今回は、実務で時々直面する「契約締結日のバックデート」について考えてみたいと思います。
バックデートとは何か?
バックデートとは、契約書に実際の締結日より過去の日付を記載することです。例えば、3月15日に契約書にサインしたにもかかわらず、契約書の日付を3月1日とするようなケースです。
実務で遭遇するバックデートの事例
ケース1:単なる事務手続きの遅れ
A社とB社は3月1日から取引を開始することで合意し、その日から実際にサービス提供も始まりました。しかし、契約書の最終確認に時間がかかり、実際のサイン交換は3月15日になってしまいました。
「契約書、3月1日付けでいいですよね?その日から既にサービス提供始まってますし。」
営業部からこのような相談を受けることはよくあります。実務上はやむを得ないケースと言えるでしょう。
ケース2:予算消化のためのバックデート
「実は前年度の予算で発注したことにしたいので、契約日を3月31日にしてもらえませんか?実際のサービス開始は4月15日からでOKです。」
取引先からこのような依頼を受けることもあります。これは単なる事務手続きの遅れとは性質が異なり、予算消化のために事実と異なる日付を記載する行為です。
バックデートのリスク
法的リスク
契約書に虚偽の日付を記載することは、場合によっては文書偽造や粉飾決算に該当する可能性があります。特に、税務処理や会計処理に影響を与える場合は注意が必要です。
実務上のリスク
「すみません。あのバックデートした契約書、実は保険の加入が間に合ってなかったんです。」
ある日、このような連絡を受けました。バックデートした期間中に事故が発生した場合、保険が適用されないリスクがあります。
適切な対応方法
追認条項の活用
「本契約は2025年3月15日に締結されるが、2025年3月1日に遡って効力を生じるものとする。」
このような追認条項を設けることで、バックデートせずに過去に遡った効力を持たせることができます。
覚書の活用
契約書の日付は実際の締結日とし、サービス提供開始日などは別途覚書で明確にする方法もあります。
終わりに
実務では様々な理由でバックデートの誘惑に駆られることがありますが、リスクを理解した上で適切な代替手段を検討することが法務担当者の役割だと思います。契約日は「事実」であり、それを曲げることのリスクを常に意識していきたいですね。
みなさんの職場ではどのように対応されていますか?