【1】書式概要
この文書は、企業が取引先に対して適切に与信管理を行うための「企業信用調査」の基準や手順を定めた規程のひな型です。新規の取引を開始する際や既存の取引先を定期的に見直す場面で利用でき、信用力を分析・評価し、与信限度額を設定することで取引リスクを軽減することを目的としています。
実務担当者が迷わず利用できるよう、調査項目・評価基準・調査手順が体系的に整理されており、内部統制やリスク管理の一環として有効に活用できます。Word形式で編集可能なため、自社の業種や取引規模に応じたカスタマイズが容易で、実務の現場にすぐ導入できる実用性が特徴です。
【2】条文タイトル一覧
第1条(目的) 第2条(定義) 第3条(適用範囲) 第4条(調査実施部門) 第5条(調査実施責任者) 第6条(調査担当者の責務) 第7条(基本調査項目) 第8条(調査方法) 第9条(財務分析の実施) 第10条(信用評価基準) 第11条(信用格付け) 第12条(与信限度額) 第13条(信用調査の実施時期) 第14条(定期的見直し) 第15条(調査結果の報告) 第16条(調査結果の管理) 第17条(情報の機密保持) 第18条(取引禁止先の管理) 第19条(規程の改廃) 第20条(細則の制定) 第21条(緊急時の対応) 第22条(信用情報の共有) 第23条(審査委員会) 第24条(研修・教育) 第25条(監査) 第26条(事故報告)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は規程全体の土台であり、取引先の信用力を調査することで、債権の保全や取引リスクを最小化することを目的としています。例えば、支払遅延や突然の倒産を防ぐために、事前に調査を実施して取引の安全性を高める仕組みです。
第2条(定義)
ここでは「取引先」「与信」「信用調査」などの用語を明確にしています。実務においては、これらの定義をはっきりさせておくことで、部署間での解釈違いを防ぎ、調査基準を統一できます。
第3条(適用範囲)
新規の取引先だけでなく、既存顧客や管理責任者が必要と認めたケースにも適用されます。つまり「一度信用できると判断した相手先でも、状況が変われば再度調査対象になる」という考え方が示されています。
第4条(調査実施部門)
調査の主管部門を営業管理部の与信管理課とし、必要に応じて他部門に協力を求める仕組みです。これは調査の質を高め、組織として一貫した運用を実現する狙いがあります。
第5条(調査実施責任者)
与信管理課長が責任者として計画の策定や結果の承認を行います。事故や不在の場合は上位者が代行する仕組みにより、調査体制の継続性が確保されます。
第6条(調査担当者の責務)
調査を担当する職員は、公正性や守秘義務を守りつつ、期限を守って調査を完了させることが求められます。例えば、取引先との関係で不利な情報が出た場合でも、客観的に報告する姿勢が必要です。
第7条(基本調査項目)
企業概要、財務情報、事業活動、取引情報、経営環境といった多面的な観点で調査する項目です。例えば、財務情報に偏るのではなく、取引先の事業戦略や市場環境まで含めて把握することが強調されています。
第8条(調査方法)
外部の信用調査機関からのレポート、登記情報の確認、金融機関からの情報収集、インターネット検索など多様な方法が規定されています。新規取引先の場合は特定の方法を必須とすることで、最低限の調査水準を担保します。
第9条(財務分析の実施)
収益性、安全性、効率性、成長性の観点から指標を分析することが示されています。例えば「流動比率」や「ROE」などの数値を確認し、倒産リスクや収益力を測定することが実務上のポイントです。
第10条(信用評価基準)
財務評価と定性評価を50点ずつに分け、合計100点で信用力を判定する仕組みです。経営者の資質や業界の動向といった定性面も評価対象にしている点が特徴です。
第11条(信用格付け)
S級からD級までの格付けを設定しています。これにより、取引先のリスクを直感的に把握でき、社内の意思決定がスムーズになります。
第12条(与信限度額)
格付けに応じた取引限度額を定め、一定の範囲内で課長や部長の判断で調整できる仕組みです。高リスクな取引先には個別審査を求める点が、リスクコントロールの要です。
第13条(信用調査の実施時期)
新規取引や限度額の変更時、信用不安情報の入手時など、具体的に調査を行うタイミングを示しています。
第14条(定期的見直し)
格付けランクに応じた調査周期が定められています。高リスク先は半年ごと、信用力の高い先は2年ごとに見直すことで、効率性とリスク管理のバランスを取ります。
第15条(調査結果の報告)
調査担当者は報告書を提出し、課長が検証したうえで部長の承認を得ます。多段階でのチェックにより、報告の正確性と信頼性が担保されます。
第16条(調査結果の管理)
データベースでの登録やファイリングによって、社内共有と情報保護を両立させる仕組みです。資料は5年間保管した後、適切に廃棄するルールまで定められています。
第17条(情報の機密保持)
調査で得た情報は厳格に管理され、業務上必要な範囲を超えた利用は禁止されています。退職後も守秘義務が続く点が明文化されています。
第18条(取引禁止先の管理)
反社会的勢力や重大な法令違反を犯した先などは「取引禁止先」として登録されます。再開には取締役会の承認が必要であり、極めて慎重な扱いです。
第19条(規程の改廃)
規程の改正や廃止は取締役会の決議によることを定め、規程の重みを示しています。
第20条(細則の制定)
施行に必要な細則を課長が策定し、部長の承認を得る仕組みです。現場での柔軟な対応と統制の両立を意図しています。
第21条(緊急時の対応)
倒産、資産差押え、重大な事故や法令違反など、緊急事態の報告と対応を定めています。課長は速やかに報告し、必要に応じて限度額の引下げなどの措置を取ることができます。
第22条(信用情報の共有)
月次の報告会や格付けの変更通知を通じて社内で情報を共有します。営業部門も現場で得た情報を報告義務として持ち、双方向の情報伝達が強調されています。
第23条(審査委員会)
1億円以上の大口取引など、重要事項は審査委員会で審議されます。複数部門の責任者を構成員とすることで、判断の客観性を高めています。
第24条(研修・教育)
新入社員から営業担当者、調査専門スタッフまでを対象に研修を行い、知識とスキルを継続的に高める仕組みです。
第25条(監査)
内部監査を定期的に実施し、結果を取締役会に報告することで、制度の有効性と透明性を確保しています。
第26条(事故報告)
与信管理に関連して事故が発生した場合、即時報告と調査、再発防止策の徹底を求めています。特に重大な事故については取締役会への報告義務があり、経営レベルでの対応が必要です。
【4】活用アドバイス
この規程を導入する際は、自社の業種や取引形態に合わせて調査項目や評価基準を調整することが効果的です。また、年次の見直しや定期的な研修を行うことで、形骸化を防ぎ、常に最新の市場動向に即した信用調査が可能になります。
さらに、調査報告書をデータベース化して共有することで、営業部門と管理部門の連携がスムーズになり、意思決定のスピードも向上します。
【5】この文書を利用するメリット
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体系的な与信管理が可能になり、リスクを数値で把握できる
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調査から格付け、与信枠設定まで一貫したフローを整備できる
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内部統制や監査対応にも有効で、社内説明責任を果たしやすい
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Word形式で編集可能なため、自社規模・業種に合わせて柔軟に改変できる
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取引先とのトラブルや損失を未然に防ぐことにつながる
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