【1】書式概要
この定款は、株式会社を設立する際に必要となる基本的な会社の憲法とも言える重要な書類です。特に取締役2名以上と監査役を設置する標準的な株式会社の形態に対応した雛型として作成されています。
起業を検討している方や個人事業主から法人化を考えている経営者の方にとって、会社設立の第一歩となる定款作成は非常に重要な作業です。この雛型を使用することで、複雑な条文構成や必要な記載事項を漏れなく盛り込むことができ、公証人による認証手続きもスムーズに進めることが可能になります。
実際の使用場面としては、法務局での会社設立登記申請前に公証役場での認証を受ける際に提出する書類として活用されます。また、司法書士や行政書士などの士業の方が顧客サービスとして会社設立手続きを代行する際の作業効率化にも役立ちます。
Word形式で提供されているため、会社名や所在地、事業目的、資本金額などの具体的な情報を簡単に編集・カスタマイズすることができます。テンプレートの各項目に「●」で示された箇所を実際の内容に置き換えるだけで、オリジナルの定款が完成します。
【2】条文タイトル
第1条(商号) 第2条(目的) 第3条(本店の所在地) 第4条(公告方法) 第5条(発行可能株式総数) 第6条(株券の不発行) 第7条(株式の譲渡制限) 第8条(相続人等に対する株式の売渡し請求) 第9条(株主名簿記載事項の記載等の請求) 第10条(質権の登録及び信託財産の表示) 第11条(株主の住所等の届出) 第12条(株式の割当てを受ける権利等の決定) 第13条(基準日) 第14条(招集) 第15条(招集手続の省略) 第16条(招集権者及び議長) 第17条(決議の方法) 第18条(取締役及び監査役の員数) 第19条(取締役及び監査役の選任) 第20条(監査役の権限) 第21条(取締役及び監査役の任期) 第22条(代表取締役及び社長) 第23条(報酬等) 第24条(事業年度) 第25条(剰余金の配当等) 第26条(設立に際して出資される財産の最低額) 第27条(成立後の資本金の額) 第28条(最初の事業年度) 第29条(設立時の役員) 第30条(発起人の氏名又は名称及び住所、割当てを受ける設立時発行株式の数等) 第31条(規定外事項)
【3】逐条解説
第1条(商号)
会社の正式名称を定める条文です。株式会社という文字を必ず含む必要があり、前株(株式会社○○)でも後株(○○株式会社)でも構いません。同一住所での同一商号は登記できないため、事前に類似商号の調査が重要になります。
第2条(目的)
会社が行う事業内容を明確に記載します。将来的に事業拡大する可能性も考慮し、関連事業も含めて幅広く定めておくことが一般的です。例えば製造業であれば製造・販売・輸出入まで含めて記載するケースが多いです。
第3条(本店の所在地)
会社の本店所在地を都道府県・市区町村レベルまで記載します。詳細な住所は登記簿に記載されるため、定款では市区町村までに留めることで将来の移転時の手続きを簡素化できます。
第4条(公告方法)
会社の重要な情報を公表する方法を定めます。官報掲載が最も一般的で費用も安価です。近年は電子公告を選択する会社も増えていますが、維持管理の観点から官報を選ぶ中小企業が多数派です。
第5条(発行可能株式総数)
将来的に発行できる株式の上限を定めます。設立時発行株式数の4倍程度に設定することが多く、将来の増資や株式分割に備えた余裕を持たせておくことが重要です。
第6条(株券の不発行)
現在はペーパーレス化が進み、株券を発行しないことが一般的です。株券を発行する場合は印刷費用や管理コストが発生するため、中小企業では不発行を選択するケースがほとんどです。
第7条(株式の譲渡制限)
株式の譲渡に会社の承認を必要とする定めです。これにより望ましくない第三者による株式取得を防ぐことができます。同族会社や中小企業では経営権保護のため必須の条項と言えます。
第8条(相続人等に対する株式の売渡し請求)
相続によって株式を取得した人に対し、会社側から買取りを請求できる権利を定めます。経営に関与しない相続人による株式保有を防ぐために重要な条項です。
第9条(株主名簿記載事項の記載等の請求)
株式を取得した人が株主として認められるための手続きを定めます。株式譲渡の際の名義書換手続きに関する実務的な規定です。
第10条(質権の登録及び信託財産の表示)
株式に担保権を設定する場合の手続きを定めます。金融機関からの借入れの際に株式を担保に供する場合などに必要となる条項です。
第11条(株主の住所等の届出)
株主の基本情報を会社に届け出る義務を定めます。配当金支払いや株主総会招集通知の送付に必要な情報管理に関する条項です。
第12条(株式の割当てを受ける権利等の決定)
新株発行の際の株主の権利に関する条項です。既存株主の持株比率維持のため、新株引受権を与える場合の手続きを定めています。
第13条(基準日)
株主総会での権利行使ができる株主を確定する日を定めます。決算日時点の株主名簿に記載された人が対象となり、株式の売買が頻繁な場合でも権利関係を明確にできます。
第14条(招集)
株主総会の開催時期と招集通知の発送時期を定めます。定時株主総会は決算日から3ヶ月以内、招集通知は5日前までの発送が必要です。
第15条(招集手続の省略)
株主全員が同意すれば招集手続きを省略できる旨を定めます。少数株主の同族会社では実務上よく活用される条項です。
第16条(招集権者及び議長)
株主総会を招集する権限者と議長を定めます。通常は代表取締役が招集権者となり、社長が議長を務めます。
第17条(決議の方法)
株主総会での決議要件を定めます。普通決議は過半数、特別決議は3分の2以上の賛成が必要で、定足数の要件も併せて規定されています。
第18条(取締役及び監査役の員数)
役員の人数の上限を定めます。設立時は最小限の人数でスタートし、事業拡大に応じて増員できるよう上限に余裕を持たせることが一般的です。
第19条(取締役及び監査役の選任)
役員の選任方法を定めます。株主総会での選任が原則で、一定の定足数と決議要件を満たす必要があります。
第20条(監査役の権限)
監査役の監査範囲を会計監査のみに限定する条項です。業務監査権限を持たない会計監査人により、監査役の負担軽減が図られます。
第21条(取締役及び監査役の任期)
役員の任期を定めます。取締役・監査役ともに最長4年まで設定可能で、同族会社では長期に設定することで選任手続きの頻度を減らすことができます。
第22条(代表取締役及び社長)
代表取締役の選任方法と社長職への就任を定めます。取締役の互選により代表取締役を選び、その人が自動的に社長に就任する仕組みです。
第23条(報酬等)
役員報酬の決定方法を定めます。株主総会での決議により報酬額を決定し、透明性と適正性を確保します。
第24条(事業年度)
会社の会計期間を定めます。1年間を1事業年度とし、決算日は会社の事業サイクルに応じて自由に設定できます。3月決算が最も一般的です。
第25条(剰余金の配当等)
利益配当の方法と時効について定めます。株主総会決議により配当を行い、3年間受け取られない配当は会社の支払義務が消滅します。
第26条(設立に際して出資される財産の最低額)
会社設立時の最低出資額を定めます。現在は最低資本金制度が廃止されているため、1円でも設立可能ですが、事業運営を考慮した適切な金額を設定します。
第27条(成立後の資本金の額)
会社成立後の資本金額を確定的に定めます。この金額が登記簿に記載され、会社の信用力の指標の一つとなります。
第28条(最初の事業年度)
設立初年度の事業年度を定めます。設立日から最初の決算日までの期間で、通常は1年以内に設定します。
第29条(設立時の役員)
設立時に就任する役員を具体的に記載します。設立登記の際に必要な情報で、取締役・監査役・代表取締役それぞれを明記します。
第30条(発起人の氏名又は名称及び住所、割当てを受ける設立時発行株式の数等)
発起人の詳細情報と引受株式数、出資額を記載します。設立時の出資者として登記される重要な情報です。
第31条(規定外事項)
定款に定めのない事項は会社法等の規定に従う旨を定めます。法改正への対応や想定外の事態に対するセーフティネットとしての役割を果たします。
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