第1条(定義)
第2条(開発委託)
第3条(納期)
第4条(委託金額)
第5条(支払条件)
第6条(検収)
第7条(乙と丙の責任分担)
第8条(無償保証期間)
第9条(再委託)
第10条(指揮命令)
第11条(秘密保持)
第12条(危険負担)
第13条(保守)
第14条(権利帰属)
第15条(解除)
第16条(損害賠償額)
第17条(協議)
第18条(専属的合意管轄)
【3】逐条解説
第1条(定義)
契約書で使用される専門用語の意味を明確に定めた条項です。「本件業務」「本件システム」「乙担当部分」「丙担当部分」など、契約の核となる概念を事前に整理することで、後々の解釈の相違を防ぎます。例えば、「成果物」という言葉一つとっても、設計書類なのかプログラムなのか、それとも両方を含むのかを明確にしておくことで、納期や検収時のトラブルを避けることができます。
第2条(開発委託)
発注者である甲が、乙と丙それぞれに異なる業務を委託することを定めた条項です。重要なのは、両社が相互に補助・助言する関係にあることを明記している点で、単純な分業ではなく協力体制での開発を前提としています。また、重要な判断は必ず甲の指示と承認を得ることを義務付けており、勝手な仕様変更や設計変更を防ぐ仕組みになっています。
第3条(納期)
システム開発の各段階における納期を詳細に定めた条項です。設計完成とソフトウェア完成という二段階の納期設定により、プロジェクトの進捗管理を効率化できます。遅延が発生した場合の損害金も明確に定められており、委託金額の日割0.1%という具体的な数値が示されています。ただし、発注者側の原因による遅延については救済措置も設けられており、公平性が保たれています。
第4条(委託金額)
乙と丙それぞれの委託金額を個別に定める条項です。システム開発では途中で仕様変更が発生することが多いため、再見積の手続きを詳細に規定しています。特に興味深いのは、全体設計の結果、当初見積の120%を超える場合にのみ金額変更を認めるという条項で、ある程度の金額変動は織り込み済みとして扱う実務的な配慮が見られます。
第5条(支払条件)
乙と丙で異なる支払スケジュールを設定している点が特徴的です。設計を担当する乙は契約時20%、設計完了時30%、検収完了時残額という三回払いに対し、プログラム開発を担当する丙は契約時10%、検収完了時残額という二回払いとなっています。これは、設計工程の重要性と、プログラム開発のリスクバランスを考慮した支払条件設計と言えるでしょう。
第6条(検収)
成果物の検査基準と手続きを定めた重要な条項です。30日以内に通知がない場合は自動的に合格とみなすという条項により、発注者側の検査遅延を防いでいます。検査基準も具体的に定められており、「仕様書に記載された仕様を満たし、使用環境においても間違いなく稼働すること」という実用的な基準が設けられています。
第7条(乙と丙の責任分担)
複数社による開発で最も重要となる責任の切り分けを明確にした条項です。基本的には各社が自分の担当部分についてのみ責任を負う一方で、システム全体に影響する重大な不具合については連帯責任とすることで、全体最適化への動機付けを図っています。この仕組みにより、「自分の部分さえできれば良い」という縦割り意識を防ぐことができます。
第8条(無償保証期間)
検収完了後12ヶ月間の無償保証を規定した条項です。平日9時から18時の通常対応に加え、緊急時は24時間対応という二段階のサポート体制を明記している点が実務的です。システム開発では運用開始後にトラブルが発生することが多いため、この保証期間の設定は発注者にとって重要な安心材料となります。
第9条(再委託)
下請業者への再委託に関する条項です。事前の書面承諾を要求することで、発注者が知らないうちに技術力の低い業者に業務が流れることを防いでいます。また、再委託をしても元請の責任は免除されないことを明記し、品質維持の仕組みを構築しています。
第10条(指揮命令)
労務管理と業務指示の関係を整理した条項です。基本的には各社が自社の作業者を管理する一方で、発注者が進捗管理や品質管理のために必要な指示を行えることを定めています。これにより、偽装請負の問題を避けながらも、プロジェクト管理の実効性を確保しています。
第11条(秘密保持)
システム開発では発注者の営業秘密や顧客情報に触れることが多いため、厳格な秘密保持義務を定めています。契約終了後5年間の継続義務も設けられており、長期的な情報保護を図っています。特に、甲の営業秘密、技術情報、顧客情報について特別な管理義務を課している点が注目されます。
第12条(危険負担)
成果物の滅失・損傷リスクを納入前後で切り分けた条項です。納入前は受託者のリスク、納入後は発注者のリスクとすることで、一般的な取引慣行に沿った合理的なリスク分担を実現しています。ただし、故意・重過失がある場合はこの限りではないとして、責任逃れを防ぐ仕組みも組み込まれています。
第13条(保守)
無償保証期間後の有償保守について定めた条項です。技術サービス、修補、バージョンアップ、運用サポートという四つのカテゴリーで保守内容を整理し、継続的な関係構築を図っています。受託者は合理的理由なく保守契約を拒否できないとすることで、発注者の長期的な安心を確保しています。
第14条(権利帰属)
知的財産権の帰属を詳細に定めた重要な条項です。基本的には発明・著作権は発注者に帰属するものの、汎用的なノウハウやモジュールについては受託者に残すことで、技術者のインセンティブを保ちつつ発注者の権益も保護するバランスの取れた設計となっています。
第15条(解除)
契約解除の要件と手続きを詳細に規定した条項です。破産や反社会的勢力との関わりなどの重大事由については即座に解除できる一方、履行遅延などについては一定の猶予期間を設けるなど、事由の重要度に応じた段階的な解除要件を設定しています。
第16条(損害賠償額)
損害賠償の上限を受領金額・支払金額と同額に制限することで、過大な賠償リスクを防いでいます。ただし、故意・重過失の場合はこの制限を適用しないとすることで、悪質な行為への抑制効果も維持しています。また、間接損害や逸失利益の免責により、予見困難な損害の拡大を防いでいます。
第17条(協議)
紛争解決の第一段階として当事者間の協議を位置づけ、それでも解決しない場合は発注者の判断に従うという実務的な解決方法を定めています。この条項により、軽微な解釈相違を裁判に持ち込まずに済み、プロジェクトの継続性を保つことができます。
第18条(専属的合意管轄)
紛争が裁判に発展した場合の管轄裁判所を事前に定めた条項です。専属管轄とすることで、どこで裁判をするかという無用な争いを避け、紛争解決の迅速化を図っています。通常は発注者の本店所在地を管轄する裁判所が指定されることが多いです。
【4】活用アドバイス
この契約書を効果的に活用するためには、まず別紙1と別紙2の詳細な記載が重要になります。別紙1では開発するシステムの具体的な機能要件や性能要件を明確に定義し、別紙2では各工程の詳細なスケジュールと責任分担を記載してください。
契約締結前には、必ず三社間での詳細な打ち合わせを実施し、それぞれの会社の技術的な強みと弱み、過去の実績、開発体制を十分に把握することが大切です。特に、乙と丙の連携体制については、事前に具体的な連絡方法や定期的な進捗共有の仕組みを決めておくことをお勧めします。
金額面では、第4条の委託金額設定において、全体予算の配分比率を慎重に検討してください。一般的には設計工程が全体の30-40%、開発・テスト工程が60-70%程度の配分になることが多いですが、プロジェクトの特性に応じて調整が必要です。
また、第3条の納期設定では、各工程間に適切なバッファ期間を設けることが重要です。特に設計完了から開発開始までの間に、設計内容の詳細確認期間を設けることで、後工程での手戻りを最小限に抑えることができます。
【5】この文書を利用するメリット
この契約書テンプレートを利用する最大のメリットは、複雑な三社間の責任関係を明確に整理できることです。通常の二社間契約とは異なり、三社間では責任の所在が曖昧になりがちですが、この契約書では各社の役割分担と責任範囲が詳細に定められているため、トラブル発生時の迅速な解決が可能になります。
Word形式で提供されているため、お客様の業界や会社の特殊事情に合わせて容易にカスタマイズできる点も大きな利点です。例えば、金融業界であれば監査要件を追加したり、製造業であれば品質管理基準を厳格化したりといった調整が簡単に行えます。
さらに、この契約書には実際のシステム開発プロジェクトで発生しがちな問題点に対する予防的な条項が数多く盛り込まれています。仕様変更への対応方法、検収基準の明確化、知的財産権の適切な配分など、経験豊富な実務者の知見が反映されているため、初めて複数社での開発を行う場合でも安心して利用できます。
契約書作成にかかる時間とコストの大幅な削減も見逃せないメリットです。ゼロから契約書を作成する場合、通常は数週間から数ヶ月の期間と、専門家への高額な依頼費用が必要になりますが、このテンプレートを使用することで、数日程度での契約書完成が可能になります。