【1】書式概要
この文書は、古い建物付きの土地を売買する際に使用する契約書のテンプレートです。売主が建物を解体して更地にしてから買主に引き渡すケースを想定しており、買主にとって有利な条項が盛り込まれています。
一般的な土地売買では、現存する建物の処理が大きな課題となります。特に古い建物がある場合、解体費用や解体時期、解体後の整地状況など、様々な問題が発生する可能性があります。この契約書は、そうした問題を事前に明確化し、売主の責任で建物解体を行うことを約束させる内容となっています。
Word形式で作成されているため、Microsoft Wordで簡単に編集が可能です。当事者名、物件情報、金額などの必要事項を入力するだけで、すぐに実用的な契約書として活用できます。不動産取引の専門知識がない方でも、各条項の意味を理解して適切に使用できるよう配慮されています。
この書式を使用する場面としては、中古住宅付きの土地を購入する際、工場跡地や店舗跡地を取得する場合、相続した古い建物付き土地を売却する際などが考えられます。特に、買主が建物解体の手間やリスクを避けたい場合に重宝する契約書です。
【2】条文タイトル
第1条(本件土地の売買) 第2条(手付金) 第3条(代金の支払い) 第4条(本件土地の引き渡し・所有権の移転) 第5条(境界の画定・実測処理) 第6条(危険の移転) 第7条(公租公課) 第8条(本件土地上の古い建物の取り壊し) 第9条(保証) 第10条(手付解除) 第11条(催告解除・無催告解除・損害賠償) 第12条(契約不適合) 第13条(合意管轄) 第14条(協議)
【3】逐条解説
第1条(本件土地の売買)
売買する土地の基本情報と売買代金を定める条項です。所在地、地番、地目、面積といった土地の特定に必要な事項を明記します。例えば、所在が「東京都世田谷区○○町」、地番が「123番」といった具合に記載されます。売買代金は消費税別で記載するのが一般的で、後のトラブル防止につながります。
第2条(手付金)
契約締結時に買主が支払う手付金について規定します。手付金は契約の証拠としての意味があり、通常は売買代金の5%から20%程度が相場です。この手付金は最終的に売買代金の一部として充当されるため、実質的な追加負担ではありません。
第3条(代金の支払い)
売買代金の支払方法と期限を定めます。一括払いの場合は支払期限を、分割払いの場合は各回の支払金額と期限を明確にします。例えば「令和6年3月31日限り一括払い」や「令和6年4月から12月まで毎月末日限り月額50万円」といった記載になります。
第4条(本件土地の引き渡し・所有権の移転)
代金支払いと土地引き渡しを同時履行とする重要な条項です。所有権移転の時期も明確化し、登記に必要な手続きについても規定しています。登記費用は買主負担とするのが通例で、司法書士費用や登録免許税が含まれます。
第5条(境界の画定・実測処理)
土地の境界確定と実測について定めた条項です。隣接地との境界が不明確だと将来トラブルの原因となるため、売主の責任で境界を確定させます。測量費用も売主負担となっており、買主に有利な内容です。公簿面積と実測面積に差があっても代金調整は行わないとしているのが特徴的です。
第6条(危険の移転)
天災等による土地の損害リスクがいつ買主に移るかを定めます。引き渡し前は売主がリスクを負担し、引き渡し後は買主が負担します。地震や台風などの自然災害で土地に被害が生じた場合の責任分担が明確になります。
第7条(公租公課)
固定資産税や都市計画税などの税金負担について規定します。所有権移転登記の日を基準として日割り計算で負担を分担するのが一般的です。例えば4月1日に登記すれば、3月31日までは売主、4月1日以降は買主が負担します。
第8条(本件土地上の古い建物の取り壊し)
この契約書の最も重要な条項で、売主が建物解体を行う義務を明確化しています。解体する建物の詳細情報を記載し、解体費用と抹消登記の手続きも売主の責任とします。買主は建物解体のリスクや費用を負担せずに済む大きなメリットがあります。
第9条(保証)
売主が土地について各種保証を行う条項です。抵当権などの担保権が設定されていないこと、第三者に占有されていないことなどを保証します。もし保証内容に反する事実が判明した場合、売主の責任で解決することになります。
第10条(手付解除)
契約締結後でも一定期間内であれば手付金の授受により契約解除できる規定です。売主が解除する場合は手付金の倍額を支払い、買主が解除する場合は手付金を放棄します。契約後の事情変更に対応する重要な仕組みです。
第11条(催告解除・無催告解除・損害賠償)
契約違反があった場合の解除手続きと損害賠償について定めます。特に買主の破産や反社会的勢力との関係が判明した場合は、催告なしに即座に解除できます。反社会的勢力の排除は現代の契約書には必須の条項となっています。
第12条(契約不適合)
引き渡された土地が契約内容と異なっていた場合の対応を規定します。2020年の民法改正で新設された概念で、従来の「瑕疵担保責任」に代わるものです。買主は修補請求や代金減額請求ができ、3年間の期間制限があります。
第13条(合意管轄)
契約に関する紛争が生じた場合の裁判所を事前に決めておく条項です。通常は売主または買主の所在地を管轄する地方裁判所を指定します。紛争解決の手続きを円滑化する目的があります。
第14条(協議)
契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法を定めます。まずは当事者間での協議による解決を図ることを原則とし、円満解決を目指す姿勢を示しています。
【4】活用アドバイス
この契約書を効率的に活用するためには、まず物件の詳細調査を十分に行うことが重要です。登記簿謄本で所有者や担保権の状況を確認し、現地調査で境界や建物の状況を把握しましょう。
契約書の空欄部分については、正確な情報を記入することが不可欠です。特に土地の所在や面積、建物の詳細については登記簿や図面と照合して間違いのないよう注意してください。売買代金や支払条件も両当事者が納得できる内容で設定することが大切です。
建物解体に関する条項では、解体時期や解体後の整地方法についても具体的に取り決めておくとより安心です。近隣への配慮や解体工事の騒音対策なども事前に協議しておくと良いでしょう。
契約締結前には、必ず専門家による内容確認を受けることをお勧めします。不動産会社や司法書士、行政書士などの専門家に相談することで、見落としがちなリスクを回避できます。
【5】この文書を利用するメリット
最大のメリットは、買主にとって非常に有利な条件が整備されていることです。建物解体の責任とリスクを売主に負わせることで、買主は安心して土地を取得できます。解体費用の負担もなく、解体後の整地状況についても売主の責任となるため、予期せぬ追加費用の心配がありません。
境界確定や実測についても売主の責任で実施されるため、隣接地とのトラブルリスクを大幅に軽減できます。測量費用の負担もないため、買主の経済的負担を抑えることができます。
契約不適合に関する規定も充実しており、引き渡し後に問題が発見された場合の対応方法が明確化されています。3年間の保証期間があるため、長期的な安心感も得られます。
Word形式での提供により、必要に応じて条項の追加や修正が容易に行えます。専門知識がなくても理解しやすい構成となっており、契約内容を正確に把握できる点も大きな利点です。
手付解除の規定により、契約後の事情変更にも柔軟に対応できます。一定期間内であれば比較的簡単な手続きで契約解除が可能で、取引の安全性を高めています。
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