【1】書式概要
この規程は、企業が職場でのハラスメントを防止し、従業員が安心して働ける環境を整備するための重要な社内ルールです。近年、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、育児・介護ハラスメントなど、様々な形態のハラスメントが社会問題となっており、企業には適切な対策が強く求められています。
本規程では、ハラスメントの定義を明確化し、相談窓口の設置、調査手続き、処分方法など、実際の運用に必要な仕組みを体系的に整備しています。特に、被害者保護の観点から不利益取扱いの禁止や職場環境の改善措置についても詳細に定めており、実務担当者にとって使いやすい内容となっています。
この文書は、新入社員研修での説明資料として活用したり、管理職向けのハラスメント防止研修で配布したり、労働基準監督署への提出書類として使用することができます。また、取引先や顧客からのコンプライアンス体制の確認を求められた際の説明資料としても重宝します。Word形式で作成されているため、各企業の実情に合わせて条文の修正や追加が容易に行えます。
【2】条文タイトル
- 第1条(ハラスメント防止の目的と範囲)
- 第2条(用語の定義)
- 第3条(従業員の責務とハラスメント防止の努力)
- 第4条(相談窓口の設置と機能)
- 第5条(相談窓口の手続きと対応)
- 第6条(調査協力の義務)
- 第7条(不利益取扱いの防止と措置)
- 第8条(ハラスメント行為者への処分)
【3】逐条解説
第1条(ハラスメント防止の目的と範囲)
この条文は規程全体の基本理念を示しており、従業員の人権尊重と快適な職場環境の実現を目的として定められています。「個人として尊重され」という表現は、職場での人格の尊厳を重視する姿勢を明確にしたものです。実際の運用では、この条文を根拠として、些細な言動であってもハラスメントにつながる可能性があることを従業員に周知徹底する際に活用されます。
第2条(用語の定義)
ハラスメントに関する用語を明確に定義することで、判断基準の統一を図っています。特に「職場内の優位性」については、単なる上司部下関係だけでなく、専門知識や人間関係における優位性も含むとしており、現代の多様な働き方に対応した定義となっています。例えば、ITスキルに長けた若手社員が年上の同僚に対して行う嫌がらせも、この定義に該当する可能性があります。
第3条(従業員の責務とハラスメント防止の努力)
従業員自身にもハラスメント防止の責任があることを明確にしています。これは単に「してはいけない」という消極的な義務ではなく、「良い職場環境を作る」という積極的な義務を課しています。また、会社が実施する研修やアンケートへの協力義務も定めており、従業員の協力なくしてハラスメント防止は実現できないという現実的な視点が反映されています。
第4条(相談窓口の設置と機能)
相談窓口の設置は現在多くの企業で義務化されており、この条文はその具体的な運用方法を定めています。「発生のおそれがある場合」も相談対象とすることで、早期発見・早期対応を可能にしています。実務では、相談者が気軽に利用できるよう、メールでの相談受付や外部機関との連携なども検討されることが多いです。
第5条(相談窓口の手続きと対応)
相談を受けた後の具体的な対応手順を定めています。「申立者の意見と人権に配慮した上で」という表現は、相談者の意向を無視した調査や処理を防ぐための重要な規定です。例えば、相談者が「穏便に済ませたい」と希望している場合には、その意向を尊重した対応が求められます。
第6条(調査協力の義務)
ハラスメントの事実確認には関係者の協力が不可欠であり、この条文は従業員にその協力義務を課しています。「積極的に真実を述べる義務」という表現により、曖昧な回答や事実隠蔽を防ぐ効果が期待されます。実際の調査では、この条文を根拠として、関係者に対して詳細な聞き取りを実施することができます。
第7条(不利益取扱いの防止と措置)
相談したことで不利益を受けることがないよう、相談者の保護を徹底しています。これは「報復の禁止」とも呼ばれる重要な規定で、相談者が安心して声を上げられる環境を作るために不可欠です。例えば、相談後に配置転換や昇進の見送りなどが行われた場合、この条文違反として追加の処分対象となる可能性があります。
第8条(ハラスメント行為者への処分)
ハラスメントを行った従業員に対する処分の根拠を明確にしています。就業規則の懲戒規定との連携により、口頭注意から懲戒解雇まで、行為の程度に応じた適切な処分が可能になります。実際の運用では、初回の軽微な事案では研修受講を命じ、悪質な場合や繰り返し行為には重い処分を科すなど、事案に応じた柔軟な対応が行われています。
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