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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】書式概要 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本セットは、美容医療に関するトラブルの予防から解決までを一貫してカバーする6点パッケージです。近年、美容外科や美容皮膚科の施術件数が急増する一方で、「仕上がりがカウンセリング時の説明と違う」「副作用の説明を受けていなかった」「解約したいのに高額な違約金を請求された」といったトラブルも増え続けています。国民生活センターへの相談件数は年間2,000件を超えており、美容医療は消費者トラブルの重点分野となっています。
このセットには、まずクリニック側が施術前に使う「施術同意書・リスク説明書」が含まれています。リスクや副作用を一覧表で提示し、代替手段や保証内容まで記録できる構成です。これ一枚で、説明義務の履行を形に残すことができます。
患者側の書式としては、施術後に問題が生じた際の「苦情申入書」、費用の返還を求める「返金請求書」、そして特定商取引法に基づく「クーリングオフ通知書」の3種類を用意しました。返金請求書は内容証明郵便として発送できる体裁で、消費者契約法や特定商取引法など複数の根拠条文をチェックボックスで選べる設計です。
交渉がまとまった際に使う「示談書」は全12条で、修正施術の取り決めやSNS投稿に関する条項など、美容医療特有の論点もカバーしています。加えて、施術経過を日付順に記録し写真と紐づけて管理する「施術経過記録・写真管理表」も付属しており、証拠整理にそのまま活用できます。
すべてWord形式(.docx)ですので、パソコンで自由に編集してお使いいただけます。空欄を埋めるだけで書類が完成する設計ですから、専門知識がなくても安心です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】条文タイトル(示談書 全12条) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※ 条文形式の書式は「書式G-5:美容医療トラブル示談書」です。 他の5書式は同意書・請求書・通知書・記録表の形式のため条文構成ではありません。
第1条(事実の確認) 第2条(乙の対応) 第3条(分割払いの特約) 第4条(遅延損害金) 第5条(修正施術に関する合意) 第6条(口コミ・レビューに関する合意) 第7条(秘密保持) 第8条(カルテ等の保全) 第9条(権利義務の確認) 第10条(清算条項) 第11条(誠実協議) 第12条(合意管轄)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】逐条解説 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 第1条(事実の確認)
トラブルの出発点となった施術に関する基本的な事実を、双方で確認して記録に残す条項です。カウンセリング日、契約日、施術日、施術内容、施術部位、費用、担当医師、そして施術後に生じた問題の内容を具体的に特定します。
美容医療のトラブルでは、「そもそもどんな施術をしたのか」の認識が患者とクリニックで食い違っているケースが少なくありません。たとえば、ヒアルロン酸注入の部位が「ほうれい線」なのか「マリオネットライン」なのか、注入量が0.5ccなのか1ccなのかで、期待される効果もリスクも変わります。こうした事実を最初にきっちり確認しておくことが、後の条項すべての前提になります。
■ 第2条(乙の対応)
クリニック側が患者に支払う解決金の金額と支払い方法を定める条項です。一括払いか分割払いかの選択、支払期限、振込先口座を明記する構成になっています。振込手数料はクリニック側の負担としている点が、通常の示談書と異なるポイントです。
美容医療の示談では、解決金の内訳をどう考えるかがしばしば問題になります。施術費用の返金分なのか、修正施術の費用なのか、慰謝料なのか。この条項では「解決金」と一本化していますが、税務上の扱いを考慮して内訳を別紙で整理するケースもあります。たとえば、施術費80万円の返金+慰謝料30万円=解決金110万円というように、内訳が分かるようにしておくのが実務上は望ましいでしょう。
■ 第3条(分割払いの特約)
解決金を分割で支払う場合のスケジュールを定める条項です。各回の支払期日と金額を一覧表で明示し、2回以上支払いが滞った場合には残額を一括請求できる「期限の利益喪失条項」を設けています。
個人経営の小規模クリニックの場合、高額の解決金を一括で用意できないケースもあります。そのような場合にこの条項が活きてきます。ただし、分割にする場合は公正証書にしておくことを強くお勧めします。たとえば120万円を月20万円×6回で支払う約束をしたのに3回目で止まった場合、公正証書があれば裁判なしで差押えに進めます。
■ 第4条(遅延損害金)
支払い遅延時のペナルティとして、年3%の遅延損害金を定めた条項です。民法の法定利率に合わせたオーソドックスな規定ですが、これがあるのとないのとでは相手方へのプレッシャーが大きく違います。
たとえば100万円の解決金が3ヶ月遅れた場合、年3%で約7,500円の損害金が加算されます。金額自体は大きくありませんが、「遅延すればするほど膨らむ」という仕組みがあること自体が、期限内の支払いを促す効果を持ちます。
■ 第5条(修正施術に関する合意)
美容医療トラブル特有の条項で、解決金の支払いとは別に、修正施術についての取り決めを行います。同じクリニックでの無償修正、他院での修正とその費用負担、修正施術を行わないという3つの選択肢をチェックボックスで選べる形式です。
実務上、患者側が最も迷うのがこの部分です。仕上がりに不満があるクリニックに再度施術を任せるのは心理的に抵抗がある一方で、他院で修正すると費用が自己負担になるリスクもあります。示談交渉の中で、「他院での修正費用は乙が負担する」という合意を取り付けられれば、患者側にとって最も安心な解決策になります。たとえば二重整形の修正であれば、他院での再施術費30~60万円程度をクリニック側に負担させるケースがあります。
■ 第6条(口コミ・レビューに関する合意)
これも美容医療ならではの条項です。患者がインターネット上の口コミサイトやSNSで、クリニックの名誉・信用を毀損する投稿をしないことを約束する内容です。ただし、「事実に基づく体験の記述」と「法令上の権利行使」は明確に例外としています。
クリニック側にとっては、Google口コミや美容医療の口コミサイトへのネガティブ投稿は経営に直結する問題です。しかし、患者側の表現の自由も保護されなければなりません。この条項は、虚偽や誇張による誹謗中傷は禁止しつつ、事実を述べる権利は残すというバランスを取っています。示談交渉の際に、クリニック側から「一切の投稿を禁止したい」と求められることがありますが、それは患者側にとって過度な制約になりうるので、この雛形の範囲を交渉の基準にしてください。
■ 第7条(秘密保持)
示談の存在や内容、交渉経緯、そして解決金の金額を第三者に漏らさないことを双方に義務づける条項です。弁護士・税理士への相談、法令上の義務、甲(患者)の近親者への説明は例外としています。
美容医療の場合、「近親者への説明」を例外に入れているのがポイントです。美容整形の事実を家族に秘密にしている方もいますが、トラブルが起きた場合に配偶者や親に一切説明できないのは現実的ではありません。この例外規定によって、身近な人への相談は許容されます。ただし、SNSでの発信はこの例外に含まれないので注意してください。
■ 第8条(カルテ等の保全)
クリニック側に、施術に関するカルテ、検査結果、施術前後の写真などの診療記録を適切に保管し続ける義務を課す条項です。患者の求めに応じてその写しを交付することも定めています。
美容クリニックの中には、トラブル後にカルテを改ざんしたり、施術前後の写真を「データが消えた」と主張するケースが報告されています。この条項を入れておくことで、クリニック側に証拠保全の義務を明確に課すことができます。万が一、この条項に違反して記録が失われた場合は、それ自体が不誠実な対応の証拠として裁判で不利に評価される可能性があります。
■ 第9条(権利義務の確認)
患者側が解決金の支払いと修正施術の履行を受けた後は、本件に関する一切の請求権を放棄することを約束する条項です。クリニック側から見れば「これで終わり」を確保する規定であり、患者側から見れば署名前に十分な検討が必要な条項です。
ここで重要なのは、「解決金の支払い」だけでなく「第5条の修正施術に関する合意の履行」も条件に含まれている点です。つまり、修正施術が約束どおりに行われなかった場合は、まだ請求権を放棄していないことになります。修正施術を含む合意をした場合は、その施術が完了し、結果に納得してから権利放棄の効果が発生するという構造です。
■ 第10条(清算条項)
本合意書に書かれた内容以外には、当事者間に一切の債権債務が存在しないことを確認する条項です。これにより、示談成立後に「やっぱりもう少し請求したい」「あの費用も払ってほしい」といった追加請求はできなくなります。
だからこそ、示談書に署名する前に、損害額を漏れなく計算しておくことが決定的に重要です。施術費用の返金だけでなく、通院交通費、他院での診察費、修正施術にかかる将来の費用、仕事を休んだ場合の休業損害、精神的苦痛に対する慰謝料なども忘れずに請求項目に含めてください。
■ 第11条(誠実協議)
示談書に書かれていない事項や、条項の解釈について意見が分かれた場合に、双方が誠実に話し合って解決するという一般条項です。
美容医療の場合、示談後に予期しなかった後遺症が出てくる可能性があります。たとえば、ヒアルロン酸注入の施術から半年後にしこりが形成されたり、脂肪吸引の施術部位に遅発性の皮膚壊死が生じたりするケースです。清算条項があるため追加請求は原則できませんが、この誠実協議条項を根拠に再度の話し合いの場を設けることは可能です。もっとも、実際の運用は弁護士に相談した方がよいでしょう。
■ 第12条(合意管轄)
裁判になった場合に、患者側の住所地を管轄する地方裁判所で審理することを定めた条項です。美容医療は遠方のクリニックに通うケースも多いため(たとえば地方在住で東京の有名クリニックに通うなど)、この条項の有無で裁判の負担が大きく変わります。
患者側にとっては、自宅近くの裁判所で手続きを進められるメリットは大きいです。逆にクリニック側から見ると不利な規定ですが、トラブルの原因を作った側が相応の負担を受け入れるのは合理的ともいえます。クリニック側が管轄条項の変更を求めてきた場合は、安易に応じないことをお勧めします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】FAQ(よくある質問) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Q1. このセットは患者向けですか?クリニック向けですか?
両方に対応しています。施術同意書・リスク説明書(G-1)はクリニック側が使う書式ですし、苦情申入書(G-2)・返金請求書(G-3)・クーリングオフ通知書(G-4)は患者側の書式です。示談書(G-5)と施術経過記録表(G-6)は双方が使えます。患者側・クリニック側のどちらの立場でも活用できる構成になっています。
Q2. クーリングオフはどんな場合に使えますか?
特定商取引法が定める「特定継続的役務提供」に該当する美容医療契約が対象です。具体的には、提供期間が1ヶ月を超え、かつ金額が5万円を超える契約が該当します。脱毛コース、複数回のヒアルロン酸注入コース、痩身プログラムなどが典型例です。1回限りの施術は原則として対象外ですが、契約書面に不備がある場合は8日を過ぎてもクーリングオフできる場合があります。
Q3. 施術を受けてしまった後でもクーリングオフできますか?
はい、施術済みであってもクーリングオフは可能です。ただし、施術済みの部分については、クリニック側が通常の料金を上限として対価を請求できる場合があります。未施術分については全額返金が原則です。なお、クーリングオフの際にクリニック側から違約金や損害賠償を請求されることはありません(特定商取引法第48条第7項)。
Q4. 施術前後の写真は本当に必要ですか?
非常に重要です。美容医療トラブルの多くは「仕上がりの不満」ですが、これを客観的に証明するのは写真以外にありません。施術前の状態が記録されていないと、「そもそも施術前からこの状態だった」と反論される可能性があります。セットに含まれる施術経過記録・写真管理表(G-6)を使って、同じ角度・同じ照明で定期的に撮影する習慣をつけてください。
Q5. 返金請求書と苦情申入書はどう使い分けますか?
まずは苦情申入書(G-2)で問題を伝え、クリニックの対応を確認するのが一般的な流れです。クリニックが誠実に対応してくれない場合や、最初から返金を求める場合に返金請求書(G-3)を使います。返金請求書は内容証明郵便で送付することを想定した書式なので、苦情申入書よりもフォーマルかつ法的な効力を意識した構成です。
Q6. 示談書の「口コミ条項」は、一切の投稿ができなくなるということですか?
いいえ。事実に基づく体験の記述は明確に例外として認められています。「〇〇クリニックで二重整形をしたが左右差が出た」のように、実体験を事実として述べることは問題ありません。禁止されているのは、事実に反する内容や、殊更に名誉を傷つけるような投稿です。ただし、「事実の記述」と「名誉毀損」の境界はケースバイケースなので、投稿する前に弁護士に確認することをお勧めします。
Q7. 施術同意書はクリニック側で必ず使わなければいけないものですか?
法的な義務としては、特定商取引法上の「概要書面」「契約書面」の交付義務がある場合はそちらが優先します。施術同意書は医療法上の直接的な義務ではありませんが、説明義務(医師法・医療法)の履行を証拠として残すために、実質的には必須の書類です。訴訟になった場合、同意書がないと「説明を受けていない」という患者側の主張を覆すのが極めて困難になります。
Q8. クレジットカードで支払った場合、返金はどうなりますか?
クレジットカード払いの場合は、カード会社に「支払停止の抗弁書」を提出することが有効です。これにより、カード会社からクリニックへの支払いが一時停止されます。返金請求書(G-3)と併せて、カード会社にも通知することをお勧めします。なお、医療ローンを利用している場合は、信販会社への通知も別途必要になります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【5】活用アドバイス ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アドバイス①:カウンセリングの段階から記録を残す
美容医療のトラブルは、カウンセリング時の説明と施術結果の乖離から生じることがほとんどです。だからこそ、カウンセリングの段階から記録を残しておくことが最大の防御策になります。施術経過記録表(G-6)の「備考」欄を活用して、カウンセリングで医師が言ったこと、見せられたビフォーアフター写真、約束された効果を必ずメモしてください。音声録音も(通知して行えば)有効な証拠になります。
アドバイス②:写真撮影は「施術前」が最重要
トラブルが起きてからでは、施術前の状態を証明する手段がなくなります。施術当日の施術直前に、自分のスマートフォンで正面・左右45度・側面の写真を撮っておくことを習慣にしてください。クリニックが撮影する写真とは別に、自分でも撮影して保存しておくことが重要です。Exif情報(撮影日時データ)が残るスマートフォンでの撮影が理想的です。
アドバイス③:クーリングオフは「8日以内に発送」がポイント
クーリングオフは発信主義ですから、8日目の消印があればセーフです。ただし、ギリギリまで待つ必要はありません。施術を受けた直後に「やっぱりやめたい」と思ったら、即座にクーリングオフ通知書(G-4)を記入して内容証明郵便で発送してください。e内容証明なら24時間いつでも送付可能です。なお、契約書面に法定記載事項の不備がある場合は、8日を過ぎてもクーリングオフができる場合があります。心当たりがある方は弁護士に相談してください。
アドバイス④:苦情は口頭ではなく必ず書面で
クリニックに電話で苦情を伝えても、「そんな話は聞いていない」と言われれば証拠が残りません。苦情申入書(G-2)を使って、問題の内容と希望する対応を書面で明確に伝えることが大切です。配達証明付きの書留郵便で送れば、「届いていない」とは言わせません。メールやLINEでのやり取りも証拠になりますが、重要な請求は書面で行うのが鉄則です。
アドバイス⑤:消費生活センターを上手に活用する
返金請求書を送っても反応がない場合、いきなり弁護士に委任するのはハードルが高いかもしれません。その場合は、まず消費生活センター(局番なし188)に相談してください。消費生活センターには「あっせん」の機能があり、消費者とクリニックの間に入って交渉を仲介してくれます。費用は無料です。あっせんでも解決しない場合に、弁護士への委任を検討するという二段階のアプローチが費用対効果に優れています。
アドバイス⑥:示談書は「修正施術の条項」を慎重に
示談書(G-5)の第5条には、修正施術に関する3つの選択肢があります。ここは最も慎重に検討してほしい部分です。同じクリニックでの無償修正を選ぶ場合は、担当医師を指名できるかどうか、修正施術の回数に上限はあるか、修正施術の結果にも納得できなかった場合はどうするかまで詰めておく必要があります。可能であれば、他院での修正費用をクリニック側に負担させる選択肢が、患者側にとっては最も安全です。
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