役員報酬に関する内規

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役員報酬に関する内規

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【1】書式概要

 

この文書は、会社の取締役や監査役といった役員の方々に支払う給与や賞与などの報酬について、どのような方針で決めていくのかを社内できちんと定めておくための書類です。上場を目指している企業や、すでに上場している企業では特に、役員の報酬をどう決めているのかという透明性が求められるようになっています。また、成長段階にあるベンチャー企業やスタートアップでも、優秀な経営人材を引きつけるために魅力的な報酬体系を整えておくことが重要になってきています。

 

この内規では、基本給にあたる固定報酬だけでなく、会社の業績に応じて変動する業績連動報酬や、中長期的に株主と利益を共有する株式報酬といった複数の要素を組み合わせた報酬の仕組みを設計できるようになっています。具体的には、売上高や営業利益、純利益、ROEといった指標をどれくらいの比率で評価するか、それぞれの達成度によってどのように報酬額を算出するかまで明記されています。

 

実際の使用場面としては、取締役会で役員報酬制度を新しく作るとき、既存の制度を見直すとき、IPO準備で社内体制を整備するとき、また投資家や株主に対して報酬の決め方を説明する必要があるときなどが挙げられます。報酬委員会を設置する際の基本ルールとしても活用できますし、株主総会で報酬総額を決議する前の社内検討資料としても使えます。

 

この書式はWord形式で提供されますので、自社の状況に合わせて業績指標の種類や評価ウェイトを変更したり、報酬の構成比率を調整したり、条文の文言を修正したりと、自由に編集して使うことができます。専門的な知識がなくても、テンプレートとして活用しながら自社に最適な役員報酬制度を構築していくことが可能です。

 

 

 

 

【2】条文タイトル

 

  • 第1条(目的)
  • 第2条(適用範囲)
  • 第3条(基本方針)
  • 第4条(報酬構成)
  • 第5条(報酬の割合)
  • 第6条(固定報酬の決定)
  • 第7条(固定報酬の改定)
  • 第8条(業績連動報酬の目的)
  • 第9条(業績指標)
  • 第10条(業績連動報酬の算定方法)
  • 第11条(業績連動報酬の支給時期)
  • 第12条(株式報酬の目的)
  • 第13条(株式報酬の付与)
  • 第14条(譲渡制限期間)
  • 第15条(譲渡制限の解除条件)
  • 第16条(株主総会の決議)
  • 第17条(取締役の報酬決定)
  • 第18条(監査役の報酬決定)
  • 第19条(報酬委員会の設置)
  • 第20条(報酬委員会の構成)
  • 第21条(報酬委員会の開催)
  • 第22条(報酬の返還)
  • 第23条(報酬の減額・不支給)
  • 第24条(改廃)
  • 第25条(細則)

 

 

 

 

【3】逐条解説

 

第1条(目的)

この条文では、そもそもなぜこの内規を作るのかという大前提を明らかにしています。役員の報酬をどう決めるかというのは会社経営の根幹に関わる重要事項ですから、その方針を文書化して透明性を確保し、誰が見ても公平だと納得できる仕組みにすることを目指しています。特に上場企業や上場準備中の企業では、投資家や株主から「役員報酬はどういう考え方で決めているんですか」と聞かれることが増えていますので、その質問にしっかり答えられる土台を作るわけです。

 

第2条(適用範囲)

誰がこの内規の対象になるのかをはっきりさせる条文です。基本的には取締役も監査役も全員が対象ですが、社外取締役や社外監査役は経営執行には直接関わらない独立した立場なので、業績連動報酬などの一部ルールは適用しないこともあるという柔軟性を持たせています。たとえば社外取締役の方には月々の固定報酬だけをお支払いして、業績に応じた賞与は対象外にするといった使い分けができます。

 

第3条(基本方針)

報酬設計の根本的な考え方を示しています。役員の報酬というのは単に労働の対価として支払うだけでなく、経営陣に「会社の価値を高めよう」というモチベーションを持ってもらうための仕組みでもあるんですね。だから株主の利益と役員の利益が同じ方向を向くように、株価や業績と連動した報酬体系にしましょうという発想です。また、社長と部長では責任の重さが違いますから、それぞれの役職に見合った金額にすることも明記されています。

 

第4条(報酬構成)

役員報酬を3つの要素に分けることを定めています。まず毎月決まった額がもらえる固定報酬、次に会社の業績が良ければ増える業績連動報酬、そして中長期的な視点で株主と利益を共有する株式報酬です。この3本柱で構成することで、短期的な成果も中長期的な成長もバランスよく評価できる仕組みになります。最近の上場企業では、こうした多層的な報酬設計が主流になってきています。

 

第5条(報酬の割合)

それぞれの報酬をどんな比率で組み合わせるかを具体的に示した条文です。たとえば社内の取締役であれば、固定報酬が6割、業績連動報酬が3割、株式報酬が1割というバランスになっています。固定部分が多めなのは生活の安定を保ちつつ、業績連動部分で頑張りを評価するという設計ですね。一方で社外取締役や監査役は経営執行をする立場ではないので、固定報酬のみにして利益相反を避ける配慮がされています。

 

第6条(固定報酬の決定)

毎月支払われる固定報酬をどうやって決めるかのルールです。単純に「社長はいくら、専務はいくら」と機械的に決めるのではなく、その人の役職、担当している業務の範囲、会社にどれくらい在籍しているかなど、いろいろな要素を総合的に見て判断することになっています。月例払いにすることで、役員の生活基盤を支える安定収入としての性格を明確にしています。

 

第7条(固定報酬の改定)

固定報酬は一度決めたら永久に固定というわけではなく、年に1回、毎年4月に見直しのタイミングを設けています。ただし、途中で社長に昇格したとか、新しい事業部門の責任者になったとか、大きな変化があった場合には、4月を待たずにその都度改定できるという柔軟性も持たせてあります。これによって役員の処遇を適時適切に調整できるわけです。

 

第8条(業績連動報酬の目的)

業績に応じて変動する報酬部分がなぜ必要なのかを説明しています。経営陣が「今年の業績を良くしよう」「今期の目標を達成しよう」という短期的なモチベーションを持てるようにするのが狙いです。達成度に応じて賞与として支給することで、頑張った分だけ報われる実感を持ってもらえますし、逆に業績が悪ければ報酬も減るという緊張感も生まれます。

 

第9条(業績指標)

業績連動報酬を計算する際に、何を基準に評価するのかを定めています。ここでは売上高、営業利益、純利益、ROE(自己資本利益率)という4つの指標を使い、それぞれに評価の重みづけをしています。営業利益を40%と最も重視しているのは、本業でしっかり稼ぐ力を評価したいからでしょう。自社の事業特性に合わせて、これらの指標や比率は自由に変更できます。たとえば成長重視ならROEの比率を上げたり、キャッシュフロー指標を追加したりといったカスタマイズが可能です。

 

第10条(業績連動報酬の算定方法)

具体的にいくら支給するのかを計算する数式が書かれています。各指標の達成度に評価ウェイトをかけて合計し、それを役職ごとに決められた基準額にかけ算するという仕組みです。達成度は0%から200%の範囲で変動するので、目標を大きく上回る成果を出せば基準額の2倍もらえますし、逆に目標未達なら大幅に減ることになります。この透明性のある計算式によって、恣意的な判断を排除できるわけです。

 

第11条(業績連動報酬の支給時期)

業績連動報酬を毎年6月に支払うと定めています。多くの企業は3月決算ですから、決算が確定して株主総会が終わった後の6月に支給するというのは自然なタイミングですね。決算数値が固まってから実際の支給まで数か月の猶予があることで、支給準備や資金手当もスムーズに進められます。

 

第12条(株式報酬の目的)

株式を使った報酬がなぜ重要かを説明する条文です。短期的な業績だけでなく、3年後、5年後、10年後といった長い目で見て会社の価値を高めていこうという意欲を引き出すのが狙いです。譲渡制限付株式という仕組みを使うことで、すぐに売却できないようにして、中長期的に株主と利益を共にする立場に役員を置くわけです。

 

第13条(株式報酬の付与)

株式をどれくらい渡すかは役職や責任の重さに応じて決まり、毎年7月に株式を付与することになっています。業績連動報酬の支給が6月なので、その翌月に株式報酬を付与するという流れですね。付与のタイミングを決めておくことで、事務処理も計画的に進められます。

 

第14条(譲渡制限期間)

付与された株式を自由に売却できない期間を3年間と定めています。この3年という期間は、中期経営計画のサイクルとも合致することが多く、役員に中長期的な視点で経営にコミットしてもらうのに適した長さだと考えられています。ただし特別な事情があれば取締役会の判断で柔軟に対応できる余地も残してあります。

 

第15条(譲渡制限の解除条件)

3年経ったら自動的に売れるようになるわけではなく、その時点でもまだ取締役か従業員として会社に在籍していることが条件になっています。つまり途中で辞めてしまったら株式報酬の権利を失うことになるので、役員に長く会社に貢献してもらうためのインセンティブとして機能するわけです。

 

第16条(株主総会の決議)

役員報酬の総額は、最終的には会社の持ち主である株主が株主総会で決めるという大原則を確認しています。「今年度は役員報酬として総額○億円まで」という上限を株主に承認してもらうことで、株主の利益と役員の報酬のバランスが保たれます。

 

第17条(取締役の報酬決定)

株主総会で決まった総額の範囲内で、実際に誰にいくら配分するかは取締役会で決めることになっています。たとえば総額1億円の枠があったとして、社長にいくら、専務にいくら、という個別の金額を取締役会で議論して決議するわけです。この二段階のプロセスによって、株主の意向を尊重しつつ機動的な判断もできるようになっています。

 

第18条(監査役の報酬決定)

監査役の報酬も株主総会で総額の上限は決まりますが、個別の配分は監査役同士の話し合いで決めることになっています。監査役は取締役を監視する立場なので、取締役会で決めるのではなく、監査役だけで決める独立性を保っているわけです。

 

第19条(報酬委員会の設置)

役員報酬の方針や制度を検討する専門の委員会を取締役会の中に設けることを定めています。この委員会で議論した内容を取締役会に答申(意見として提出)することで、報酬決定プロセスの透明性と客観性を高められます。上場企業の多くがこうした諮問機関を設置しており、ガバナンス強化の重要な要素になっています。

 

第20条(報酬委員会の構成)

委員会のメンバーは3人以上で、しかも過半数は社外取締役にすることになっています。また委員長も社外取締役から選ぶことで、身内だけで報酬を決めているという批判を避け、外部の目をしっかり入れた公正な議論ができるようにしています。社外の視点を入れることで、世間相場とのバランスも取りやすくなります。

 

第21条(報酬委員会の開催)

年に最低2回は委員会を開くことを義務づけつつ、必要があればいつでも臨時で開催できるようにしています。定期的に開催することで、報酬制度の運用状況をチェックしたり、市場環境の変化に対応した見直しを検討したりできます。

 

第22条(報酬の返還)

役員が不正行為や法令違反をして会社に損害を与えた場合、すでに支払った報酬を返してもらえるという条文です。いわゆるクローバック条項と呼ばれるもので、不祥事を起こした役員に報酬を支払ったままにしておくのはおかしいという株主の声に応えた仕組みです。近年の企業不祥事を受けて、こうした条項を設ける企業が増えています。

 

第23条(報酬の減額・不支給)

重大な職務違反があったり、会社の業績が著しく悪化したりした場合には、今後支払う予定の報酬を減らしたり、まったく支払わなかったりできるという規定です。たとえば大幅な赤字になったのに役員が高額報酬をもらい続けるのは社会的にも批判されますから、そうした事態に対応できるようにしています。

 

第24条(改廃)

この内規の内容を変更したり廃止したりする場合の手続きを定めています。報酬委員会で議論してから取締役会で決議するという二段階のプロセスを踏むことで、慎重かつ透明性の高い改定ができます。事業環境が変わったり、法改正があったりした際に、柔軟に内規を見直せる仕組みです。

 

第25条(細則)

内規に書ききれない細かいルールや、実際の運用で必要になる詳細事項は、別途取締役会で定められるようにしています。たとえば「役位別基準額の具体的な金額表」とか「業績指標の目標値の設定方法」といった実務的な内容は、この条文を根拠に別の文書で定めることができます。こうすることで、内規本体はシンプルに保ちながら、実務に必要な詳細も漏れなく決められるわけです。

 

 

 

 

【4】FAQ

 

Q1. この内規はどんな会社が使うべきですか?

上場企業や上場を目指している企業はもちろん、ベンチャー企業やスタートアップで優秀な経営人材を採用したい会社、一定規模以上の中小企業で役員報酬制度を透明化したい会社など、幅広く活用できます。特に投資家から資金調達をする際や、IPO準備で社内体制を整備する段階では必須の書類になります。

 

Q2. 業績連動報酬の指標は変更できますか?

もちろん可能です。この内規では売上高、営業利益、純利益、ROEの4つを例示していますが、自社の事業特性や経営戦略に合わせて、キャッシュフローや顧客満足度、ESG指標などを追加したり、評価ウェイトを変更したりできます。Word形式なので自由に編集してください。

 

Q3. 社外取締役にも業績連動報酬を支払ってはいけないのですか?

必ずしもそうではありません。この内規では社外取締役の独立性を重視して固定報酬のみとしていますが、会社の方針によっては業績連動報酬を一部支給することも可能です。ただし一般的には、社外取締役は経営の監督役として中立的な立場を保つため、固定報酬のみとする企業が多いです。

 

Q4. 株式報酬の譲渡制限期間は3年でないとダメですか?

いいえ、3年というのは一つの目安です。会社の中期経営計画の期間や、業界の特性に合わせて5年や7年に延ばすこともできますし、逆に短くすることも可能です。ただし税制上の取り扱いなどもありますので、専門家に相談しながら決めることをお勧めします。

 

Q5. 報酬委員会は必ず設置しなければなりませんか?

上場企業や上場準備中の企業では、コーポレートガバナンス・コードの観点から設置が推奨されていますが、中小企業や非上場企業では必須ではありません。ただし、報酬決定の透明性を高めるためには、規模に関わらず設置することが望ましいと言えます。

 

Q6. 既に役員報酬規程がある場合でも使えますか?

はい、既存の規程を見直す際の参考資料として活用できます。現在の規程と比較しながら、足りない要素を追加したり、より詳細な規定に改定したりする際のベースとして使えます。

 

Q7. 報酬の返還(クローバック)を実際に求めることは多いですか?

実際に発動されるケースは多くはありませんが、不祥事が起きた際の備えとして規定しておくことが重要です。こうした条項があること自体が、役員に対する抑止力として機能します。

 

Q8. この内規を作成した後、何か届出は必要ですか?

内規自体を役所などに届け出る必要はありませんが、上場企業の場合は有価証券報告書でこの内規の内容に基づいた役員報酬の方針を開示する必要があります。また株主総会で役員報酬総額を決議する際の説明資料としても使われます。

 

 

 

 

【5】活用アドバイス

 

この内規を最大限に活かすためには、まず自社の経営戦略と照らし合わせて、どの部分をカスタマイズすべきか検討することから始めましょう。たとえば成長段階にあるスタートアップなら、固定報酬の比率を下げて株式報酬の比率を高めることで、キャッシュアウトを抑えつつ優秀な人材を惹きつけることができます。逆に安定期に入った企業なら、固定報酬の比率を高めて生活の安定を重視する設計も考えられます。

 

業績指標についても、自社が何を重視しているかを明確にすることが大切です。売上拡大を最優先するフェーズなら売上高の評価ウェイトを高めに設定し、収益性を重視するなら営業利益や純利益の比率を上げるといった具合です。新規事業の立ち上げ期なら、売上だけでなく顧客獲得数やユーザー数といった非財務指標を組み込むことも検討してみてください。

 

報酬委員会の運営については、社外取締役を委員に迎える際に、同業他社の報酬水準や市場相場に詳しい方を選ぶと、より実効性のある議論ができます。また年2回の定例会議では、前年度の報酬制度の運用状況を振り返り、当年度の目標設定が適切だったか、報酬水準が市場と乖離していないかなどをチェックする時間を設けると良いでしょう。

 

株主や投資家とのコミュニケーションでは、この内規をベースにした報酬方針を分かりやすく説明できるように準備しておくことが重要です。特にIPO準備中の企業は、証券会社や監査法人から報酬制度について詳しく質問されることが多いので、この内規があればスムーズに説明できます。有価証券報告書に記載する役員報酬の方針も、この内規をもとに作成すれば一貫性のある開示ができます。

 

また、社内向けには役員報酬の透明性を高めることで、従業員からの信頼も得られます。「経営陣は業績に応じて報酬が変動する仕組みになっている」ということが明確になれば、従業員も納得感を持って会社の成長に貢献しようという気持ちになるでしょう。

 

定期的な見直しも忘れずに行いましょう。事業環境は常に変化しますし、法改正やガバナンスコードの改訂なども頻繁にあります。少なくとも2〜3年に一度は、報酬委員会で内規全体を見直し、時代に合った制度にアップデートしていくことをお勧めします。

 

 

 

 

 

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