【1】書式概要
この契約書は、シェアサイクルやシェアスクーターサービスを運営する事業者が、車両の整備や保守作業を外部の専門業者に委託する際に使用する包括的な契約書です。近年急速に普及している都市型モビリティサービスにおいて、安全で信頼性の高いサービス提供を実現するため、整備業務の委託関係を明確に定めることができます。
この文書は、改正民法に完全対応しており、現行の制度に沿った内容となっています。シェアモビリティ事業の特性を熟知した専門家が作成したもので、日常点検から定期整備、バッテリー管理、清掃作業まで、必要な業務内容を網羅的にカバーしています。また、安全管理や品質管理、機密保持といった重要な条項も含まれているため、事業運営上のリスクを適切に管理できる構成となっています。
実際の使用場面としては、シェアサイクル運営会社が地域の自転車店と整備契約を結ぶ際、電動スクーターサービス会社が専門メンテナンス業者と保守契約を締結する場合、新規参入事業者が既存の整備ネットワークを活用してサービスを開始する時などが想定されます。Word形式で提供されるため、各社の事業規模や地域特性に応じて柔軟に編集・カスタマイズが可能です。
契約条項の構成も実務に即しており、委託料の設定方法、報告義務、保険加入要件、契約解除事由なども詳細に規定されています。これにより、契約締結後のトラブル防止と円滑な業務遂行を実現できます。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(定義) 第3条(委託業務の実施地域) 第4条(委託業務の内容) 第5条(業務遂行責任) 第6条(責任者の選任) 第7条(従事者の管理) 第8条(安全管理) 第9条(業務報告) 第10条(品質管理) 第11条(再委託の禁止) 第12条(委託料) 第13条(設備・備品等の貸与) 第14条(保険) 第15条(機密保持) 第16条(個人情報の保護) 第17条(知的財産権) 第18条(損害賠償) 第19条(契約期間) 第20条(契約の解除) 第21条(反社会的勢力の排除) 第22条(契約終了後の措置) 第23条(存続条項) 第24条(協議事項) 第25条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条 目的
この条文は契約全体の目的を明確に定めています。シェアモビリティサービスの「安全かつ円滑な運営」という表現が重要で、単なる整備作業の委託ではなく、利用者の安全確保と事業の継続性を重視した内容となっています。実際の運用では、この目的に沿って各種業務が実施されることになります。
第2条 定義
契約書で使用される専門用語を定義する条文です。「本業務」「整備マニュアル」「整備記録」「重大不具合」といった基本概念を明確化することで、当事者間の認識の齟齬を防ぎます。特に「重大不具合」の定義は安全管理の観点から重要で、生命や身体に危害を及ぼす可能性のある不具合を明確に区別しています。
第3条 委託業務の実施地域
業務を実施する地理的範囲を定める条文です。実際の運用では、都市部の特定区域や観光地など、シェアモビリティサービスが展開される地域に応じて設定されます。地域変更時の協議手続きも規定されており、事業拡大や縮小に柔軟に対応できる構造となっています。
第4条 委託業務の内容
整備業務の具体的内容を7項目にわたって詳細に規定した中核条文です。日常点検から定期整備、バッテリー管理、清掃・消毒作業まで、シェアモビリティ特有の業務要件を包括的にカバーしています。例えば、バッテリー管理はシェアサイクルの稼働率に直結する重要業務であり、この条文により責任範囲が明確化されます。
第5条 業務遂行責任
受託者の基本的な責任を定める条文です。「善良な管理者の注意義務」という民法上の概念を用いており、プロフェッショナルとしての高い注意義務を課しています。また、必要な資格や技能を有する者を従事させる義務も規定されており、整備品質の確保を図っています。
第6条 責任者の選任
業務統括責任者の選任と変更手続きを定める条文です。実際の運用では、整備工場の工場長や経験豊富な技術者が責任者に選任されることが多く、委託者との窓口機能も担います。責任者変更時の事前承諾制により、業務継続性を確保する仕組みとなっています。
第7条 従事者の管理
整備作業に従事する人員の管理について規定した条文です。教育訓練の実施義務や名簿提出義務により、作業品質の向上と安全確保を図っています。委託者による交代要求権も設けられており、不適格な従事者の排除が可能な構造となっています。
第8条 安全管理
労働安全衛生の確保について定める条文です。シェアモビリティの整備作業には工具の使用や電気系統の取り扱いが含まれるため、事故防止対策が重要となります。事故発生時の報告義務や定期的な安全教育の実施により、リスク管理を徹底しています。
第9条 業務報告
整備作業の記録と報告について規定した条文です。日次の整備記録提出と月次報告書により、業務の透明性と継続的な品質管理を実現しています。重大不具合の即時報告義務は、利用者の安全確保のための重要な仕組みです。
第10条 品質管理
整備品質の維持向上について定める条文です。受託者による自主検査の実施と、委託者による立入調査権により、双方向の品質チェック体制を構築しています。品質問題発生時の改善要求権も規定されており、継続的な品質向上を図る仕組みとなっています。
第11条 再委託の禁止
業務の再委託について規制する条文です。シェアモビリティの整備業務は安全性に直結するため、原則として再委託を禁止し、例外的に認める場合も厳格な条件を設けています。再委託先の行為についても受託者が責任を負う構造により、品質管理の一貫性を確保しています。
第12条 委託料
業務委託料の算定方法と支払い条件を定める条文です。基本料金と追加作業料金の区分により、定常業務と臨時業務のコスト管理を明確化しています。月次報告書に基づく算定方式により、実際の業務量に応じた適正な対価の支払いが可能となっています。
第13条 設備・備品等の貸与
委託者から受託者への設備貸与について規定した条文です。特殊工具や高額設備の貸与により、受託者の初期投資負担を軽減しつつ、統一された品質での整備作業を実現しています。善管注意義務により、貸与品の適切な管理も確保されています。
第14条 保険
業務遂行に伴うリスクに対する保険加入義務を定める条文です。賠償責任保険や労災保険の加入により、事故発生時の損害填補体制を整備しています。保険証券写しの提出義務により、保険加入状況の確認も可能となっています。
第15条 機密保持
委託者の営業秘密や技術情報の保護について規定した条文です。シェアモビリティ事業の運営ノウハウや利用者情報などの機密情報について、契約期間中及び契約終了後も秘密保持義務が継続します。従事者への機密保持措置も義務化されており、情報管理の徹底が図られています。
第16条 個人情報の保護
個人情報の適切な取り扱いについて定める条文です。個人情報保護法の遵守義務と安全管理措置により、利用者のプライバシー保護を確保しています。シェアモビリティサービスでは利用者の位置情報なども含まれるため、特に重要な条項となっています。
第17条 知的財産権
業務遂行により生じる成果物の知的財産権について規定した条文です。整備手法の改善や新たな技術開発などの成果は委託者に帰属することが明確化されており、事業運営上の優位性確保につながります。著作者人格権の不行使条項により、実用的な活用も可能となっています。
第18条 損害賠償
契約違反や業務遂行上の過失による損害賠償について定める条文です。受託者の責任範囲を明確化することで、リスク分担の透明性を確保しています。損害額の協議による決定方式により、合理的な解決を図る仕組みとなっています。
第19条 契約期間
契約の有効期間と自動更新について規定した条文です。1年間の契約期間と自動更新条項により、継続的な業務関係を前提とした安定的な運営を実現しています。1か月前の更新拒絶通知により、計画的な契約終了も可能となっています。
第20条 契約の解除
契約解除事由と解除手続きについて定める条文です。一般的な債務不履行による解除と、財産状態悪化や法的手続き開始等による無催告解除を区分することで、状況に応じた適切な対応が可能となっています。営業停止処分による解除条項も、事業の継続性確保の観点から重要です。
第21条 反社会的勢力の排除
反社会的勢力との関係遮断について規定した条文です。シェアモビリティ事業の社会的信頼確保のため、暴力団等との関係を完全に排除する仕組みとなっています。確約違反による無催告解除により、迅速な関係断絶が可能となっています。
第22条 契約終了後の措置
契約終了時の後処理について定める条文です。貸与設備の返還義務と業務引継ぎ義務により、事業継続性を確保しつつ円滑な契約終了を実現しています。新たな受託者への業務移管時にも、サービス中断を最小限に抑えることができます。
第23条 存続条項
契約終了後も効力を維持する条項を明確化した条文です。機密保持、個人情報保護、知的財産権、損害賠償、反社会的勢力排除の各条項が対象となっており、契約終了後の紛争防止と継続的な保護を実現しています。
第24条 協議事項
契約に定めのない事項や解釈疑義について、当事者間の誠実協議による解決を定める条文です。硬直的な条文適用ではなく、柔軟な問題解決を可能とする仕組みとなっており、長期的な信頼関係の構築に寄与します。
第25条 管轄裁判所
紛争解決のための裁判管轄について規定した条文です。専属的合意管轄により、紛争発生時の手続きを効率化し、迅速な解決を図ることができます。地理的に適切な裁判所の選択により、当事者双方の負担軽減も実現されています。
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