【1】書式概要
この契約書は、企業間の賃貸借契約において、賃借人が賃貸人に預けた保証金の返還請求権を担保として活用するための書式です。具体的には、賃借人が他の企業に対して負っている債務の担保として、将来受け取る予定の保証金返還請求権に質権を設定する際に使用します。
改正民法に対応した最新版となっており、企業が事務所や店舗を借りる際に支払った保証金を、別の取引における債務の担保として有効活用できるよう設計されています。例えば、A社がビルの一室を借りる際に支払った保証金を、B社との取引における債務の担保として提供する場面で威力を発揮します。
この仕組みを活用することで、現金を新たに用意することなく、既に支払い済みの保証金を担保として再利用できるため、資金繰りの改善や新規取引の促進に役立ちます。不動産賃貸業界や商業施設の運営、企業間取引において頻繁に利用される実用性の高い契約形態です。
賃貸人への適切な通知手続きや対抗要件の確保についても明確に規定されており、後々のトラブルを防ぐための配慮が行き届いた構成となっています。
【2】条文タイトル
第1条(質権の設定)
第2条(対抗要件)
第3条(合意管轄)
【3】逐条解説
第1条(質権の設定)
この条文は契約の核心部分で、保証金返還請求権に対する質権設定の内容を定めています。賃借人が賃貸人に預けた保証金について、将来の返還請求権を担保として提供することを明確化しています。
実際の運用では、例えばA社が月額賃料50万円のオフィスを借りる際に保証金として300万円を支払ったとします。この300万円の返還請求権を、B社との商品取引における債務の担保として設定する場面で活用されます。基本契約で発生する一切の債務を対象としているため、将来発生する可能性のある様々な債務に対して包括的な担保効果を発揮します。
第2条(対抗要件)
質権の効力を第三者に対抗するための手続きを規定した重要な条文です。賃貸人への通知義務を明確化し、確定日付ある証書による通知方法を指定しています。
具体例として、公証人による確定日付の付与を受けた通知書を賃貸人に送付する方法が一般的です。また、賃貸人から書面による承諾を得られた場合は、より確実な対抗要件となるため、実務上は事前に賃貸人との調整を行うケースが多く見られます。この手続きを怠ると、後から同じ保証金返還請求権について別の債権者が権利を主張した際に、優先順位で劣後する可能性があります。
第3条(合意管轄)
契約に関連する紛争が発生した場合の裁判管轄を事前に定める条文です。専属的合意管轄として特定の地方裁判所を指定することで、紛争解決の効率化を図っています。
実際には、当事者双方にとってアクセスしやすい場所にある裁判所を選択することが多く、本社所在地や契約締結地の裁判所が選ばれる傾向があります。この規定により、万が一の紛争発生時にも迅速な解決が期待できます。企業間取引では予測可能性の確保が重要であり、事前の管轄合意は紛争コストの抑制にも寄与します。