【1】書式概要
この書式は、従業員が懲戒解雇に相当するような重大な問題行動を起こした場合に、会社側が「解雇ではなく自分から辞めてもらう」という選択肢を提示するための通知書です。
たとえば、会社のお金を横領した、重大なハラスメントを行った、無断欠勤を繰り返したなど、本来であれば即座にクビにしてもおかしくない状況を想定しています。しかし、長年勤めてきた功績があったり、本人が深く反省していたりする場合、いきなり懲戒解雇にするのは会社としても心苦しいものです。そこで、「自分で退職届を出してくれれば、懲戒解雇は避けられますよ」と伝えるのがこの通知書の役割です。
実際の使用場面としては、社内調査で不正が発覚した後の人事面談や、懲戒委員会での審議を経た後に本人へ処分を伝える際などが考えられます。「○日以内に退職届を出せば自己都合退職として扱います。出さなければ懲戒解雇になります」という二択を明確に示すことで、本人に最後の判断を委ねる形になります。
この書式には本体の通知書に加えて、退職届の様式も別紙として付いています。本人がすぐに退職届を作成できるよう配慮した構成になっており、実務上非常に便利です。
Word形式でお渡ししますので、会社名や日付、具体的な非違行為の内容などは自由に書き換えていただけます。そのまま印刷して使うもよし、自社の就業規則に合わせて条文番号を調整するもよし、柔軟にご活用ください。
【2】条文タイトル
この書式は契約書形式ではなく通知書形式のため、「第●条」という条文構成ではありません。代わりに以下の6項目で構成されています。
第1項(非違行為の内容)
第2項(該当する就業規則条項)
第3項(諭旨退職の条件)
第4項(諭旨退職に応じた場合の取扱い)
第5項(期限内に退職届の提出がない場合)
第6項(その他)
【3】逐条解説
第1項(非違行為の内容)
ここには、従業員が具体的に何をやらかしたのかを書きます。「いつ、どこで、何をしたか」を明確に記載することがポイントです。たとえば「2024年8月15日、本社経理部において、会社の売上金50万円を私的に流用したこと」といった具合です。曖昧な表現だと後から「そんなことはしていない」と反論される余地が生まれますので、事実関係は調査段階でしっかり固めておく必要があります。
第2項(該当する就業規則条項)
問題行動が就業規則のどの条文に違反しているかを示す部分です。懲戒処分を行うには、就業規則に根拠がなければなりません。「就業規則第45条第2項第3号(会社の金銭を横領した場合)」のように、条文番号と該当事由をセットで記載します。自社の就業規則を確認して、正確な条文番号を入れてください。
第3項(諭旨退職の条件)
自主退職に応じる場合の具体的な手続きを定めています。提出期限、退職届の書き方、退職日をここで指定します。期限は実務上、通知から3日〜7日程度が一般的です。あまり短すぎると「考える時間を与えなかった」と言われかねませんし、長すぎると問題を抱えたまま社内に居続けることになります。1週間程度が落としどころでしょう。
第4項(諭旨退職に応じた場合の取扱い)
本人が素直に退職届を出した場合、会社側がどう扱うかを約束する部分です。退職金の計算方法、離職票の記載内容、社外への公表の有無などが含まれます。「自己都合退職として処理する」と明記することで、本人の再就職活動への配慮を示しています。退職金を何割か減額するかどうかは、非違行為の重さや本人の反省度合いで判断することになります。
第5項(期限内に退職届の提出がない場合)
期限までに退職届が出なかった場合のペナルティを明示しています。要するに「言うこと聞かないなら懲戒解雇にしますよ」という警告です。懲戒解雇になれば退職金は不支給か大幅カット、離職票には「重責解雇」と書かれることになります。重責解雇だと失業保険の給付制限も厳しくなりますから、本人にとっては相当なデメリットです。この項目があることで、諭旨退職に応じるインセンティブが生まれます。
第6項(その他)
異議申立ての方法と守秘義務について触れています。本人に反論の機会を与えることは手続きの公正さを担保するうえで大切です。また、守秘義務を退職後も継続させることで、「辞めた後にSNSで会社の悪口を言いふらす」といったリスクを牽制しています。
【4】FAQ
Q1. 諭旨退職と諭旨解雇は何が違うのですか?
諭旨退職は「自分で退職届を出してもらう」形式で、あくまで自己都合退職として処理されます。一方、諭旨解雇は会社側が解雇を言い渡す形式ですが、懲戒解雇よりは軽い処分という位置づけです。この書式は諭旨退職のパターンで、本人の意思による退職という体裁をとります。
Q2. 諭旨退職を勧告する前に必要な手続きはありますか?
はい、本人への弁明の機会付与が必須です。「あなたはこういう行為をしたと認識していますが、何か言いたいことはありますか」と聞く場を設けてください。これを省略すると、後から「一方的に処分された」と訴えられるリスクがあります。
Q3. 退職届の提出期限は何日くらいが適切ですか?
3日〜7日程度が一般的です。本人が冷静に判断できる時間は必要ですが、あまり長いと問題社員が社内に居座り続けることになります。1週間を目安にするとよいでしょう。
Q4. 本人が諭旨退職を拒否した場合、本当に懲戒解雇できますか?
懲戒解雇事由に該当する事実があり、就業規則に基づいて適正な手続きを踏んでいれば可能です。ただし、懲戒解雇は労働者にとって最も重い処分ですので、後から不当解雇として争われる可能性もあります。事実認定と手続きの正当性には十分注意してください。
Q5. 退職金は必ず支払わなければなりませんか?
就業規則や退職金規程の定めによります。諭旨退職の場合は自己都合退職扱いで支給するのが一般的ですが、一定割合を減額することも多いです。懲戒解雇になった場合は不支給または大幅減額とする規定を設けている会社がほとんどです。
Q6. 離職票に「重責解雇」と書かれるとどうなりますか?
失業保険(雇用保険の基本手当)の給付制限が厳しくなります。通常の自己都合退職でも2ヶ月の給付制限がありますが、重責解雇の場合は3ヶ月の給付制限に加え、所定給付日数も短くなる可能性があります。再就職活動でも不利に働くことがあります。
Q7. 通知書は手渡しと郵送、どちらがよいですか?
可能であれば手渡しで、受領のサインをもらうのがベストです。郵送する場合は内容証明郵便を使い、いつ届いたかを証明できるようにしてください。
【5】活用アドバイス
この書式を使う前に、まず事実関係の調査をしっかり行ってください。本人へのヒアリング、関係者への聞き取り、証拠の収集など、「間違いなくこの人がやった」と言える状態にしておくことが大前提です。
次に、就業規則を確認してください。懲戒解雇事由としてどのような行為が列挙されているか、諭旨退職という処分が規定されているかをチェックします。就業規則に根拠がない処分は無効になりかねません。
本人への弁明の機会付与も忘れずに。形式的でも構いませんので、「何か反論はありますか」と聞く場を設けてください。議事録を残しておくとなお良いです。
通知書を渡す際は、できれば人事部長や総務部長など、ある程度の役職者が同席するとよいでしょう。本人が感情的になった場合の対応もしやすくなります。
提出期限が過ぎても退職届が出ない場合に備えて、懲戒解雇の手続きも並行して準備しておくことをお勧めします。
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