【1】書式概要
この文書は「居眠り運転事故に係る損害賠償金求償に関する合意書」で、従業員が業務中に居眠り運転で交通事故を起こした際に使用する重要な契約書です。
会社が交通事故の被害者に損害賠償を支払った後、その費用を事故を起こした従業員本人に請求するための取り決めを明文化したものです。近年、企業の使用者責任が厳格に問われる中で、このような事態に備えた準備は欠かせません。
実際の使用場面としては、営業車での外回り中、配送業務中、通勤途中での会社車両使用時など、従業員が会社の業務に関連して車を運転している際の事故対応で活用されます。特に運送業、建設業、営業職の多い企業では、このような事故リスクと常に隣り合わせにあるため、事前に対応策を整えておくことが重要です。
この合意書により、会社側は従業員に対して明確に費用請求でき、従業員側も支払い条件や方法が明確になるため、後々のトラブルを防ぐことができます。連帯保証人の設定も含まれており、より確実な回収を図れる内容となっています。
提供するファイルはWord形式で作成されており、お客様の状況に応じて金額や支払い条件、当事者名などを自由に編集してお使いいただけます。専門知識がなくても空欄に必要事項を記入するだけで、実用的な合意書を作成することが可能です。
【2】条文タイトル
第1条(事故の発生及び概要) 第2条(使用者責任による損害賠償金の支払) 第3条(求償権の根拠及び範囲) 第4条(乙の責任の承認) 第5条(支払方法及び支払期限) 第6条(支払方法) 第7条(遅延損害金) 第8条(期限の利益の喪失) 第9条(連帯保証人) 第10条(労働契約への不影響) 第11条(損害の填補) 第12条(通知義務) 第13条(債権譲渡等の禁止) 第14条(完全合意及び清算条項) 第15条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(事故の発生及び概要)
この条文では、いつ、どこで、どのような事故が発生したのかを具体的に記録します。事故の日時や場所、被害者の氏名などの基本情報を明記することで、後の紛争を防ぐ土台を作ります。例えば「令和5年3月15日午後2時30分頃、東京都渋谷区の国道246号線において」といった具合に、第三者が見ても状況が分かるよう詳細に記載することがポイントです。
第2条(使用者責任による損害賠償金の支払)
会社が被害者に支払った損害賠償の総額と、その内訳を明確にする条文です。治療費、休業損害、慰謝料、車両修理費など、項目ごとに金額を分けて記載します。この詳細な記録により、従業員に請求する根拠が明確になり、後々「そんな金額は知らない」といった反論を防ぐことができます。
第3条(求償権の根拠及び範囲)
会社が従業員に費用を請求できる権利の根拠と、実際に請求する金額を定めます。民法上の求償権を根拠とすることで、請求の正当性を裏付けます。なお、実際の請求額は損害賠償の全額とは限らず、従業員の過失の程度や会社の管理責任なども考慮して決定されることが一般的です。
第4条(乙の責任の承認)
従業員が事故の責任を認めることを明文化する重要な条文です。居眠り運転という重大な過失があったことを本人に認めさせることで、後の争いを防ぎます。また、会社が損害賠償を支払ったことや、求償権の存在についても確認させ、全体の合意内容を固めます。
第5条(支払方法及び支払期限)
従業員がどのように、いつまでに支払うかを定める実務的に重要な条文です。一括払いか分割払いかを選択でき、分割の場合は回数や月々の支払額を具体的に設定します。従業員の経済状況を考慮しつつ、現実的な支払計画を立てることが継続的な回収につながります。
第6条(支払方法)
具体的な支払い手続きを定める条文で、振込先の銀行口座情報を記載します。振込手数料の負担者も明確にしており、通常は債務者である従業員が負担することになります。口座情報は正確に記載し、支払い手続きでの混乱を避けることが重要です。
第7条(遅延損害金)
支払いが遅れた場合のペナルティを定めます。年14.6%という利率は、一般的な商事取引で用いられる水準です。この条文があることで、従業員に期限内支払いの重要性を認識してもらい、計画的な返済を促す効果があります。
第8条(期限の利益の喪失)
分割払いの約束が守られなかった場合などに、残債務を一括で請求できる条件を定めます。2回以上の支払い遅延や、破産手続きの開始などが該当します。この条文により、会社は状況に応じて迅速な債権回収を図ることができます。
第9条(連帯保証人)
従業員だけでなく、連帯保証人も設定することで回収の確実性を高めます。連帯保証人は通常の保証人と異なり、会社は従業員に請求する前に直接保証人に請求することも可能です。催告の抗弁権などの権利を放棄する内容も含まれており、より強力な担保となります。
第10条(労働契約への不影響)
この合意書による求償が、雇用関係には影響しないことを明確にします。ただし、就業規則に基づく懲戒処分は別途検討できることも付け加えており、会社の人事権を保護しています。従業員の雇用継続への不安を軽減しつつ、適切な責任追及も可能にするバランスの取れた条文です。
第11条(損害の填補)
従業員が約束を守らず、会社に追加の損害が発生した場合の責任を定めます。弁護士費用や調査費用なども含まれるため、会社は債権回収にかかる諸費用も請求できます。この条文により、従業員には約束を守ることの重要性をより強く認識してもらえます。
第12条(通知義務)
従業員の住所や勤務先が変わった際の連絡義務を定めます。連絡を怠った場合のリスクも明記されており、会社が確実に連絡を取れる状態を維持します。長期の分割払いでは特に重要な条文で、所在不明による回収困難を防ぐ効果があります。
第13条(債権譲渡等の禁止)
従業員が勝手に債務を第三者に移転することを禁止します。会社の同意なく債権債務関係が複雑になることを防ぎ、回収業務の混乱を避ける目的があります。従業員にとっても、責任の所在が明確になるメリットがあります。
第14条(完全合意及び清算条項)
この合意書で事故に関する当事者間の権利義務関係がすべて整理されることを確認します。将来の追加請求を相互に禁止することで、紛争の蒸し返しを防ぎます。当事者双方にとって予見可能性が高まり、安定した解決が図れます。
第15条(管轄裁判所)
万が一訴訟になった場合の裁判所を予め定めておきます。通常は会社の本店所在地を管轄する地方裁判所を指定することが多く、会社側の訴訟対応の負担を軽減できます。明確な管轄合意により、紛争解決の迅速化も期待できます。
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