〔1〕書式概要
この書式は、社員が会社を退職する際に提出する「退職届」と「機密保持に関する誓約」を一体化したものです。退職時にただ辞意を伝えるだけでなく、在職中に知り得た情報を守り続けることを約束する内容が含まれています。会社にとっては大切な情報の流出を防ぐ手段になり、社員にとってもトラブルを避ける安心材料となります。
たとえば、顧客リストや技術資料、財務状況などの情報を退職後に持ち出さないことを改めて明文化することで、双方が安心して円満に退職手続きを進められます。さらに、Word形式で編集が可能なため、会社名や住所、競業避止の期間などを自由に書き換えて活用できます。特別な知識がなくても理解できるように構成されているので、中小企業の人事担当者や個人事業主でも扱いやすい雛型です。
〔2〕条文タイトル
第1条(退職と誓約の確認 / Confirmation of Retirement and Pledge) 第2条(機密保持の誓約内容 / Confidentiality Obligations) 第3条(資料等の返還義務 / Return of Documents and Materials) 第4条(競業避止義務 / Non-Compete Obligation) 第5条(違反時の責任 / Liability for Breach)
〔3〕逐条解説
第1条(退職と誓約の確認 / Confirmation of Retirement and Pledge)
退職時に、過去に提出した誓約書の内容を改めて確認し、今後も遵守することを誓います。これは「形だけの確認」ではなく、在職中と同じ意識で秘密を守り続けることを明確にする役割を持ちます。たとえば、営業担当者が顧客情報を知っていた場合でも、退職後にそれを別会社で使うことを防ぐ意味があります。
第2条(機密保持の誓約内容 / Confidentiality Obligations)
技術情報や顧客情報、財務状況など幅広い情報を対象とし、会社の承諾なしに第三者へ漏らさないこと、私的に利用しないことを約束します。具体例を挙げると、退職後にSNSやブログで会社の内部事情を発信することや、知人へ顧客リストを渡すといった行為が禁止されます。
第3条(資料等の返還義務 / Return of Documents and Materials)
業務で使用した書類やデータをすべて会社に返すことを定めています。コピーやUSBに保存したものも含まれるため、「後で役立つかもしれない」と自宅に持ち帰ることは認められません。これにより、情報の持ち出しリスクを未然に防ぎます。
第4条(競業避止義務 / Non-Compete Obligation)
退職後一定期間、同じ地域で競合する会社に転職したり、自ら競合ビジネスを始めたりしないことを誓約します。例えば、金融業界で働いていた人が、退職してすぐ近隣の競合金融機関に就職するのを制限するものです。期間や地域は自由に設定できるため、会社の事情に合わせて調整できます。
第5条(違反時の責任 / Liability for Breach)
誓約に違反した場合、退職者自身が責任を負い、会社に損害が発生したときには賠償義務が生じることを明記しています。これは会社側の防御だけでなく、退職者に「後から法的なトラブルにならないように注意すべきだ」という自覚を促す効果があります。
〔4〕活用アドバイス
この書式は退職時に人事部や上司を通じて必ず署名押印させることで、将来的なトラブルを未然に防げます。
特に、重要情報を扱う職種(営業、開発、経理など)では必須といえます。Word形式なので、会社名や退職日を入力するだけで使える手軽さがあり、状況に応じて競業避止期間を柔軟に設定することも可能です。複数の雛型を作っておき、役職や部門ごとに使い分けるとさらに実務的に役立ちます。
〔5〕この文書を利用するメリット
この書式を利用する最大のメリットは、退職後の情報漏洩や競合リスクを事前に抑えられる点です。また、退職者に「秘密を守る意識」を再確認させる効果があり、社内の安心感を高めます。
さらに、明文化された約束があることで、万が一トラブルが起きた際も解決がスムーズになります。人事担当者にとっては書類準備の効率化になり、経営者にとっては企業価値の保護につながる重要なツールとなります。
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