【1】書式概要
この自動車賃貸借契約書は、車両を借りる側(借主)の権利をしっかりと保護することを重視して作成された契約書の雛形です。改正民法にも完全対応しており、現在の法制度に沿った内容となっています。
運送業や配送業を営む企業が営業車両を調達する際、建設業者が現場用車両を確保する場合、タクシー会社が車両を増車する時など、事業用車両を長期間借りる様々な場面で活用できます。また、個人事業主が開業時に社用車を確保したい場合や、スタートアップ企業が初期費用を抑えて車両を導入したい時にも重宝します。
従来の貸主主導の契約書とは異なり、借主の立場に配慮した条項構成となっているため、不利な条件で契約を結んでしまうリスクを軽減できます。修繕義務の明確化や保証金の取り扱い、契約解除事由の限定など、実際のトラブル事例を踏まえた実践的な内容が盛り込まれています。
Word形式で提供されているため、お客様の事業内容や取引条件に合わせて自由に編集・カスタマイズが可能です。弁護士や行政書士に依頼する前の叩き台として使用することで、大幅な時間短縮とコスト削減を実現できます。
【2】条文タイトル
第1条(賃貸車両と賃料の支払い) 第2条(賃貸期間) 第3条(使用目的) 第4条(保証金) 第5条(善管注意義務) 第6条(修繕等) 第7条(保険加入・事故への対応) 第8条(転貸等) 第9条(本件車両の全部ないし一部滅失等) 第10条(解除) 第11条(損害賠償) 第12条(本件車両の返還・原状回復) 第13条(必要費・有益費の償還) 第14条(合意管轄) 第15条(協議)
【3】逐条解説
第1条(賃貸車両と賃料の支払い)
この条文では貸し出される車両の詳細情報と月額賃料、支払期日を定めています。登録番号から車体番号まで車両を特定する情報をしっかりと記載することで、後々のトラブルを防げます。例えば運送会社が10台のトラックをリースする場合、各車両の詳細を明記することで管理が容易になります。賃料の支払日も「毎月末日まで」といった具合に明確に設定されているため、キャッシュフローの管理がしやすくなっています。
第2条(賃貸期間)
契約期間を2年間と設定し、自動更新の仕組みを取り入れた条文です。どちらか一方が3か月前に契約終了を申し入れない限り、1年間の自動延長となります。これにより配送業者などが安定して車両を使用できる一方で、事業縮小時にも適切な予告期間で契約を終了できます。自動更新により毎回の契約更新手続きの手間も省けるため、業務効率化につながります。
第3条(使用目的)
車両の利用目的を明確に限定する条文です。「営業用」「配送用」「工事現場での使用」など、具体的な用途を記載します。これにより貸主側も安心して車両を提供でき、借主側も想定された用途での使用であることを明確にできます。例えば食品配送用としてリースした冷凍車を、突然建設資材の運搬に使用することは契約違反となることが明確になります。
第4条(保証金)
敷金に相当する保証金の取り扱いを定めた条文です。借主に有利な内容として、契約終了時や適法な賃借権譲渡時には保証金の返還が義務付けられています。運送業では車両の故障や事故リスクがあるため、保証金制度により双方にとって安心できる仕組みとなっています。未払い賃料がある場合の相殺規定も設けられており、清算手続きが明確化されています。
第5条(善管注意義務)
借主が車両を丁寧に扱う義務を定めた条文です。「善良な管理者の注意」という法律用語を使用していますが、これは一般的な事業者として当然払うべき注意義務を意味します。例えばタクシー会社であれば、定期的な点検や清掃、適切な駐車場での保管などが求められます。この義務を怠った場合の責任も明確になるため、双方の権利関係が整理されます。
第6条(修繕等)
車両の修繕責任について詳細に定めた条文です。原則として貸主が修繕義務を負いますが、借主の過失による損傷は借主負担となります。また借主が修繕を行える場合も明記されており、緊急時や貸主が適切に対応しない場合には借主による修繕が可能です。配送業務中の突発的な故障など、事業継続に支障をきたす場合に柔軟な対応ができる仕組みとなっています。
第7条(保険加入・事故への対応)
事故対応と保険加入について定めた条文です。借主が自賠責保険と任意保険の両方に加入することを義務付け、事故時の責任関係を明確化しています。運送業や配送業では事故リスクが高いため、この条項により貸主の リスクを軽減しつつ、借主も適切な保険加入により安心して事業運営できます。第三者への損害賠償責任も借主が負うことで、責任の所在が明確になっています。
第8条(転貸等)
車両の使用目的変更や転貸について事前承諾を求める条文です。無断での用途変更や又貸しを防ぐことで、貸主の利益を保護しています。例えば宅配業務用としてリースした車両を、突然引越し業務に転用することは事前承諾が必要となります。車両の改造についても承諾が必要とされており、原状回復トラブルの予防にも効果的です。
第9条(本件車両の全部ないし一部滅失等)
自然災害等による車両の損失について定めた条文です。全損の場合は契約が自動終了し、一部損失でも契約目的達成が困難な場合は解約可能としています。また一部滅失で使用可能な場合は賃料減額の協議ができるため、借主に配慮した内容となっています。例えば地震で車両の一部が損傷した場合でも、使用に支障がない範囲であれば賃料減額により契約継続が可能です。
第10条(解除)
契約解除事由を詳細に列挙した条文です。無催告解除事由と催告解除事由に分けて規定されており、重大な違反については即座に解除可能、軽微な違反については改善機会を与える仕組みとなっています。反社会的勢力の排除条項も含まれており、コンプライアンス対応も万全です。賃料滞納についても複数回の遅延で解除事由となるなど、段階的な措置が設けられています。
第11条(損害賠償)
契約違反による損害賠償について定めた条文です。改正民法に対応した内容となっており、違反当事者に帰責性がない場合は賠償責任を免れる規定が設けられています。例えば天災による納期遅延など、当事者の過失によらない損害については賠償義務が生じないことが明確化されています。これにより過度な責任追及を防ぎ、合理的な契約関係を構築できます。
第12条(本件車両の返還・原状回復)
契約終了時の車両返還について定めた条文です。借主に有利な内容として、通常使用による損耗や経年劣化は原状回復の対象外とされています。これにより過度な原状回復費用の請求を防げます。例えば2年間の配送業務で生じた座席の軽微な摩耗などは、借主負担とならないことが明確です。適切な使用範囲内での劣化については貸主負担となる合理的な仕組みです。
第13条(必要費・有益費の償還)
借主が支出した費用の償還について定めた条文です。車両の維持管理に必要な費用は直ちに償還請求でき、改良費用についても価値増加分の償還が受けられます。例えば業務効率化のため荷台に専用ラックを設置した場合、その費用の償還を求めることができます。これにより借主が安心して必要な投資を行えるとともに、車両の価値向上にもつながります。
第14条(合意管轄)
紛争解決のための管轄裁判所を定めた条文です。専属的合意管轄により、契約に関する全ての紛争は指定された地方裁判所で審理されることになります。これにより複数の裁判所での重複した訴訟を防ぎ、効率的な紛争解決が可能となります。当事者双方にとって利便性の高い裁判所を選定することで、紛争解決コストの削減にもつながります。
第15条(協議)
契約に定めのない事項について協議解決を図る条文です。全ての問題を契約書で予想することは困難なため、この条項により柔軟な問題解決が可能となります。例えば新型コロナウイルスのような予期せぬ事態が発生した場合でも、当事者間の協議により合理的な解決策を見出すことができます。円満解決を前提とした姿勢により、長期的な信頼関係の構築にも寄与します。
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