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【1】書式概要
最近は、経理の入力作業や請求書のチェックをAIエージェントに任せる会社が増えてきました。ただ、いざ外部の業者にその運用をお願いしようとすると、どこまでAIに任せてよいのか、誤った処理が起きたときは誰が責任を持つのか、といった線引きがあいまいなまま契約してしまうケースが少なくありません。
この雛型は、経理事務や請求書処理、契約書の一次チェックといったバックオフィス業務にAIエージェントを取り入れる際、その運用管理を外部の会社に委託するための契約書としてまとめたものです。送金や支払いの実行など会社のお金に直結する処理は必ず人が確認してから進める仕組みや、対象となるデータの正確性を誰が担保するのかという役割分担、AIの処理に誤りが見つかったときの訂正の流れ、処理履歴を一定期間残しておくルールなど、AIをバックオフィスで安心して使うために必要な取り決めを一通り盛り込んでいます。
会計や法務の専門知識がなくても読み進められるよう、専門用語はできるだけかみ砕いて書いています。Wordファイルでお渡しするので、会社名や委託料、保存期間といった空欄部分はもちろん、文言そのものも自社の実情に合わせて自由に書き換えていただけます。AIエージェントの導入を検討している経理担当者や情報システム担当者、バックオフィス業務を受託する側の事業者の方まで、幅広く活用いただけるひな形です。
【2】条文タイトル一覧(全26条)
第1条(目的)
第2条(定義)
第3条(委託業務の内容)
第4条(対象業務)
第5条(委託料及び支払方法)
第6条(契約期間)
第7条(甲の協力義務)
第8条(乙の義務)
第9条(データの正確性及び甲の確認)
第10条(承認フロー)
第11条(誤処理の訂正)
第12条(監査証跡の保存)
第13条(AI出力の性質及び限界)
第14条(個人情報及び財務情報の取扱い)
第15条(秘密保持)
第16条(知的財産権)
第17条(AIエージェントの誤作動等に対する責任)
第18条(免責事項)
第19条(損害賠償)
第20条(反社会的勢力の排除)
第21条(再委託)
第22条(契約内容の変更)
第23条(解除)
第24条(有効期間経過後の効力)
第25条(協議事項)
第26条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は、契約全体の狙いを最初に示す部分です。経理や請求書処理、契約書のチェックといった管理部門の仕事にAIを活用してもらうことで、会社の業務がより早く、より正確に回るようにすることが目的だと明記しています。たとえば、月末の請求書処理に毎回残業していた経理担当者が、AIの支援によって定時で帰れるようになる、といった変化を後押しする位置づけの条文です。
第2条(定義)
契約の中で繰り返し出てくる言葉の意味を先にそろえておく条文です。バックオフィスAIそのものの定義に加え、AIが処理する対象データ、そして処理結果を最終的にチェックする承認担当者という3つの言葉を整理しています。あとの条文を読むときに、この3つの言葉がどの範囲を指しているのかで解釈のズレが起きないようにする役割があります。
第3条(委託業務の内容)
何を委託するのかという大枠と、実際の仕事の中身は個別の仕様書で決めるという役割分担を定めた条文です。契約書自体には細かい作業内容まで書き込まず、実務レベルの詳細は別紙の仕様書に任せることで、業務内容が変わるたびに契約書全体を作り直さなくて済むようにしています。仕様書と契約書の内容がぶつかったときにどちらを優先するかも明記されています。
第4条(対象業務)
AIエージェントに任せてよい業務の具体例を挙げた条文です。請求書のデータ化や勘定科目の推定、支払データの作成、契約書の一次チェック、よくある経理の問い合わせ対応などが例示されています。あわせて、送金や支払いの実行、契約の締結そのものをAIだけで完結させてはいけないという歯止めも入っており、AI任せにしすぎない仕組みがここで示されています。
第5条(委託料及び支払方法)
委託料の金額や支払い時期といった具体的な条件は別紙の仕様書に委ね、支払いが遅れた場合の遅延損害金の利率だけをこの契約書本体で定めています。実務でよく使われる年14.6%という利率を採用しており、支払管理のルールとして分かりやすい内容になっています。
第6条(契約期間)
契約期間を1年間とし、期間満了の1か月前までにどちらからも特に申し出がなければ、同じ条件でもう1年自動的に続くという更新のルールを定めています。契約を結ぶたびに毎年手続きし直す手間を省きたい会社に向いた仕組みです。
第7条(甲の協力義務)
AIの運用を委託する側にも果たすべき役割があることを定めた条文です。必要な情報を期限までに渡すこと、データの正確性を保つよう努めること、社内システムへのアクセス権限を渡すといった協力が求められています。データそのものに誤りがあった場合の責任は委託した側が負うという整理もここに含まれています。
第8条(乙の義務)
AI運用を受託する側が守るべき基本姿勢を定めた条文です。注意深く業務を行うこと、AIの処理基準を委託元と相談しながら決め、勝手に変更しないこと、運用状況を定期的に報告することが求められています。たとえば、AIの判断基準を突然変えてしまい、委託元が気づかないうちに処理結果が変わっていた、という事態を防ぐ狙いがあります。
第9条(データの正確性及び甲の確認)
AIの処理結果と元データの整合性を受託側がある程度確認する義務がある一方で、そもそものデータが正しいかどうかは委託元が確認するという役割分担を定めています。入力データそのものに誤りがあった場合にまで受託側が責任を負わされることのないよう、線引きをはっきりさせています。
第10条(承認フロー)
この契約の中でも特に重要な条文です。支払いの実行や送金の指図など、会社の資産に大きく影響する処理については、必ず承認担当者の承認を経てから実行しなければならないと定めています。承認担当者はAIの判断をそのまま受け入れる義務はなく、最終的な判断権限を持つ人間の側にあることを明確にしている点がポイントです。
第11条(誤処理の訂正)
AIの処理に誤りが見つかったときの初動対応を定めた条文です。まずは相手方に速やかに知らせること、受託側に原因がある誤りだった場合は速やかに訂正し、再発防止策を講じることが求められています。ミスが起きたときに、誰が何をすべきかがあらかじめ決まっていることで、対応がスムーズになります。
第12条(監査証跡の保存)
AIがどのような処理を行い、誰がそれを承認したのかという記録を、処理から7年間保存するというルールです。会社法などの法令でより長い保存が必要な場合はそちらに従うという柔軟性も持たせています。あとから処理内容を振り返って確認できるようにしておくための条文です。
第13条(AI出力の性質及び限界)
AIが出す答えは確率的な推論に基づくものであり、常に完璧に正確とは限らないという前提を、契約の当事者同士で確認しておく条文です。どの範囲まで人間がチェックすべきかは業務の性質によって変わるため、あらかじめ相談して決めることになっています。AIを過信しないための土台となる条文といえます。
第14条(個人情報及び財務情報の取扱い)
個人情報や会社の財務情報を扱う際に、個人情報保護法などのルールを守ることを定めています。また、これらの情報の取扱いを別の会社にさらに委託する場合は、事前に委託元の書面での了承を得る必要があるとしており、情報が知らないうちに広がってしまうことを防いでいます。
第15条(秘密保持)
契約を通じて知り得たお互いの情報を、無断で外部に漏らしたり、契約の目的以外に使ったりしてはいけないという条文です。もともと公になっていた情報などは対象外とし、この義務は契約が終わったあとも3年間は続くとしています。
第16条(知的財産権)
AI運用の中で新しく生まれた著作権などの知的財産権は、特に別段の定めがない限り受託側に帰属するとしつつ、委託側が契約の目的の範囲でAIを使い続けられるよう、必要なライセンスを受託側から得られる仕組みになっています。
第17条(AIエージェントの誤作動等に対する責任)
受託側の落ち度でAIの出力に誤りが生じ、それによって損害が出た場合の賠償責任を定めています。一方で、委託側が承認の手続きを飛ばしたり軽視したりしてAIの出力をそのまま採用した結果生じた損害については、委託側自身が責任を負うとしており、承認フローを守ることの重要性がここでも強調されています。より詳しい責任分担を決めたい場合は、別の責任分界契約と組み合わせる想定になっています。
第18条(免責事項)
天災など不可抗力によるAIの停止、委託側から渡されたデータの誤り、委託側が無断でAIを目的外に使ったり改変したりした場合、外部のAI基盤サービスや会計システム側の障害や仕様変更など、受託側の努力だけではどうにもならない事情について、責任を負わないことを定めた条文です。
第19条(損害賠償)
契約違反によって相手に損害を与えた場合の賠償責任を定めるとともに、故意や重大な過失がない限り、賠償額の上限を該当月の委託料の6か月分までとしています。想定外に大きな賠償リスクを負わないよう、あらかじめ上限を決めておく実務的な条文です。
第20条(反社会的勢力の排除)
契約する双方が、暴力団など反社会的勢力に関わっていないことを約束する、いわゆる反社条項です。もし違反が発覚した場合は、催告なしにすぐ契約を解除できるとしています。
第21条(再委託)
受託側が仕事の一部または全部をさらに別の会社に任せる場合、事前に委託側の書面での了承が必要だと定めています。再委託先が何か問題を起こした場合も、受託側自身が起こしたこととして責任を負うため、委託側からすると安心して任せられる仕組みです。
第22条(契約内容の変更)
契約の内容を変えたいときは、口約束ではなく、きちんと話し合ったうえで書面に残すというルールです。あとになって言った言わないのトラブルを防ぐための基本的な条文です。
第23条(解除)
相手が契約に違反し、期限を決めて是正を求めたのに直らなかった場合や、相手が倒産手続きに入った場合などに、契約を解除できることを定めています。倒産のような緊急性の高い場合は、催告なしに即座に解除できるとしている点がポイントです。
第24条(有効期間経過後の効力)
契約が終了したあとも、監査証跡の保存や秘密保持、知的財産権、誤作動の責任、損害賠償、管轄裁判所に関する条文だけは効力が続くと定めています。契約が終わったからといって、それまでの情報管理や責任の所在まで消えてしまわないようにするための条文です。
第25条(協議事項)
契約書に書かれていないことや、解釈で迷うことが出てきた場合は、双方が誠実に話し合って解決するという、いわば最後の受け皿となる条文です。
第26条(管轄裁判所)
万が一裁判に発展した場合、どこの裁判所で争うかをあらかじめ決めておく条文です。トラブルが起きてから管轄でもめることを防ぐ役割があります。
【4】よくある質問(FAQ)
Q. このひな型は自社でそのまま使えますか?
A. ●●となっている部分をお使いの会社名や委託料、保存期間などに合わせて書き換えていただければ、そのままご利用いただけます。Word形式なので文言の追加や削除も自由に行えます。
Q. AIの誤作動によるトラブルまで細かく決めたい場合はどうすればいいですか?
A. 本書式の第17条でも基本的な責任分担は定めていますが、より詳細に取り決めたい場合は、別売りの「AIエージェント誤作動・誤判断に関する責任分界契約書」と組み合わせてご利用いただくことを想定しています。
Q. 会計や法律の専門知識がなくても使えますか?
A. 使用上の解説や逐条解説を読みながら進めていただければ、専門知識がなくても内容を理解し、自社に合わせて調整していただけるように作成しています。
Q. 監査証跡の保存期間は変更できますか?
A. 第12条では7年間としていますが、会社法など関係する法令の保存義務の期間に応じて、数字を書き換えてご利用いただけます。
Q. 受託側(AI運用代行会社)の立場でも使えますか?
A. 委託する側・される側どちらの視点でも読めるように条文を整理していますので、AI運用を受託する事業者の方が契約書のたたき台として使うことも可能です。
【5】活用アドバイス
導入する前に、まず自社でAIに任せたい業務範囲(第4条に相当する部分)を具体的に洗い出しておくと、個別仕様書の作成がスムーズになります。
承認フロー(第10条)は、実際に社内の誰が承認担当者になるのかを事前に決めてから契約を結ぶと、運用開始後の混乱を防げます。
監査証跡の保存期間(第12条)は、自社の業種や取り扱うデータの性質に応じて、顧問税理士や専門家に一度確認しておくと安心です。
AIエージェントの誤作動リスクをより詳細に管理したい場合は、別売りの責任分界契約書と併用することを検討してみてください。
契約前に、損害賠償の上限(第19条)が自社にとって妥当な水準かどうかを、想定される委託料の規模と照らし合わせて確認しておくとよいでしょう。
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