【1】書式概要
この兼業申請書は、従業員が本業以外に副業や兼業を行う際に必要となる重要な申請書類です。近年の働き方改革により副業解禁が進む中、多くの企業で従業員の兼業を認める動きが広がっています。この書式は、従業員が会社に対して兼業の許可を求める際に使用するもので、雇用される場合と業務委託などで雇用されない場合の両方のパターンに対応しています。
従業員がカフェでアルバイトをしたい場合、フリーランスとしてデザイン業務を請け負いたい場合、コンサルタント業務を行いたい場合など、様々な兼業形態に対応できる包括的な内容となっています。申請者は兼業先の詳細情報、労働時間、業務内容を明記し、本業に支障をきたさないこと、企業秘密の保護、競業避止などの重要事項について表明・保証を行います。
また、改正民法に対応した最新版となっており、企業の人事担当者や労務管理者にとって実用性の高い書式です。兼業開始前の事前申請から、兼業内容変更時の報告義務、労働時間の上限管理まで、トラブル防止に必要な要素を網羅しています。
【2】逐条解説
第1条(兼業の内容)
兼業申請の核心部分となる条項です。申請者は予定している兼業について、雇用される場合と雇用されない場合の2パターンに分けて詳細を記載します。雇用される場合は兼業先の会社名、事業内容、担当業務、就業日時、残業の有無、開始・終了予定日を明記します。例えば「ABC株式会社でシステム保守のサポート業務を毎週土曜日10時から17時まで行う」といった具体的な内容を記載します。雇用されない場合は業務委託やフリーランスとしての活動内容、所要時間、使用日、期間を記載します。この条項により、会社側は兼業の実態を正確に把握し、適切な判断を行うことができます。
第2条(表明・保証)
兼業が会社の利益を害さないことを申請者が保証する重要な条項です。労務提供への支障、企業秘密漏洩の危険性、会社の名誉毀損、信頼関係の破壊、競業関係の5つの禁止事項を明確に定めています。例えば、IT企業の従業員が競合他社でシステム開発を行うことは競業に該当し承認されません。また、金融機関の従業員が副業で投資アドバイスを行う場合、本業の企業秘密を利用する可能性があるため慎重な検討が必要です。この条項により、申請者は兼業のリスクを自覚し、適切な行動を取ることが期待されます。
第3条(報告義務)
兼業開始後の継続的な管理体制を構築する条項です。兼業内容に変更が生じた場合の事前報告義務と、労働時間が月80時間を超える可能性がある場合の報告義務を定めています。例えば、当初週1日だった兼業が週3日に増える場合や、単発のプロジェクトが継続案件になった場合は速やかな報告が必要です。月80時間の基準は過労死ラインを考慮したもので、従業員の健康管理と会社のリスク回避の両方を図っています。この条項により、兼業の実態変化に対する適切な対応が可能となります。
第4条(企業秘密の保護)
本業の会社が持つ機密情報の保護を徹底する条項です。申請者は兼業先に対して一切の企業秘密を漏洩・開示しないことを約束し、兼業業務での利用も禁止されます。例えば、マーケティング部門の従業員が副業でコンサルタント業務を行う際、本業で得た顧客情報や営業戦略を利用することは厳禁です。また、退職後も継続して秘密保持義務が課されるため、長期的な保護が確保されます。この条項により、会社の競争優位性と知的財産が適切に保護されます。
第5条(兼業先の企業秘密の保護)
兼業先の機密情報についても同様の保護を約束する条項です。申請者は兼業先で得た企業秘密を本業の会社に漏洩せず、本業での利用も行わないことを約束します。例えば、コンサルタントとして複数企業の内部情報に接する場合、それぞれの情報を他の会社で利用することは禁止されます。この双方向の秘密保持により、すべての関係者の利益が保護され、信頼関係の維持が図られます。この条項は兼業を円滑に進めるための基盤となる重要な要素です。
第6条(違反の場合の効果)
申請内容の虚偽や各種義務違反に対する制裁措置を明確にした条項です。懲戒処分や雇用契約解除の可能性を申請者に認識させ、損害賠償責任や仮処分などの措置について合意を取り付けます。例えば、競業避止義務に違反して同業他社で働いた場合、懲戒解雇や損害賠償請求の対象となる可能性があります。この条項により、申請者は兼業申請の重要性と責任を十分に理解し、適切な行動を取ることが促されます。抑止効果と実効性確保の両面で重要な役割を果たしています。