【1】書式概要
この株式質権設定契約書は、会社が他の会社にお金を貸す際に、借りる側の会社が持っている株式を担保として預かるための契約書です。特に非上場株式を対象としており、上場していない中小企業やベンチャー企業の株式を担保にする場面で使用されます。
金融機関からの融資だけでなく、事業会社同士の取引や投資会社による資金提供の際にも活用できる実践的な書式となっています。借り手が返済できなくなった場合に備えて、株式という有価証券を担保に取ることで、貸し手のリスクを軽減する仕組みを整えることができます。
Word形式で提供されるため、パソコンで簡単に編集でき、会社名や金額などの必要事項を入力するだけで実際の契約書として使用可能です。契約書作成の時間とコストを大幅に削減しながら、しっかりとした担保設定が実現できる便利な書式です。
【2】条文タイトル
第1条(被担保債権の範囲) 第2条(質権設定の対象及び設定) 第3条(株券の交付及び占有移転) 第4条(株主名簿記載及び名義書換手続) 第5条(議決権等株主権の行使) 第6条(配当金及び剰余金の受領) 第7条(新株引受権及び株式分割等による新株) 第8条(担保株式の処分制限) 第9条(担保価値の維持義務) 第10条(期限の利益の喪失) 第11条(反社会的勢力の排除) 第12条(質権の実行) 第13条(担保株式の処分及び換価) 第14条(清算及び残債務の処理) 第15条(契約の効力及び準拠法) 第16条(その他の事項)
【3】逐条解説
第1条(被担保債権の範囲)
この条文では、どのような債権を担保するのかを明確にしています。単純に貸したお金だけでなく、利息や遅延した場合の損害金まで含めて幅広く担保の対象とすることで、貸し手の保護を図っています。例えば、1000万円を貸した場合、その元本だけでなく約束した利息や、もし返済が遅れた場合の遅延損害金も担保の範囲に含まれることになります。
第2条(質権設定の対象及び設定)
実際にどの株式に担保を設定するかを具体的に書く部分です。会社名と株式の数をはっきりさせることで、後々のトラブルを防ぎます。非上場会社の株式は市場で簡単に売買できないため、どの株式なのかを正確に特定することが特に重要になります。
第3条(株券の交付及び占有移転)
株式を担保にする場合、実際の株券を貸し手に渡す必要があります。これにより、借り手が勝手に株式を処分することを防げます。株券を物理的に預けることで、担保の実効性を確保する仕組みです。
第4条(株主名簿記載及び名義書換手続)
株式会社の株主名簿に質権が設定されていることを記録してもらう手続きについて定めています。これにより第三者に対しても担保権の存在を主張できるようになり、担保としての効力が強化されます。
第5条(議決権等株主権の行使)
担保になっている株式の議決権を誰が行使するかを決める条文です。通常は貸し手が議決権を行使しますが、場合によっては借り手に委ねることもできる柔軟な仕組みになっています。
第6条(配当金及び剰余金の受領)
株式から生まれる配当金などの収益をどう扱うかを定めています。貸し手が直接受け取って借金の返済に充てることもできれば、借り手に渡すこともできる選択制になっています。
第7条(新株引受権及び株式分割等による新株)
株式分割や新株発行で株式が増えた場合の取扱いを定めています。増えた株式も自動的に担保の対象になることで、担保価値の維持を図っています。例えば、100株が株式分割で200株になった場合、200株すべてが担保の対象となります。
第8条(担保株式の処分制限)
借り手が勝手に担保株式を売却したり、他の人に譲渡したりすることを禁止する条文です。貸し手の許可なく処分された場合、その処分は貸し手に対して効力を持たないことになります。
第9条(担保価値の維持義務)
株式の価値が下がりそうな場合に、借り手に追加の担保提供や一部返済を求めることができる条文です。例えば、担保株式の発行会社の業績が悪化して株価が大きく下落した場合などに適用されます。
第10条(期限の利益の喪失)
借り手に問題が生じた場合に、約束の返済期日を待たずに即座に全額返済を求めることができる条件を定めています。破産申立や手形の不渡りなど、信用に関わる重大な問題が発生した時点で適用されます。
第11条(反社会的勢力の排除)
暴力団などの反社会的勢力との関係を完全に排除する条文です。現代の契約書には必須の条項で、借り手がそのような勢力と関係があることが判明した場合は即座に契約解除できます。
第12条(質権の実行)
実際に担保権を使って株式を処分する権利を行使できる条件を定めています。返済期日が来ても返済されない場合や、期限の利益喪失事由が発生した場合に、事前通知なしに担保を処分できます。
第13条(担保株式の処分及び換価)
担保として預かった株式をどのように売却するかの方法を定めています。非上場株式は市場がないため、相対取引や第三者への売却など柔軟な処分方法を認めています。
第14条(清算及び残債務の処理)
株式を売却した代金で借金を返済した後の処理について定めています。売却代金が借金より少ない場合は不足分の即座返済を、多い場合は余った分の返還を義務付けています。
第15条(契約の効力及び準拠法)
この契約がどこの法律に基づいて解釈されるか、また裁判になった場合にどこの裁判所で争うかを予め決めておく条文です。予測可能性を高めて紛争の早期解決を図ります。
第16条(その他の事項)
契約書に書かれていない問題が起きた場合の対処方法や、契約内容を変更する場合の手続きについて定めています。双方の合意による柔軟な解決を重視した条文です。
【4】活用アドバイス
この契約書を効果的に活用するには、まず担保となる株式の現在価値をしっかりと査定することが重要です。非上場株式は市場価格がないため、会計士による企業価値評価や類似会社比較法などを用いて適正な価値を把握しましょう。
契約締結前には、担保株式の発行会社の財務状況や事業の将来性についても十分に調査することをお勧めします。また、株券の現物確認と株主名簿の記載状況についても必ず確認し、名義に問題がないことを確かめてから契約を進めてください。
記入する際は、金額や期日などの数字部分について特に注意深く確認し、双方が同じ理解を持っていることを確認してから署名押印を行うことが大切です。
【5】この文書を利用するメリット
この契約書を使用することで、貸金の回収リスクを大幅に軽減できます。単なる約束だけでは不安な高額融資も、株式という有形の担保があることで安心して実行できるようになります。
特に非上場企業への融資では、不動産などの担保が不十分な場合が多いため、株式を担保にすることで融資の可能性が広がります。また、借り手にとっても不動産を手放すことなく資金調達ができるメリットがあります。
契約書の内容も包括的で、配当金の取扱いや新株発行への対応など、実際の運用で問題となりやすい点まで詳細に規定されているため、後々のトラブルを予防できます。Word形式での提供により、自社の状況に応じてカスタマイズも容易です。
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