【1】書式概要
この規程は、職場におけるパワーハラスメントを未然に防ぎ、発生した場合の適切な対応手順を明確化するための包括的な社内規程です。改正労働施策総合推進法に完全対応しており、企業が義務として求められるパワハラ防止措置を実効性のある形で整備できます。
現代の職場環境では、上司と部下の関係性が複雑化し、指導とハラスメントの境界線が曖昧になりがちです。この規程を導入することで、全ての従業員が安心して働ける環境を構築し、同時に企業としてのコンプライアンス体制を強化できます。人事部門の担当者様はもちろん、経営陣や管理職の方々にとっても、日常的な人事管理における重要な指針となります。
特に新入社員研修や管理職研修の際に、具体的な事例とともに説明することで、職場全体の意識向上につながります。また、万が一ハラスメント事案が発生した場合でも、この規程に基づいて迅速かつ適切な対応が可能となり、企業リスクの最小化を図ることができます。
Word形式で作成されているため、お客様の企業に合わせて条文の修正や追加が容易に行えます。施行日の設定や相談窓口の変更、懲戒処分の内容調整など、自社の実情に応じたカスタマイズが可能です。
【2】逐条解説
第1条(総則)
この条文は規程全体の目的を明確にしています。単にパワハラを禁止するだけでなく、予防から対応まで含めた総合的な取り組みを行うことを宣言しています。企業の本気度を示す重要な条文といえるでしょう。
第2条(定義)
パワーハラスメントの定義を具体的に示した条文です。「繰り返し行い」という表現により、一回限りの行為ではなく継続性を要件としています。また、職務上の地位を利用した行為も含むことで、上司から部下への典型的なパワハラを明確にカバーしています。たとえば、部長が課長に対して人前で大声で叱責を続ける行為などが該当します。
第3条(適用範囲)
全ての役員・社員に適用することを明記しています。これにより、経営陣から新入社員まで、組織内の全ての人が対象となることが明確になります。パートタイマーや契約社員についても、社員に含まれると解釈されることが一般的です。
第4条(パワーハラスメントの禁止)
具体的な禁止行為を12項目にわたって列挙しています。人前での叱責や机を叩く行為から始まり、情報を流さない、仕事を与えないといった消極的な嫌がらせまで幅広くカバーしています。例えば、営業部長が部下に対して「君は営業に向いていない」と人格否定的な発言を繰り返すケースや、必要な業務情報を意図的に共有しない行為などが該当します。
第5条(相談窓口)
人事部を相談窓口として設置することを定めています。「いつでも」という表現により、24時間対応ではないものの、相談者の都合に合わせて柔軟に対応する姿勢を示しています。中小企業では人事部がない場合もあるため、総務部や代表取締役などに読み替えて運用することが考えられます。
第6条(人事部への通報の義務)
被害者だけでなく、目撃者にも通報義務を課している点が特徴的です。これにより、職場全体でパワハラを防止する体制を構築しています。通報方法も口頭から電子メールまで多様な手段を認めており、通報者の負担を軽減しています。匿名での通報も可能とすることで、報復を恐れる通報者に配慮しています。
第7条(事実関係の調査)
通報を受けた場合の調査義務を定めています。「直ちに」という表現により迅速な対応を求めており、「通報者に迷惑を掛けないように」という配慮規定も設けています。実際の調査では、関係者からの聞き取りや証拠の収集を行いますが、調査の過程で通報者が不利益を受けないよう細心の注意が必要です。
第8条(懲戒処分等)
パワハラが認定された場合の措置を定めています。懲戒処分だけでなく、配置転換なども含めることで、職場環境の改善を図っています。「検討の上、必要に応じて」という表現により、事案の軽重に応じた柔軟な対応を可能としています。軽微なケースでは厳重注意、重大なケースでは懲戒解雇まで、段階的な処分を検討することになります。
第9条(報復行為の禁止)
通報者に対する報復を明確に禁止しています。この条文があることで、通報者は安心して申告できるようになります。報復行為自体もパワハラに該当する場合が多く、二重の処分対象となることもあります。たとえば、通報した部下に対して不当な人事評価を行ったり、重要な業務から外したりする行為が報復行為に該当します。
第10条(社内研修)
予防措置としての研修実施を定めています。「必要に応じ」という表現により、企業の実情に応じた柔軟な研修実施を可能としています。新入社員研修、管理職研修、全社員向け研修など、対象者や内容を工夫することで効果的な予防策となります。外部講師を招いての研修や、事例研究を中心とした実践的な内容が効果的です。
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