【1】書式概要
この書式は、いわゆる「AV新法」と呼ばれるAV出演被害防止・救済法(令和4年法律第78号)に基づいて、アダルトビデオへの出演契約を解除するための通知書です。
2022年6月に施行されたこの法律では、出演者の意思によって契約をなかったことにできる権利が認められています。具体的には、作品が公開されてから原則1年以内であれば、理由を問わず無条件で契約を解除できます。また、制作会社側が契約内容の説明を怠っていたり、撮影前の待機期間や公開前の確認期間といったルールを守っていなかった場合にも、契約を取り消したり解除したりすることが可能です。
この通知書は、そうした解除や取消しの意思を制作会社に正式に伝えるための書面として使います。たとえば、出演後に「やっぱり公開をやめてほしい」と思ったとき、契約時に十分な説明がなかったことに後から気づいたとき、あるいは撮影から公開までの期間が短すぎて違法だと分かったときなど、さまざまな場面で活用できます。
書式には、どの条文を根拠に解除するのかを選べるチェックボックス形式を採用しており、ご自身の状況に合わせて該当箇所にチェックを入れるだけで使えるようになっています。映像の公開停止や回収、データ削除といった差止請求の内容もあらかじめ盛り込んでありますので、必要な請求を漏れなく相手に伝えることができます。
Word形式でお渡ししますので、日付や宛先、契約内容などをご自身の状況に合わせて自由に編集していただけます。法律の専門家でなくても、空欄を埋めていくだけで正式な通知書が完成する構成になっています。内容証明郵便で送付する際の注意点や、契約締結時期による解除期間の違いなども注記として記載していますので、初めての方でも安心してお使いいただけます。
【2】条文タイトル
第1条(契約の特定)
第2条(解除の意思表示)
第3条(解除の根拠)
第4条(差止請求)
第5条(損害賠償請求権の不存在確認)
第6条(原状回復義務)
第7条(回答期限)
第8条(警告)
【3】逐条解説
第1条(契約の特定)
どの契約を解除するのかを明確にするための条項です。契約を結んだ日、契約書のタイトル、作品名や作品番号、撮影日、公開日などを記載します。制作会社が複数の作品を扱っている場合、どの作品に関する契約なのかが曖昧だと「そんな契約は知らない」と言い逃れされる可能性があります。たとえば「2024年3月15日締結の出演契約書に基づく作品番号ABC-123」というように、できるだけ具体的に特定しておくことが大切です。
第2条(解除の意思表示)
契約を解除する意思をはっきりと示す条項です。シンプルな内容ですが、これがないと何のために通知書を送ったのか分からなくなってしまいます。「本書面をもって解除します」という一文があることで、この通知書が届いた時点で解除の効力が発生することになります。口頭で「やめたい」と伝えただけでは証拠が残りませんが、書面にすることで後から「聞いていない」と言われるのを防げます。
第3条(解除の根拠)
どの法律のどの条文に基づいて解除するのかを示す条項です。AV出演被害防止・救済法では、解除できる場合がいくつか定められています。作品公開から1年以内なら無条件で解除できる「任意解除権」(第13条)、契約時に十分な説明がなかった場合の「取消権」(第11条)、撮影時期や公開時期のルール違反があった場合の「法定義務違反解除」(第12条)があります。自分の状況に当てはまるものにチェックを入れて使います。たとえば、契約書をもらってから1か月経たないうちに撮影された場合は、第12条の法定義務違反に該当します。
第4条(差止請求)
映像の公開を止めてもらい、既に出回っているものを回収・削除してもらうよう求める条項です。契約を解除しただけでは、すでにネット上にアップされた動画やDVDとして販売されたものは残ってしまいます。この条項では、公開の停止、販売・配信されているすべての媒体の回収と削除、そして他の業者に流通している場合はその業者の情報を教えてもらうことを請求しています。サンプル動画やサムネイル画像なども対象に含めている点がポイントです。
第5条(損害賠償請求権の不存在確認)
解除したことで制作会社から損害賠償を請求されないことを確認する条項です。一般的な契約では、一方的に契約を破棄すると違約金や損害賠償を求められることがあります。しかしAV出演被害防止・救済法では、出演者が法律に基づいて解除した場合、制作会社は損害賠償を請求できないと明確に定められています。「解除したら高額な違約金を払わされるのでは」という不安を持っている方も多いと思いますが、この法律のもとでは心配いりません。この条項でその点を念押ししています。
第6条(原状回復義務)
契約を解除した場合に、お互いが元の状態に戻す義務を負うことを示す条項です。出演者側としては、すでに受け取った出演料があれば返還する必要が出てきます。ただし重要なのは、出演料を返すことが差止請求の条件ではないという点です。「お金を返すまで映像は消さない」という主張は認められません。この条項では、返還について話し合う用意はあるけれど、それと映像削除は別問題であることをはっきり伝えています。
第7条(回答期限)
相手に対して、いつまでに返事をしてほしいかを示す条項です。期限を設けないと、いつまでも放置されてしまう恐れがあります。ここでは14日以内としていますが、状況に応じて調整しても構いません。期限を明記しておくことで、「これだけ待っても対応がなかった」という証拠にもなり、次のステップ(法的手続き)に進む際の根拠になります。
第8条(警告)
通知に応じない場合は法的手段を取る用意があることを伝える条項です。差止請求の訴訟、損害賠償請求、そして刑事告訴の可能性について言及しています。AV出演被害防止・救済法では、解除を妨害するために嘘をついたり脅したりした場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という厳しい罰則が定められています。この警告があることで、相手に「無視したらまずい」と思わせる効果が期待できます。
【4】FAQ
Q1. この通知書は誰でも使えますか?
A1. AV出演被害防止・救済法は、年齢や性別を問わずすべての出演者に適用されます。女性だけでなく男性の出演者も、また同人AVや個人撮影の作品に出演した方も使うことができます。
Q2. 作品が公開されてから1年以上経っていますが、まだ解除できますか?
A2. 任意解除権(理由なく解除できる権利)は原則として公開から1年間ですが、契約締結時期によっては2年間の場合もあります。また、制作会社側に説明義務違反や撮影・公開時期のルール違反があった場合は、1年を過ぎていても取消しや解除が可能な場合があります。
Q3. 内容証明郵便で送らないといけませんか?
A3. 法律上は書面または電子データで通知すれば効力が生じます。ただし、内容証明郵便(配達証明付き)で送ることを強くおすすめします。「届いていない」「そんな内容ではなかった」と言われるのを防ぐことができ、裁判になった場合の証拠としても有効です。
Q4. 出演料を返さないと解除できませんか?
A4. いいえ、出演料の返還は解除の条件ではありません。解除は通知を発した時点で効力が生じます。もちろん、最終的には原状回復として出演料を返還する義務は生じますが、「お金を返すまで映像は消さない」という主張は認められません。
Q5. 相手が通知を無視したらどうすればいいですか?
A5. まずは弁護士や法テラス、性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)に相談することをおすすめします。差止請求訴訟を起こしたり、刑事告訴を検討したりといった次のステップについてアドバイスを受けられます。
Q6. 制作会社から「違約金を払え」と言われたらどうすればいいですか?
A6. AV出演被害防止・救済法に基づく解除の場合、制作会社は損害賠償を請求できないと法律で定められています。そのような要求には応じる必要はありません。もし脅迫めいた言い方をされた場合は、それ自体が犯罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)に該当する可能性があります。
Q7. 契約書をもらっていないのですが、この通知書は使えますか?
A7. 契約書が交付されていないこと自体が法律違反です。その場合は第11条に基づく取消しが可能ですので、この通知書の「第11条(説明義務違反等による取消し)」にチェックを入れてお使いください。
Q8. 海外のサイトに動画がアップされている場合はどうなりますか?
A8. 第15条第3項では、制作会社に対して映像の流通先の情報を提供するよう求める権利が認められています。この通知書にもその請求を盛り込んでいますので、まずは制作会社から情報を得て、その上で個別に対応を検討することになります。
【5】活用アドバイス
この通知書を効果的に使うためのポイントをいくつかお伝えします。
まず、送付前に必ず契約締結日と作品の公開日を確認してください。任意解除権が使えるかどうかは、契約をいつ結んだか、作品がいつ公開されたかによって決まります。注記に記載している経過措置の表を参照して、ご自身がどのパターンに該当するか把握しておきましょう。
次に、チェックボックスは該当するものすべてにチェックを入れることをおすすめします。たとえば、公開から1年以内で任意解除権が使える場合でも、契約時に説明がなかったなら第11条の取消しにもチェックを入れておくと、根拠が二重になって相手に反論されにくくなります。
送付方法は内容証明郵便(配達証明付き)を選んでください。郵便局の窓口で手続きできます。費用は1,500円程度かかりますが、通知を送った日時と内容が公的に証明されるため、後々のトラブル防止に非常に有効です。電子内容証明(e内容証明)を使えば、郵便局に行かずにインターネットから手続きすることも可能です。
通知書を送る前に、可能であれば専門家に一度見てもらうことをおすすめします。法テラス(0570-078374)では無料で相談できますし、性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)でも対応してもらえます。弁護士費用が心配な方は、法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、費用の立替払いや分割払いが可能です。
最後に、通知書のコピーと配達証明書は必ず保管しておいてください。相手から連絡があった場合のやり取りも、日時と内容を記録しておくと安心です。
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