テンプラザ書式工房
2025年9月26日

契約書の落とし穴ランキング

契約書の落とし穴ランキング

契約書の落とし穴ランキング

 


中小企業が見落としがちな危険条項TOP10

 

はじめに

 

契約書は事業の生命線です。しかし、多くの中小企業が「定型文だから大丈夫」「相手が大手だから安心」と考え、重大な落とし穴に気づかないまま署名してしまいます。この一文の見落としが、数千万円の損失につながった実例は数知れません。

 

 


🚨 危険条項TOP10ランキング

 

 

第1位:無制限責任条項

危険度:★★★★★

条項例: 「乙は本契約に関し甲に生じた一切の損害について無限責任を負う」

実例: システム開発会社A社が「無制限責任」条項を見落とし、クライアントの営業損失3億円を請求された。開発費300万円の案件で会社存続の危機に。

対策: 責任上限額を明記(「損害額は契約金額の範囲内に限定する」)

 

 

第2位:一方的解約権条項

危険度:★★★★★

条項例: 「甲は理由の如何を問わず、30日前の通知により本契約を解約できる」

実例: 製造業B社が大口取引先から突然契約解除。専用設備投資2000万円が回収不能に。解約条項が一方的で損害賠償請求もできず。

対策: 相互解約権の設定、合理的理由の明記、損害賠償条項の追加

 

 

第3位:知的財産権の全面譲渡条項

危険度:★★★★☆

条項例: 「本業務で生じた一切の知的財産権は甲に帰属する」

実例: IT企業C社が開発したAIアルゴリズムの権利を全て発注者に譲渡。後にそのアルゴリズムが他社にライセンス販売され、C社は利益を得られず。

対策: 共有権利設定、既存技術の除外、将来利用権の確保

 

 

第4位:秘密保持の非対等条項

危険度:★★★★☆

条項例: 「乙のみが甲の機密情報について秘密保持義務を負う」

実例: コンサル会社D社が一方的な秘密保持条項により、クライアントの機密情報を他社に流用される被害を受けたが、相手には秘密保持義務がなく対抗できず。

対策: 相互秘密保持条項への変更

 

 

第5位:支払条件の不利な設定

危険度:★★★★☆

条項例: 「支払は検収完了後120日以内、分割払いとする」

実例: 建設会社E社が資金繰り悪化。長期の支払条件により運転資金が不足し、他の工事に支障をきたした。

対策: 前払金条項、短期支払条件への変更要求

 

 

第6位:不可抗力条項の欠如

危険度:★★★☆☆

条項例: 不可抗力に関する条項が一切ない契約書

実例: COVID-19により納期遅延したF社。不可抗力条項がなく、遅延損害金1500万円を請求された。

対策: 天災、疫病、法令変更等を含む包括的な不可抗力条項の追加

 

 

第7位:管轄裁判所の不利な指定

危険度:★★★☆☆

条項例: 「本契約に関する紛争は○○地方裁判所を専属的管轄とする」 (相手方本社所在地の遠隔地を指定)

実例: 九州の企業G社が北海道の裁判所を管轄とする契約で紛争。弁護士費用・交通費だけで300万円の出費。

対策: 双方の中間地点または自社近隣の裁判所指定

 

 

第8位:過度な品質保証条項

危険度:★★★☆☆

条項例: 「乙は5年間の品質保証を行い、不具合発生時は無償で対応する」

実例: 機械部品メーカーH社が通常1年保証の製品で5年保証を約束。3年目に大規模リコールが発生し、対応費用8000万円の負担。

対策: 業界標準の保証期間設定、保証範囲の明確化

 

 

第9位:競業禁止条項の広範な設定

危険度:★★☆☆☆

条項例: 「契約終了後3年間、同業他社との取引を禁止する」

実例: 専門商社I社が広範な競業禁止により、契約終了後の事業展開が大幅に制限され、売上の60%を失った。

対策: 期間・地域・業務範囲の限定

 

 

第10位:自動更新条項の罠

危険度:★★☆☆☆

条項例: 「3ヶ月前までに解約通知がない場合、自動的に1年間更新される」

実例: 物流会社J社が更新通知期限を失念。不利な条件での契約が1年間自動継続し、年間500万円の損失。

対策: 更新時期の社内管理体制構築、条件見直し機会の確保

 

 


⚖️ 弁護士が絶対に入れる条項 vs 削除する条項

 

 

【絶対に入れる条項】

1. 責任制限条項

「本契約に基づく損害賠償責任の上限は、契約金額と同額までとする」

 

2. 不可抗力条項

「天災、疫病、戦争、法令変更等により履行が困難となった場合、当事者は責任を免れる」

 

3. 準拠法・管轄合意条項

「本契約は日本法を準拠法とし、紛争は東京地方裁判所を専属管轄とする」

 

4. 契約解除事由の明確化

「相手方が30日以上の支払遅延をした場合、催告なしに解除できる」

 

5. 知的財産権の帰属明記

「既存技術については各当事者に帰属し、共同開発成果は共有とする」

 

【削除すべき条項】

 

1. 包括的な免責条項

「甲はいかなる損害についても責任を負わない」

→ 相手方のみを利する不公平条項

 

2. 一方的な契約変更権

「甲は事前通知により契約内容を変更できる」

→ 契約の安定性を損なう

 

3. 過度な秘密保持期間

「契約終了後20年間秘密保持義務を負う」

→ 過度に長期間の制約

 

4. 法外な遅延損害金

「遅延1日につき契約金額の10%を支払う」

→ 公序良俗違反の可能性

 

5. 不明確な成果物基準

「甲が満足する品質の成果物を納入する」

→ 主観的判断基準で紛争の元

 

 


🛡️ 契約書チェック実践ガイド

 

 

チェックポイント一覧

  1. 当事者の対等性 - 一方が圧倒的に有利な条項はないか
  2. 責任の上限 - 無制限責任条項が含まれていないか
  3. 知的財産権 - 自社の権利が適切に保護されているか
  4. 支払条件 - 資金繰りに無理のない条件か
  5. 解約・更新条件 - 公平で合理的な設定か

 

 

弁護士相談のタイミング

  • 必須相談ケース

    • 契約金額1000万円以上
    • 長期継続契約(3年以上)
    • 知的財産権が関わる契約
    • 海外企業との契約

 

  • 相談推奨ケース

    • 初回取引の相手方
    • 業界標準と異なる特殊条項
    • 重要な基幹業務の契約

 


💡 まとめ:契約書で会社を守る5原則

 

 

  1. 対等性の確保 - 一方的に不利な条項は徹底的に見直す
  2. 責任範囲の明確化 - 無制限責任は絶対に避ける
  3. 専門家の活用 - 重要契約は必ず弁護士に相談
  4. 定期見直し - 契約更新時は条件を再検討
  5. 社内体制の整備 - 契約管理の責任者と手順を明確化

 

 

契約書は「お守り」ではなく「武器」です。 適切に活用すれば事業を守り、成長を加速させる強力なツールとなります。一方で、軽視すれば会社存続の危機を招く「時限爆弾」ともなりかねません。

 

この記事で紹介した落とし穴を避け、あなたの会社にとって最適な契約条項を構築してください。