【1】書式概要
この契約書は、会社や個人事業主が取引先と継続的なビジネスを行う際に、第三者から債務の保証を受けるために作成する書類です。たとえば、商品を掛け売りする際や、継続的に融資を行う場合など、将来発生するかもしれない複数の取引についてまとめて保証してもらう仕組みを整えることができます。通常の保証契約が一つの取引だけを対象にするのに対し、この契約書では一定期間内に生じる複数の取引を包括的にカバーできる点が大きな特徴となっています。
実際の使用場面としては、製造業者が新規取引先へ商品を継続的に納入する際、取引先の代表者個人に保証人になってもらうケースや、金融機関が中小企業に対して融資枠を設定する際に経営者から保証を得る場合などが挙げられます。また建設業では下請業者との取引、不動産業では賃貸物件の管理会社との契約、商社では輸入業者との継続的な取引など、さまざまな業種で活用されています。
この書式では改正民法に対応して極度額の設定と元本確定期日の明記が義務付けられており、これらの記載がない場合は契約自体が無効になってしまうため注意が必要です。保証する金額の上限をあらかじめ決めておくことで、保証人にとっても予測可能性が高まり、安心して保証契約を結ぶことができる仕組みとなっています。
本書式はWord形式で提供されており、パソコンで簡単に編集できます。社名や金額、日付などを入力するだけで、すぐに使用できる実用的なテンプレートとなっています。専門的な知識がなくても、項目に沿って必要事項を記入していけば、法的に有効な契約書を作成することができます。
【2】条文タイトル
第1条(保証債務の範囲) 第2条(極度額) 第3条(元本確定期日) 第4条(連帯保証の性質) 第5条(期限の利益の喪失) 第6条(求償権の制限) 第7条(通知義務) 第8条(情報提供義務) 第9条(住所変更の届出) 第10条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(保証債務の範囲)
この条文では、保証人が責任を負う範囲について定めています。主債務者が債権者に対して現在すでに負っている債務だけでなく、これから将来的に発生する可能性のある債務についても保証の対象となることを明確にしています。たとえば、今月の取引代金だけでなく、来月以降の取引で発生する代金も保証の範囲に含まれるということです。また、単純な商品代金や貸付金だけではなく、支払いが遅れた場合の利息、契約違反があった場合の違約金、損害が発生した場合の賠償金なども含まれます。つまり、取引に関連して発生しうるあらゆる金銭的な義務が保証の対象になるわけですから、保証人にとっては相当に重い責任を負うことになります。
第2条(極度額)
極度額というのは、保証人が責任を負う金額の上限のことです。改正民法では個人が保証人になる場合、この極度額を必ず契約書に明記しなければならず、記載がないと契約そのものが無効になってしまいます。たとえば極度額を1000万円と定めた場合、主債務者の債務総額が1500万円になったとしても、保証人が支払う義務があるのは1000万円までということです。この上限額を設定することで、保証人は自分が背負うリスクを事前に把握できますし、予想外に膨大な債務を負わされる危険を避けることができます。極度額の決め方には特に決まったルールはありませんが、通常は取引の規模や頻度、主債務者の信用力などを考慮して、債権者と保証人の間で話し合って決めることになります。
第3条(元本確定期日)
元本確定期日とは、保証の対象となる債務がこれ以上増えない日のことです。この日を過ぎると、それまでに発生した債務については引き続き保証責任がありますが、その日以降に新たに発生する債務については保証の対象外となります。たとえば令和7年3月31日を元本確定期日とした場合、それまでの取引で生じた未払金については保証人が責任を負いますが、4月1日以降の新しい取引については保証の対象にならないということです。これにより保証人の責任範囲が時間的に限定され、いつまでも際限なく保証が続くという事態を防ぐことができます。通常は契約期間の終了日や、取引関係が終わる予定の日などを設定します。
第4条(連帯保証の性質)
連帯保証は通常の保証よりも保証人にとって厳しい内容になっています。普通の保証契約であれば、債権者が保証人に請求してきた場合に「まず主債務者本人に請求してください」と主張したり、「主債務者には財産があるはずだから、まずそちらから回収してください」と言える権利があります。しかし連帯保証ではこれらの権利が認められていないため、債権者は主債務者と保証人のどちらに対しても自由に請求できますし、保証人は拒否できません。また、債権者が主債務者に対して裁判を起こして時効を止めたような場合、その効果が保証人に対しても及ぶことになります。実務上、金融機関などが保証を求める場合はほとんどがこの連帯保証の形式になっていて、保証人の責任は主債務者本人と同じくらい重いものとなっています。
第5条(期限の利益の喪失)
通常、債務の返済には「いつまでに払えばよい」という期限が設定されていて、債務者はその期限が来るまで支払いを待ってもらえます。これを「期限の利益」といいます。ただし、この条文に列挙されているような一定の事態が発生した場合には、その利益が失われて、すぐに全額を返済しなければならなくなります。具体的には、主債務者が経営破綻して破産手続きに入ったとか、不渡りを出して銀行取引が停止されたとか、税金を滞納したまま放置しているといった状況です。こうした事態はいずれも、主債務者の信用状態が著しく悪化していることを示すものですから、債権者としては期限を待たずに即座に全額回収したいと考えるのは当然です。この条文があることで、債権者は危機的状況にある債務者から迅速に債権を保全することができますし、保証人もそのような場合には即座に弁済義務が発生することを理解しておく必要があります。
第6条(求償権の制限)
保証人が債権者に対して債務を弁済した場合、通常であれば主債務者に対して「私が代わりに払ったのだから返してください」と請求できる権利があります。これを求償権といいます。しかしこの条文では、元本確定期日が来る前の段階では、保証人はこの求償権を行使できないと定めています。これは、保証人が早まって弁済してしまい、その後に主債務者に請求することで、かえって取引全体が混乱するのを防ぐためです。元本が確定するまでは取引が継続している状態ですから、保証人が中途半端に介入すると、主債務者と債権者の間の取引関係に悪影響を及ぼす可能性があります。ですから、元本確定期日を過ぎて取引が完全に終了してから、初めて保証人は主債務者に対して求償できるという仕組みになっています。
第7条(通知義務)
債権者には主債務者が約束どおり支払いをしなかった事実を知ったときに、速やかに保証人へ知らせる義務があります。たとえば毎月末日が支払期限なのに主債務者が支払わなかった場合、債権者はそのことを保証人に連絡しなければなりません。これにより保証人は状況を把握して、主債務者に支払いを促したり、自分が代わりに支払う準備をしたりすることができます。ただし、もし債権者が通知を怠ったとしても、そのせいで保証人に何か損害が生じた場合でも、債権者は責任を負わないという但し書きがついています。これは債権者の負担を軽減するための規定ですが、実務的には債権者としても保証人との良好な関係を保つため、きちんと通知することが望ましいでしょう。
第8条(情報提供義務)
保証人から請求があれば、債権者は主債務の状況について詳しい情報を提供しなければなりません。具体的には、元本がいくら残っているのか、利息はどれくらい発生しているのか、遅延損害金はいくらになっているのかといった情報です。改正民法でこの義務が明確に規定されたことで、保証人は自分が保証している債務の実態を把握しやすくなりました。従来は主債務者と債権者の間だけで取引が進んでいき、保証人は状況がよくわからないまま突然多額の請求を受けるというケースもありましたが、この規定により保証人の権利が守られるようになっています。保証人としては、定期的にこの情報提供を求めることで、リスクを適切に管理することができます。
第9条(住所変更の届出)
保証人は引っ越しをしたり、結婚して名字が変わったりした場合には、すぐに債権者へ書面で届け出る義務があります。これは債権者が保証人に連絡を取る必要が生じたとき、確実に連絡できるようにするためです。もし保証人がこの届出を怠ったために、債権者からの通知や書類が届かなかった場合でも、通常であれば届いたはずの時点で届いたものとみなされてしまいます。つまり、実際には受け取っていなくても「受け取ったことにする」という扱いになるわけです。これは保証人にとって不利な規定のように見えますが、裏を返せば、きちんと届出さえしていれば問題は生じないということです。住所や連絡先が変わったらすぐに連絡するという基本的な注意を怠らなければ、トラブルは避けられます。
第10条(管轄裁判所)
万が一、この契約に関連して裁判になった場合、どこの裁判所で争うかをあらかじめ決めておく条文です。この契約書では債権者の本店がある場所を管轄する地方裁判所で裁判を行うことになっています。たとえば債権者の本店が東京にあれば東京地方裁判所、大阪にあれば大阪地方裁判所というわけです。これを専属的合意管轄といい、他の裁判所では原則として裁判ができないことを意味します。保証人にとっては、もし自分が遠方に住んでいる場合、裁判のために債権者の本店所在地まで出向かなければならない可能性があることを理解しておく必要があります。ただし、これは第一審についての取り決めであり、控訴審以降については別の規定に従うことになります。
【4】FAQ
Q1. 連帯根保証契約と通常の連帯保証契約は何が違うのですか?
A1. 通常の連帯保証契約は、特定の一つの取引や債務だけを対象にします。たとえば「この1000万円の融資について保証します」というように、対象が明確に限定されています。一方、連帯根保証契約は継続的な取引関係全体をカバーする包括的な保証です。一定期間内に発生する複数の取引について、まとめて保証する仕組みになっています。ただし、改正民法により極度額と元本確定期日の設定が必須となったため、以前よりも保証人の保護が強化されています。
Q2. 極度額はどのように決めればよいですか?
A2. 極度額の決定に法律上の基準はありませんが、一般的には想定される取引規模の1.5倍から2倍程度に設定することが多いです。たとえば月々の取引額が平均300万円で、支払サイトが2ヶ月後という場合、通常は600万円程度の債務が発生しますから、極度額は900万円から1200万円程度に設定するといった具合です。あまり低く設定すると債権者にとって保証の意味が薄れますし、高すぎると保証人が見つからなくなりますので、双方で納得できる金額を話し合って決めることが大切です。
Q3. 元本確定期日は必ず設定しなければなりませんか?
A3. 個人が保証人となる場合、改正民法により元本確定期日の設定が実質的に必要になりました。この日付がないと、いつまでも際限なく保証が続くことになり、保証人の負担が過大になってしまうからです。通常は契約期間の終了日と同じ日に設定するか、1年から3年程度の範囲で設定することが一般的です。もちろん、期日が来た後も取引を継続したい場合は、新たに契約を更新することができます。
Q4. 保証人は契約の途中で抜けることはできますか?
A4. 基本的に、連帯保証人は一度契約を結んだら、元本確定期日まで自由に抜けることはできません。ただし、債権者と主債務者、保証人の三者が合意すれば、契約を解除することは可能です。また、主債務者の信用状態が著しく悪化した場合など、保証を継続することが著しく不合理な状況では、裁判所に保証契約の解除を求めることができる場合もあります。いずれにしても、保証人になる際は長期的な責任を負うことになるという覚悟が必要です。
Q5. 法人が保証人になる場合も極度額の設定は必要ですか?
A5. 改正民法で極度額の設定が義務付けられているのは、個人が保証人になる場合です。法人が保証人となる場合には極度額の設定は法律上必須ではありません。しかし、実務上は法人が保証人の場合でも極度額を設定することが増えています。これは保証人となる法人の側でもリスク管理の観点から上限を明確にしたいというニーズがあるためです。また、将来的な法改正の可能性も見据えて、法人保証の場合でも極度額を定めておくことが望ましいでしょう。
Q6. 主債務者が自己破産した場合、保証人はどうなりますか?
A6. 主債務者が自己破産して免責されたとしても、連帯保証人の責任は消滅しません。主債務者本人は免責により支払義務がなくなりますが、保証人は引き続き全額を支払う義務を負います。これが連帯保証の厳しい点です。ただし、極度額の範囲内でしか責任を負いませんので、たとえば極度額が1000万円で実際の債務が1500万円あったとしても、保証人が支払うのは1000万円までです。また、保証人が支払った後、主債務者に対して求償権を行使できますが、破産した相手から回収することは実際には困難なことが多いです。
Q7. この契約書は公正証書にする必要がありますか?
A7. 連帯根保証契約を公正証書にすることは法律上義務付けられていません。ただし、個人が経営者以外の第三者として事業用の融資の保証人になる場合には、公正証書の作成が必要です。それ以外のケースでは私文書(通常の契約書)でも有効ですが、後々のトラブル防止のためには公正証書にしておくことが望ましい場合もあります。公正証書にすると、万が一支払いがなされない場合に裁判を経ずに強制執行ができるというメリットがあります。
Q8. 保証人が複数いる場合、それぞれの責任はどうなりますか?
A8. 連帯保証人が複数いる場合、各保証人は債務の全額について責任を負います。これを連帯債務といいます。たとえば1000万円の債務に対して3人の連帯保証人がいる場合、債権者は3人のうちの誰か1人に対して1000万円全額を請求することができます。各保証人が333万円ずつ分担するわけではありません。ただし、実際に1人が全額を支払った場合は、その保証人が他の保証人に対して、それぞれの負担部分を請求できる権利を持ちます。このように、対外的には全額の責任を負いますが、保証人間では負担を分け合うことになります。
【5】活用アドバイス
この契約書を効果的に活用するためには、まず取引の実態に合わせて極度額を適切に設定することが重要です。過去の取引実績がある場合は、月間の平均取引額に支払サイトの月数を掛けて、さらに1.5倍から2倍程度の安全率を見込んで設定すると良いでしょう。新規取引の場合は、予想される取引規模をやや多めに見積もって設定します。
元本確定期日については、取引期間の終了予定日か、あるいは契約締結から1年後から3年後の範囲で設定することが一般的です。あまり長期間にすると保証人の負担が重くなりますし、短すぎると頻繁に契約を更新する手間が発生します。実務上は1年更新としているケースが多く見られます。
契約締結の際には、保証人となる方に対して契約内容を十分に説明し、理解してもらうことが欠かせません。特に連帯保証の性質や、極度額の意味、元本確定期日の効果などについては、誤解のないよう丁寧に説明しましょう。後々のトラブルを避けるためにも、保証人に契約書の写しを必ず交付し、大切に保管してもらうようお願いしてください。
定期的に主債務の状況を保証人に報告することも、良好な関係を維持するために有効です。法律上は保証人から請求があった場合にのみ情報提供すればよいことになっていますが、自主的に半年ごとや年に一度など、定期的に取引状況や残高を知らせることで、保証人の不安を軽減し、信頼関係を築くことができます。
主債務者に支払遅延などの問題が発生した場合は、速やかに保証人に連絡を取りましょう。早期に状況を共有することで、保証人からも主債務者に支払いを促してもらえる可能性がありますし、最悪の事態を回避できるかもしれません。連絡が遅れると、保証人との信頼関係が損なわれ、後々の債権回収にも支障が出ることがあります。
契約期間の終了が近づいてきたら、継続するかどうかを早めに検討し、保証人の意向も確認しましょう。継続する場合は新たな契約書を作成する必要があります。その際、取引実績を踏まえて極度額を見直すことも検討してください。取引規模が拡大していれば増額を、縮小していれば減額を検討するなど、実態に合わせた調整が大切です。
Word形式のファイルですから、社名や金額などを入力する際は、すべての〇〇〇〇という箇所を確認して、漏れなく置き換えてください。特に金額に関する箇所は、数字と漢数字の両方で記載されている場合もありますので、整合性が取れているか注意深くチェックしましょう。完成した契約書は必ず両当事者が署名または記名押印し、それぞれが原本を1通ずつ保管します。
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