【1】書式概要
この文書は、企業が外部の会社や個人に業務を依頼する際、その作業をテレワークで行ってもらうためのルールを定めた合意書の雛型です。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が当たり前になった今、多くの企業が直面している「外注先にもリモートで働いてもらいたいけれど、どんな取り決めをしておけばいいのか分からない」という悩みを解決します。
具体的には、作業場所の限定、事前の届出義務、パソコンなどの機器の貸し出しルール、セキュリティ対策の徹底、進捗報告の方法、感染症への対応など、テレワーク実施時に起こりがちなトラブルを未然に防ぐための条項が網羅されています。システム開発やデザイン制作、コンサルティングなど、パソコンを使った作業を外部に委託している企業なら業種を問わず活用できる内容となっています。
Word形式で提供されているため、自社の状況に合わせて条文を修正したり、会社名や期間を入力したりといった編集が簡単に行えます。契約書の専門知識がない方でも安心して使用できるよう、分かりやすい表現で作成されており、印刷してすぐに使用することも可能です。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(テレワーク実施場所の指定) 第3条(テレワーク実施の事前届出) 第4条(設備及び環境の整備義務) 第5条(通信費用及び機器費用の負担) 第6条(機器貸与時の責任) 第7条(機器返却義務) 第8条(セキュリティ遵守義務) 第9条(業務報告義務) 第10条(緊急事態への対応) 第11条(感染症罹患時の対応) 第12条(委託者オフィスでの業務実施) 第13条(損害賠償) 第14条(原契約との関係) 第15条(有効期間及び終了)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は合意書全体の狙いを明確にしています。既に結んでいる業務委託契約にプラスして、テレワーク時の細かいルールを決めておこうという趣旨です。後々「そんな話は聞いていない」といったトラブルを避けるための土台となる重要な条文といえるでしょう。
第2条(テレワーク実施場所の指定)
作業をしてもよい場所を具体的に限定する条文です。例えば、機密性の高いシステム開発案件では、カフェやコワーキングスペースでの作業を禁止し、自宅や指定されたオフィスでのみ作業可能とするケースが想定されます。事前承認なしに勝手な場所で作業されることを防ぐ効果があります。
第3条(テレワーク実施の事前届出)
テレワークを行う3営業日前までに届け出ることを義務付けています。突然「明日から在宅で作業します」と言われても、委託側としては進捗管理や連絡体制の準備ができません。実施場所や担当者の連絡先まで事前に把握しておくことで、スムーズな業務進行が可能になります。
第4条(設備及び環境の整備義務)
受託者側が自分の責任で作業環境を整えることを定めています。例えば、安定したインターネット回線、適切なセキュリティソフト、静かな作業スペースなどが該当します。これらの準備不足で業務に支障が出た場合の責任の所在も明確にしています。
第5条(通信費用及び機器費用の負担)
通信費やパソコン購入費用は受託者の負担であることを明記しています。「テレワーク用にパソコンを買ったから費用を請求したい」といった追加請求を防ぐ効果があります。一方で、委託者側が必要に応じて機器を貸し出すことも可能としており、柔軟な運用ができる設計になっています。
第6条(機器貸与時の責任)
委託者が貸し出したパソコンやタブレットなどの管理責任について定めています。例えば、貸与されたノートパソコンを落として画面を割ってしまった場合、修理費用は受託者が負担することになります。機器の適切な管理を促し、紛失や破損のリスクを軽減する狙いがあります。
第7条(機器返却義務)
業務終了時や委託者から求められた際の機器返却について規定しています。「契約が終わったのにパソコンを返してもらえない」といったトラブルを防ぐため、返却義務を明確にしています。データの消去なども含めて適切な返却手続きが重要になります。
第8条(セキュリティ遵守義務)
テレワーク時のセキュリティ対策について定めています。例えば、VPN接続の使用、ウイルス対策ソフトの導入、パスワード管理の徹底などが該当します。情報漏洩は企業にとって致命的なダメージとなるため、受託者側にも厳格なセキュリティ対策を求める内容となっています。
第9条(業務報告義務)
テレワーク中も定期的な進捗報告を義務付けています。オフィスで働いているときと違い、受託者の作業状況が見えにくいため、日報や週報などの形で業務状況を共有してもらう必要があります。委託者側からの確認権も保障されており、適切な進捗管理が可能です。
第10条(緊急事態への対応)
感染症の流行や自然災害などで業務継続が困難になった場合の対応を定めています。例えば、地震でインターネット回線が断絶した場合や、受託者の居住地域に緊急事態宣言が発令された場合などが想定されます。早期の報告と代替手段の検討を義務付けています。
第11条(感染症罹患時の対応)
新型コロナウイルス感染症を念頭に置いた条文です。受託者の従業員が感染したり濃厚接触者になったりした場合の報告義務を定めています。治療費や業務遅延による損害を委託者に請求できないことも明記されており、感染リスクの負担関係を明確にしています。
第12条(委託者オフィスでの業務実施)
受託者がたまには委託者のオフィスで作業したい場合のルールです。セキュリティの観点から事前承諾制としており、委託者の都合で断ることも可能です。オフィス利用を断られた場合の代替策確保も受託者の義務とされています。
第13条(損害賠償)
合意書違反による損害賠償について定めています。受託者側の故意や過失がなくても責任を負うという厳格な内容になっており、受託者に慎重な業務遂行を促す効果があります。情報漏洩などの重大な事故を防ぐための抑制効果も期待されます。
第14条(原契約との関係)
この合意書と元々の業務委託契約との関係を整理しています。内容が矛盾した場合は合意書を優先し、合意書に書かれていない事項は元の契約に従うという明確なルールを設けています。契約書の解釈で混乱することを防ぐ重要な条文です。
第15条(有効期間及び終了)
合意書の有効期間と終了条件について定めています。元の業務委託契約と連動する設計になっており、契約終了後も損害賠償責任は継続することが明記されています。契約関係の終了時期を明確にし、後々のトラブルを防ぐ効果があります。
【4】活用アドバイス
この合意書を効果的に活用するためには、まず自社の業務内容や機密性のレベルに応じて条文をカスタマイズすることが重要です。例えば、高度な技術情報を扱う場合は第8条のセキュリティ要件をより厳格にし、比較的機密性の低い業務であれば実用的な範囲で調整するとよいでしょう。
また、第2条の作業場所については、受託者の事情も考慮して現実的な選択肢を設定することが大切です。あまりに制限が厳しいと、優秀な外注先から敬遠される可能性もあります。業務の性質と機密性のバランスを取りながら、適切な作業環境を設定しましょう。
機器の貸与については、第5条から第7条の規定を参考に、自社の方針を明確にしておくことをお勧めします。貸与する場合は資産管理台帳の整備も必要になりますし、受託者側の負担とする場合は作業に必要なスペックを事前に伝えておく配慮が必要です。
定期的な見直しも重要なポイントです。テレワークに関する技術や制度は急速に進歩しているため、年に一度程度は合意書の内容が現状に適合しているかをチェックし、必要に応じて更新することをお勧めします。
【5】この文書を利用するメリット
最大のメリットは、テレワーク実施時の責任範囲とルールが明確になることです。曖昧な取り決めのままテレワークを始めてしまうと、機器の故障、情報漏洩、進捗の遅れなど様々なトラブルが発生した際に「どちらの責任なのか」で揉める可能性があります。この合意書があることで、そうした不要な争いを未然に防ぐことができます。
コスト管理の面でも大きな効果があります。通信費や機器費用の負担関係が明確になることで、後から予期しない追加請求を受けるリスクを回避できます。また、機器貸与時の管理責任も明確になるため、紛失や破損による損失を最小限に抑えることが可能です。
セキュリティ面では、受託者側に具体的な対策義務を課すことで、情報漏洩のリスクを大幅に軽減できます。特に個人情報や技術情報を扱う業務では、この合意書によるセキュリティ強化は企業の信頼性向上にも直結します。
業務管理の効率化も重要なメリットです。事前届出や定期報告の仕組みにより、テレワーク中でも適切な進捗把握ができ、プロジェクト全体のスケジュール管理が容易になります。これにより、最終的な成果物の品質向上にもつながります。
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