【1】書式概要
この契約書は、30年間の定期借地権設定において建物譲渡特約を付けた土地賃貸借契約を締結する際に使用する書式です。改正民法に完全対応しており、借主の立場により配慮した内容となっています。
土地オーナーが事業用や住宅用の土地を長期間貸し出す場合、また借主が安定的な土地利用を求める場合に最適な契約形態です。契約期間満了時には、借主が建てた建物を貸主が時価で買い取る特約が盛り込まれているため、借主にとって非常に有利な条件設定となっています。
不動産開発事業者が住宅地や商業施設用地を確保する際、また個人や法人が長期的な事業展開を計画する際の土地確保手段として広く活用されています。建設業者がモデルハウス用地を確保する場合や、店舗経営者が長期的な立地確保を図る場合にも重宝されています。
敷金の取り扱いや原状回復義務、必要費・有益費の償還など、実務上重要なポイントがすべて網羅されています。Word形式で提供されているため、具体的な物件情報や条件に応じて自由に編集・カスタマイズが可能です。専門家でなくても理解しやすい構成となっており、契約締結までの時間短縮と適切な権利関係の確立を同時に実現できます。
【2】条文タイトル
第1条(本件土地の特定と賃料の支払い) 第2条(賃貸期間) 第3条(使用目的) 第4条(敷金) 第5条(善管注意義務) 第6条(転貸等) 第7条(本件土地の全部ないし一部滅失等) 第8条(建物滅失の場合における処理) 第9条(建物滅失による解約等) 第10条(解除) 第11条(損害賠償) 第12条(建物買取、本件土地の返還・原状回復) 第13条(補修および必要費・有益費の償還) 第14条(合意管轄) 第15条(協議)
【3】逐条解説
第1条(本件土地の特定と賃料の支払い)
土地の基本情報と賃料支払い条件を定めた根幹となる条文です。所在地、地番、地目、面積といった物件の特定事項を明記し、月額賃料と支払期日を設定します。例えば、東京都内の商業地域200平方メートルの土地を月額50万円で貸し出す場合、毎月末日までの支払いと定めるケースが一般的です。
第2条(賃貸期間)
借地借家法24条に基づく建物譲渡特約付定期借地権の設定期間を30年と明確に定めています。この期間は法定要件であり、更新がないことを強調しています。2025年4月1日から2055年3月31日までの30年間といった具体的な期間設定が必要です。
第3条(使用目的)
土地の利用目的を居住用および店舗用建物の所有に限定しています。木造、鉄骨造、鉄骨鉄筋造の建物構造も指定されており、用途変更には貸主の承諾が必要です。例えば、当初は住宅として計画していた土地に後から店舗併用住宅を建築する場合には、事前承諾が必要になります。
第4条(敷金)
借主の債務履行を担保する敷金制度について規定しています。改正民法に対応した内容で、敷金の充当方法と返還時期を明確化しています。賃料の6か月分程度を敷金として設定するケースが多く、契約終了時や適法な賃借権譲渡時に残額を返還する仕組みです。
第5条(善管注意義務)
借主に対して善良な管理者としての注意義務を課しています。土地の適切な管理と使用を求める条文で、通常の使用方法を逸脱した利用による損害については借主が責任を負うことになります。
第6条(転貸等)
使用目的変更、原状変更、賃借権譲渡・転貸について事前承諾制を設けています。例えば、住宅用地として借りた土地に駐車場を併設する場合や、建物を第三者に又貸しする場合には、必ず貸主の承諾を得る必要があります。
第7条(本件土地の全部ないし一部滅失等)
災害や公共事業による土地の滅失・収用に対する処理方法を定めています。全部滅失の場合は契約が当然終了し、一部滅失の場合は解約権の行使または賃料減額請求が可能です。河川改修工事で土地の一部が収用される場合などに適用されます。
第8条(建物滅失の場合における処理)
契約期間中に建物が滅失した場合の取り扱いを規定しています。借主が建物を再築しても、契約期間の延長はなく、当初の満了日で契約は終了します。転借地権者が建物を建築した場合も同様の扱いとなります。
第9条(建物滅失による解約等)
建物滅失時の借主からの解約申し入れ権を認めています。解約申し入れから3か月経過で契約が終了する仕組みで、借主の不測の損害を軽減する配慮がなされています。
第10条(解除)
貸主からの契約解除事由を無催告解除と催告解除に分けて詳細に規定しています。無催告解除には承諾なしの用途変更や原状変更、反社会的勢力との関係などが含まれます。催告解除には賃料不払いや契約違反が該当し、相当期間の催告後に解除可能です。
第11条(損害賠償)
契約違反による損害賠償責任について定めています。ただし、社会通念上やむを得ない事由による違反については免責される規定も設けられており、バランスの取れた内容となっています。
第12条(建物買取、本件土地の返還・原状回復)
この契約の最大の特徴である建物買取特約を規定しています。契約終了時に貸主が借主の建物を時価で買い取る義務を負い、借主にとって極めて有利な条件です。登記費用は貸主負担とされており、建物以外の工作物等は原状回復の対象となります。
第13条(補修および必要費・有益費の償還)
土地の維持管理に関する費用負担を定めています。基本的に貸主が補修義務を負いますが、緊急時や貸主の対応が遅い場合は借主が補修可能です。借主が支出した必要費は直ちに償還され、有益費は土地価値の増加分について契約終了時に償還される仕組みです。
第14条(合意管轄)
契約に関する紛争の裁判管轄を定めています。物件所在地を管轄する地方裁判所を専属的合意管轄裁判所として指定することで、紛争解決の迅速化を図っています。
第15条(協議)
契約に定めのない事項や疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間での協議による円満解決を目指す条文で、訴訟に至る前の調整機会を確保しています。
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