【1】書式概要
この年休計画的付与規程は、働き方改革関連法による年次有給休暇の取得義務化に対応するため、企業が従業員の有給休暇を計画的に管理できるよう作成された実用的な規程テンプレートです。
2019年4月から施行された労働基準法改正により、すべての企業において年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の有給休暇を確実に取得させることが義務付けられました。この規程は、そうした企業の義務を効率的に履行するための具体的な仕組みを提供します。
本規程では、従業員を2つのグループに分けて計画的に有給休暇を付与する方式を採用しており、業務の継続性を保ちながら確実な休暇取得を実現できます。特に製造業、サービス業、小売業など、従業員が一斉に休暇を取ることが困難な職場環境において威力を発揮します。人事担当者や労務管理者が直面する「どうやって全員に確実に有給を取らせるか」という課題を、この規程一つで解決できるのです。
Word形式で編集可能なため、各企業の実情に合わせて月日や日数、グループ分けの方法などを自由にカスタマイズしていただけます。導入時期や付与日数の調整、特別な事情がある部署への配慮なども簡単に盛り込むことができ、まさに「使える規程」として活用いただけます。
労働基準監督署の調査対応や、従業員からの問い合わせにも自信を持って対応できるよう、必要な項目をもれなく網羅した構成となっています。
【2】逐条解説
第1条(総則)の解説
この条文は規程全体の目的を明確にする重要な条項です。年休計画的付与制度という聞き慣れない仕組みについて、会社として正式に取り扱いを定めることを宣言しています。就業規則本体ではなく、別規程として独立させることで、制度変更時の柔軟な対応を可能にしています。
第2条(定義)の解説
「年休計画的付与制度」という専門用語を分かりやすく定義しています。従業員が自分で有給休暇の日程を決めるのではなく、会社が予め日程を指定する制度であることを明確にしています。この定義により、後続の条文で使用される用語の意味が統一され、運用時の混乱を防げます。
第3条(適用者の範囲)の解説
対象者を「すべての社員」と規定することで、パートタイマーや契約社員も含めた包括的な適用を図っています。ただし、実際の運用では入社6か月未満の者や、既に年5日以上の有給休暇を取得している者は除外されることが多いでしょう。企業によっては、この条文に例外規定を追加することも考えられます。
第4条(付与の方法)の解説
最も特徴的な部分で、従業員をA・B2つのグループに分ける方法を定めています。これにより、全員が同時に休暇を取ることによる業務停止を回避できます。例えば営業部門では、顧客対応を継続するため、月初担当チームと月末担当チームで分けるといった運用が考えられます。
第5条(付与期間)の解説
各グループの付与時期を月単位で大まかに規定しています。「●月上旬」「●月中旬」という表記により、企業が実情に応じて具体的な時期を設定できる柔軟性を持たせています。繁忙期を避けた時期設定が重要で、小売業なら年末年始やセール時期、製造業なら決算期などを考慮する必要があります。
第6条(付与日数)の解説
計画付与する日数を「4日」と設定しています。労働基準法で義務付けられた年5日のうち、残り1日は従業員の自由取得に委ねる方式です。この設定により、完全な計画管理と個人の自由度のバランスを取っています。企業によっては5日すべてを計画付与することも可能です。
第7条(具体的な日にち)の解説
毎年1月中に具体的な付与日を決定し、掲示等で発表する手続きを定めています。早期の日程確定により、従業員の予定調整や業務計画立案が容易になります。掲示方法は社内掲示板、メール、社内システムなど、確実に周知できる方法を選択することが重要です。
第8条(取得義務)の解説
計画的に付与された有給休暇の取得を従業員の義務として明記しています。通常の有給休暇は権利行使ですが、計画付与の場合は取得が義務となる点が特徴的です。この条文により、「忙しいから取れない」という理由での未取得を防止できます。
第9条(特別付与)の解説
年休保有日数が少ない従業員への配慮を定めた条文です。計画付与により年5日の取得義務を下回る場合の救済措置として、不足分を特別付与する仕組みです。例えば、繰越分を含めて年6日しか有給がない従業員に4日の計画付与を行う場合、残り3日では義務の5日に達しないため、2日分の特別付与が必要になります。
第10条(グループ分け)の解説
グループ分けの権限を各課の課長に委ねる条文です。第2項では、業務の繁閑状況と課員の希望の両方を考慮することを明記しており、一方的な振り分けを防止しています。実際の運用では、家族の予定や個人的事情も含めて総合的に判断することが求められ、課長の裁量が重要な役割を果たします。
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