【1】書式概要
この規程は、海外に駐在する社員や現地事務所で緊急事態が発生した際に、企業としてどのように組織的かつ迅速に対応するかを定めた社内規程のひな型です。テロや自然災害、事故や誘拐といった突発的な事態に直面した場合、経営陣の判断を待っているだけでは初動が遅れ、事態が深刻化する恐れがあります。
本書は、緊急時に設置される「海外緊急事態対策本部」の設置手順や任務、構成、社員や報道機関への対応方法まで体系的に整理されており、企業の危機管理体制を明確に示すことができます。特に海外事業を展開する企業や、グローバルに人材を配置する組織にとって不可欠なルールであり、Word形式で編集可能なため、自社の実情に即した内容へ柔軟に修正して利用することができます。
【2】条文タイトル
第1条(総則) 第2条(対策本部の設置) 第3条(設置の手続) 第4条(対策本部の任務) 第5条(対策本部の構成) 第6条(対策本部の人事) 第7条(対策本部員の責務) 第8条(社員の派遣) 第9条(安全の優先) 第10条(反社会的集団への利益供与等の禁止) 第11条(第三者の助言) 第12条(実施手続) 第13条(取締役会への報告) 第14条(報道機関への対応) 第15条(社員への説明) 第16条(解散) 第17条(解散の手続) 付則
【3】逐条解説
第1条(総則)
企業が海外における緊急事態に直面した際の対応の枠組みを明確にし、全社的に統一した行動をとれるようにしています。例えば現地でテロや事故が発生した場合、判断のばらつきを防ぐ基盤となります。
第2条(対策本部の設置)
重大な緊急事態が発生した場合に直ちに対策本部を設置することを定め、初動の迅速化を担保しています。これにより、時間の遅れによる被害拡大を防ぎます。
第3条(設置の手続)
社長が役員と協議して設置を決定する仕組みを設け、トップ判断のスピードと正当性を確保しています。
第4条(対策本部の任務)
情報収集や分析から、家族対応、報道対応まで幅広く任務を列挙し、現場の混乱を最小限に抑える狙いがあります。
第5条(対策本部の構成)
役員層から部長・課長までを含め、組織横断的に対応できる体制を整備しています。部署間の連携不足を防ぐ効果があります。
第6条(対策本部の人事)
責任者を副社長や総務部長と明確に定めることで、指揮命令系統の混乱を避けています。
第7条(対策本部員の責務)
危機対応においては個々の意識が重要であり、全力で早期解決に努める姿勢を求めています。
第8条(社員の派遣)
必要に応じて現地に社員を派遣し、実地で情報収集を行うことを可能にしています。現場に即した対応を取れる点が特徴です。
第9条(安全の優先)
会社の評判や経済的損失よりも、まず社員の生命と安全を最優先する姿勢を明示しています。
第10条(反社会的集団への利益供与等の禁止)
身代金や不当な要求への応諾を禁止し、長期的な企業リスクを回避します。
第11条(第三者の助言)
専門家の助言を得られる余地を設け、社内だけでは限界がある危機対応に柔軟性を加えています。
第12条(実施手続)
対応策の実行には社長の承認を必要とし、暴走や責任の不明確さを防ぎます。
第13条(取締役会への報告)
事後報告を義務付け、経営層の監督とガバナンスを担保しています。
第14条(報道機関への対応)
取材対応の窓口を一本化し、情報漏洩や誤報のリスクを低減します。
第15条(社員への説明)
社員への説明を通じて不安を抑え、社内全体で一体感を持った行動を促します。
第16条(解散)・第17条(解散の手続)
緊急事態が収束した際に適切に本部を解散し、通常業務へ戻すルールを定めています。
【4】活用アドバイス
この規程はそのまま利用しても有効ですが、自社の海外拠点数や駐在員の人数、業務特性に応じて柔軟にカスタマイズすることが重要です。
例えば、商社であれば取引先との連絡体制をより具体化し、メーカーであれば工場の安全確保やサプライチェーンへの影響について条文を追加することが望ましいでしょう。また、平常時からシミュレーションや訓練を実施しておくことで、規程が「机上のルール」にとどまらず、実際の運用に耐えられるものになります。
【5】この文書を利用するメリット
この規程を導入することで、緊急時の判断や対応が属人的にならず、全社的に統一した対応が可能となります。社員の安全確保と企業の信用維持に直結するため、取引先や株主からの信頼向上にもつながります。
また、事後の報告義務や報道対応までカバーされているため、危機対応に関する透明性とガバナンスの強化にも寄与します。
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