮しています。例えば、他県での不動産業への転職は制限されないが、同一営業エリア内での競合他社への転職は制限されるといった運用が可能です。
第19条(契約解除)
契約解除事由を明確に列挙し、適正な人事管理を可能にしています。無断欠勤や業務命令違反など、客観的な基準を設けることで、恣意的な解雇を防ぎ、双方の権利を保護しています。心身の故障による業務継続困難や刑事事件への関与など、やむを得ない事由についても規定しています。従業員側の自主退職についても30日前の事前通知制度により、業務の引き継ぎ期間を確保しています。
第20条(損害賠償)
従業員の故意または重過失による損害について、賠償責任を定めています。不動産業界では、契約手続きのミスや顧客情報の漏洩により、高額な損害が発生する可能性があるため、この規定により適切な責任関係を明確にしています。ただし、損害額については双方の協議により決定するとしており、一方的な請求を防ぐ配慮も施されています。
第21条(個人情報の取扱い)
従業員の個人情報保護について、会社の責任を明確にしています。雇用管理目的以外での使用禁止や、適切な管理措置の実施義務を定めることで、個人情報保護法に準拠した運用を確保しています。例えば、従業員の住所や家族構成などの情報が、営業活動や他の目的で無断使用されることを防ぎます。
第22条(その他)
契約書に記載されていない事項について、労働基準法や就業規則による補完を定めています。また、紛争解決については協議による解決を基本とし、円満な労使関係の維持を図っています。この規定により、想定外の問題が発生した場合でも、適切な対応が可能になります。例えば、新しい労働関連法規の施行や、業界特有の問題が発生した場合の対応指針となります。
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