【1】書式概要
離婚を検討されている方や離婚が決まった方にとって、最も重要なのはお子さんの将来です。この養育計画合意書は、離婚後もお子さんが安心して成長できる環境を整えるための実用的な書式です。
現在の日本では離婚件数が年間約19万件にのぼり、そのうち約6割に未成年の子どもがいるとされています。しかし、多くの方が離婚時の取り決めを口約束で済ませてしまい、後になってトラブルが発生するケースが後を絶ちません。特に養育費の支払いが滞ったり、面会交流がうまくいかなかったりする問題は深刻です。
この書式は、そうした問題を未然に防ぐために作成されました。改正民法に対応した最新の内容で、養育費の取り決めから面会交流のスケジュール、教育方針の決定方法まで、離婚後の子育てに必要な項目を網羅的にカバーしています。
実際に使用する場面としては、協議離婚の際の取り決め書類として、また調停や審判での参考資料として活用できます。弁護士に依頼する前の準備段階でご夫婦が話し合う際のたたき台としても有効です。さらに、離婚成立後に改めて詳細なルールを定めたい場合にも使用できます。
書式には具体的な記入例や注意点も含まれており、法律の専門知識がない方でも安心してご利用いただけます。お子さんのことを第一に考えた取り決めを作ることで、離婚後も両親が協力してお子さんを育てていく基盤を築くことができます。
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条文は合意書全体の基本姿勢を示しています。「子どもの最善の利益」という表現は、国際的な児童の権利に関する条約でも使われている重要な概念です。離婚後も両親が感情的な対立を避け、あくまで子どものことを最優先に考えて協力することを明確にしています。
第2条(基本情報)
当事者の基本的な情報を整理する条項です。ここで重要なのは、子どもの氏名を「本児」として以降の条文で統一することで、書面の読みやすさを向上させている点です。離婚成立日を明記することで、この合意書がいつから有効になるのかを明確にしています。
第3条(計画の見直し)
子どもの成長に合わせて計画を柔軟に変更できるよう定めた条項です。毎年の見直しを子どもの誕生日に設定することで忘れにくくしています。また、専門家の助言を求めることも想定しており、客観的な視点を取り入れる仕組みを作っています。
第4条(親権)
現在の民法では離婚後は単独親権が原則ですが、将来的な法改正も視野に入れた条項構成になっています。共同親権を明記することで、両親ともに子どもに対する責任と権利を持つことを確認しています。
第5条(監護権)
日常的な世話をする主たる監護者を明確にしつつ、もう一方の親の監護権も認める内容です。これにより、普段一緒に住んでいない親でも、決められた範囲内で子どもの世話をする権利があることを保障しています。
第6条(居住スケジュール)
子どもがどこで過ごすかを具体的に定めた条項です。週末や長期休暇を活用して、両方の親と十分な時間を過ごせるよう配慮されています。例えば夏休みを前半と後半に分けることで、それぞれの親が子どもとまとまった時間を過ごす機会を確保しています。
第7条(引き渡しの方法)
子どもの受け渡しを円滑に行うための具体的な手順を定めています。駅の改札前という公共の場所を選ぶことで、両親にとって中立的で安全な環境を確保しています。時間厳守や事前連絡のルールにより、子どもが不安を感じないよう配慮しています。
第8条(面会交流のスケジュール)
離れて住む親と子どもが定期的に会える仕組みを作っています。週末だけでなく平日の面会も設定し、オンラインでの面会も認めることで、現代的なコミュニケーション手段も活用しています。
第9条(特別な行事の取り扱い)
誕生日や祝日などの特別な日をどう過ごすかを定めています。子どもの誕生日は両親揃って祝うことで、離婚後も家族の絆を大切にする姿勢を示しています。その他の祝日は年によって交代制にすることで、公平性を保っています。
第10条(面会交流の変更手続き)
予定変更が必要になった場合の手順を明確にしています。72時間前の通知ルールにより、お互いの予定調整に配慮しています。年間3回までのキャンセル権を認めることで、現実的な運用を可能にしています。
第11条(教育に関する決定)
学校選択や課外活動への参加など、教育に関する重要な決定を両親で協議することを定めています。意見が分かれた場合の基準も設けることで、決定プロセスを明確にしています。
第12条(医療に関する決定)
日常的な医療と重大な医療行為を区別し、それぞれの決定権者を明確にしています。緊急時の対応方法も定めることで、子どもの健康と安全を最優先にした仕組みを作っています。
第13条(宗教に関する決定)
宗教的な教育や活動への参加について、両親の協議と子どもの意思を尊重することを定めています。この分野では個人の価値観が大きく影響するため、慎重な検討が必要とされています。
第14条(養育費)
養育費の金額、支払日、支払方法を具体的に定めた条項です。銀行振込による支払いを指定することで、支払いの記録を残し、後々のトラブルを防ぐ効果があります。
第15条(特別費用の負担)
教育費や医療費など、養育費以外の特別な費用をどう分担するかを定めています。例えば学費は父70%、母30%というように、具体的な割合を示すことで、支払い義務を明確にしています。
第16条(養育費の見直し)
物価上昇や収入変動に応じて養育費を調整する仕組みを定めています。毎年4月の見直しにより、子どもの成長に必要な費用を適切に確保できるよう配慮しています。
第17条(両親間のコミュニケーション)
離婚後も両親が適切にコミュニケーションを取るためのルールです。LINEでの日常連絡と、重要事項については電話とメールを使い分けることで、情報の重要度に応じた連絡方法を定めています。
第18条(子どもとのコミュニケーション)
離れて住む親と子どもがコミュニケーションを取る方法を定めています。電話やビデオ通話の時間を制限することで、子どもの生活リズムを尊重しつつ、親子の関係維持を図っています。
第19条(情報共有)
学校や医療に関する情報を両親で共有する方法を定めています。Googleドライブやスプレッドシートなどのデジタルツールを活用することで、効率的な情報共有を実現しています。
第20条(引っ越しに関する取り決め)
一方の親が引っ越しを検討する場合の手続きを定めています。3か月前の事前通知により、養育計画への影響を最小限に抑える配慮をしています。距離によっては調停の利用も想定しています。
第21条(新しいパートナーの紹介)
再婚や新しいパートナーとの関係について、子どもへの影響を考慮した取り決めです。1年という交際期間の基準を設けることで、安定した関係であることを確認してから子どもに紹介するよう配慮しています。
第22条(紛争解決条項)
合意書の解釈や実施で問題が生じた場合の解決手順を定めています。まず当事者間の協議、次に専門家による調停、最終的に家庭裁判所の調停という段階的なアプローチにより、できるだけ円満な解決を目指しています。
第23条(署名)
合意書の効力発生について定めた条項です。両親の署名捺印により正式に効力を持つことを明確にし、締結日を記録することで、いつからこの合意が有効になるのかを明示しています。