【1】書式概要
この契約書は、既に設定されている根抵当権の内容を変更する際に使用する包括的な書式です。企業の成長や事業内容の変化に伴い、当初設定した担保条件では現在の取引実態に合わなくなった場合に、極度額の増減や担保でカバーする債権の範囲を調整するために作成されています。
従来の簡易な変更契約書とは異なり、この書式では債務者の義務や責任を詳細に規定し、債権者側のリスク管理を強化できる内容となっています。例えば、製造業の会社が設備投資のために融資枠を拡大したい場合や、商社が新たな取引先との売買代金も担保に含めたい場合などに活用されます。また、債務者の財務状況に変化が生じた際の対応策も盛り込まれているため、金融機関側も安心して変更に応じることができる仕組みになっています。
この書式はWord形式で提供されるため、パソコンがあれば誰でも簡単に編集可能で、金額や会社名、物件情報などを入力するだけで実用的な契約書として完成します。専門知識がない方でも、各項目の意味を理解しながら適切な内容で作成できるよう配慮されています。
【2】条文タイトル
第1条(変更内容)
第2条(登記手続きの義務)
第3条(変更の効力発生時期)
第4条(債務者の表明・保証)
第5条(期限の利益喪失事由)
第6条(担保物件の管理義務)
第7条(通知義務)
第8条(費用負担)
第9条(原契約の継続適用)
第10条(契約の変更・解除)
第11条(反社会的勢力の排除)
第12条(秘密保持)
第13条(準拠法)
第14条(紛争解決)
【3】逐条解説
第1条(変更内容)
この条文では変更する具体的な内容を明確に定めています。極度額については変更前後の金額を明記し、被担保債権については従来の借入金や手形に加えて売買代金債権も含める場合の規定となっています。例えば、当初2000万円だった融資枠を5000万円に増額し、さらに取引先への売掛金も担保対象にしたい場合などに使用します。
第2条(登記手続きの義務)
根抵当権の変更は登記をしなければ効力が生じないため、債務者側が30日以内に登記手続きを完了する義務を定めています。利害関係者の同意取得や登記事項証明書の提出義務も含まれており、手続きの透明性を確保しています。実際の登記は司法書士に依頼するのが一般的ですが、費用は全て債務者負担となります。
第3条(変更の効力発生時期)
変更契約を締結しただけでは効力は発生せず、登記が完了した時点で初めて変更内容が有効になることを明確にしています。これにより、登記前に債務者の財務状況が悪化した場合でも、債権者は従来の条件で権利行使できる安全措置となっています。
第4条(債務者の表明・保証)
債務者が現在の状況について正確な情報を提供していることを保証する条項です。担保物件に他の権利が設定されていないことや税金の滞納がないことなど、変更契約締結の前提となる重要事項を確認しています。もしこれらの表明に虚偽があった場合は、契約解除の根拠となります。
第5条(期限の利益喪失事由)
債務者が一定の行為を行った場合に、債権者からの催促なしに自動的に期限の利益を失う事由を定めています。登記手続きの懈怠や税金滞納、破産申立てなどが該当し、これらに該当すると債権者は直ちに債権回収手続きに移ることができます。
第6条(担保物件の管理義務)
担保物件の価値を維持するために債務者が負う義務を具体的に規定しています。適切な維持管理や火災保険への加入、処分時の事前同意など、担保価値の保全に必要な措置を義務付けています。例えば、建物の大規模修繕を怠って価値が下がることを防ぐ効果があります。
第7条(通知義務)
債務者の経営状況や担保物件に変化が生じた場合の報告義務を定めています。会社の移転や代表者変更、重要な財産の処分など、債権保全に影響する可能性のある事項について速やかな通知を求めています。これにより債権者は常に最新の状況を把握できます。
第8条(費用負担)
契約書作成から登記手続きまで、変更に関連する全ての費用を債務者負担とすることを明確にしています。登録免許税や司法書士報酬なども含まれるため、変更を希望する側が全責任を負う仕組みになっています。
第9条(原契約の継続適用)
変更契約書に記載のない事項については、元の根抵当権設定契約の内容がそのまま適用されることを確認しています。ただし、矛盾する場合は新しい変更契約の内容が優先されるため、変更部分の効力を確実にしています。
第10条(契約の変更・解除)
一度締結した変更契約を再度変更したり解除したりする場合は、必ず当事者双方の書面による合意が必要であることを定めています。口約束での変更を防ぎ、契約の安定性を確保する効果があります。
第11条(反社会的勢力の排除)
暴力団等の反社会的勢力との関係を完全に遮断することを当事者双方が誓約する条項です。現在の金融取引では必須の条項となっており、将来にわたっても関係を持たないことを約束しています。
第12条(秘密保持)
契約に関連して知り得た相手方の機密情報を第三者に漏洩してはならない義務を定めています。ただし、法令で開示が義務付けられている場合は例外となります。
第13条(準拠法)
この契約が日本の法律に基づいて解釈されることを明確にしています。国際取引でない場合は当然のことですが、明記することで解釈の基準を統一しています。
第14条(紛争解決)
契約に関する争いが生じた場合の裁判所を事前に決めておく条項です。当事者の所在地に近い裁判所を指定することで、訴訟費用や時間の負担を軽減できます。
【4】活用アドバイス
この契約書を効果的に活用するためには、まず現在の根抵当権設定契約書と登記簿謄本を手元に用意し、変更前の内容を正確に把握することが重要です。特に極度額については、将来の資金需要を十分に検討した上で適切な金額を設定しましょう。
被担保債権の範囲を拡張する場合は、新たに追加する債権の性質や発生時期を明確にし、必要に応じて具体的な取引契約も併せて確認してください。登記手続きについては司法書士に早めに相談し、必要書類や費用の見積もりを取得しておくことをお勧めします。
また、この契約書は債権者側の保護に重点を置いた内容となっているため、債務者側としては各条項の内容を十分に理解した上で締結することが大切です。不明な点があれば専門家に相談し、将来のリスクを十分に検討してから署名するようにしましょう。
【5】この文書を利用するメリット
この契約書を利用することで、従来の簡易な変更契約では対応できなかった複雑な変更内容にも対応可能となります。債権者側にとっては、債務者の義務や責任が詳細に規定されているため、リスク管理の観点から安心して変更に応じることができます。
債務者側にとっても、明確な条項により自らの義務が明確になるため、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。また、Word形式での提供により、必要な箇所を簡単に編集でき、専門家に依頼する費用を削減できる効果もあります。
さらに、反社会的勢力の排除条項や秘密保持条項など、現代の取引で求められるコンプライアンス要件も網羅されているため、金融機関との取引においても信頼性の高い契約書として評価されます。