【1】書式概要
この示談書は、企業買収(M&A)において株式譲渡後に簿外債務が判明した際、その責任や補償範囲を明確に定めるための雛型です。買収後に思わぬ債務が発覚すると、当事者間で大きなトラブルに発展しやすく、迅速な合意形成が求められます。
本書式を利用することで、買主と売主が補償条件や支払方法、追加の簿外債務への対応などを具体的に整理でき、無用な紛争を回避することにつながります。実際のM&A取引後にリスクが顕在化した場面で使用され、特にデューデリジェンスでは把握できなかった債務が見つかった際に役立ちます。Word形式で編集可能となっているため、自社の事情や取引内容に合わせて柔軟に修正することができ、実務で即戦力となる雛型です。
【2】条文タイトル一覧
第1条(定義) 第2条(前提事実の確認) 第3条(本件簿外債務の内容) 第4条(表明保証違反の確認) 第5条(乙の責任) 第6条(補償義務) 第7条(追加の簿外債務の取扱い) 第8条(乙の表明保証) 第9条(甲の表明保証) 第10条(対象会社の経営への不干渉) 第11条(甲の協力義務) 第12条(秘密保持義務) 第13条(通知) 第14条(権利義務の譲渡禁止) 第15条(本件株式譲渡契約との関係) 第16条(解除) 第17条(完全合意) 第18条(準拠法) 第19条(紛争解決) 第20条(その他)
【3】逐条解説
(第1条 定義)
用語を明確化することで後の解釈をめぐる争いを防ぎます。特に「簿外債務」の範囲を定めることで、対象会社の未開示負債が発覚した場合の責任分担が明瞭になります。
(第2条 前提事実の確認)
買収経緯と表明保証の内容を改めて確認する条項です。後の紛争で「知らなかった」という主張を防ぐ役割があります。
(第3条 本件簿外債務の内容)
具体的な債権者や金額を明示することで、補償対象を限定し、不必要な範囲まで争点が広がらないようにします。
(第4条 表明保証違反の確認)
売主が買主に対して虚偽や不実の保証をしていたことを確定させ、補償請求の根拠を強化します。
(第5条 乙の責任)
売主が連帯保証責任を負うことを定め、買主側のリスクを最小化します。弁護士費用や遅延損害金まで対象に含めている点が実務上重要です。
(第6条 補償義務)
支払期限や遅延利率を明確にし、実効性を確保します。買主は資金回収の見通しを立てやすくなります。
(第7条 追加の簿外債務の取扱い)
将来的に新たな簿外債務が見つかった場合のルールを定め、追加的なトラブルを予防します。通知期間や異議申立て手続を設けており、双方の利益調整に配慮した構造です。
(第8条 乙の表明保証)
売主が本書を締結・履行できる立場にあることを保証し、契約の有効性を担保しています。
(第9条 甲の表明保証)
買主についても同様に保証を定め、対等な契約関係を維持しています。
(第10条 対象会社の経営への不干渉)
売主が買収後に経営へ口出しすることを防止し、買主の経営権を安定させます。
(第11条 甲の協力義務)
債権者との交渉を売主が行う場合、買主が合理的範囲で協力する条項です。責任の所在を明確にしつつ実務の便宜を図っています。
(第12条 秘密保持義務)
取引条件や債務の詳細が第三者に漏れないように規定しており、企業の信用保護に資する内容です。
(第13条 通知)
通知先を定めることで、後日の「通知が届かなかった」という争いを防ぎます。
(第14条 権利義務の譲渡禁止)
契約当事者の地位を勝手に移転できないようにし、当事者間の信頼関係を保護します。
(第15条 本件株式譲渡契約との関係)
本合意と元の株式譲渡契約が並行して効力を持つことを確認し、買主の権利を二重に守ります。
(第16条 解除)
売主が支払い義務を履行しない場合、買主が速やかに契約を解除できるよう定めています。
(第17条 完全合意)
口頭合意などを排除し、本書面が最終的かつ完全な合意であることを明確にします。
(第18条 準拠法)
日本法に基づいて解釈されることを定め、法的安定性を確保します。
(第19条 紛争解決)
誠実協議を前提に、解決できなければ裁判所を定めています。訴訟管轄を事前に合意しておくことで紛争処理がスムーズになります。
(第20条 その他)
定めのない事項は誠実に協議して決めるとし、柔軟な対応を可能にしています。
【4】活用アドバイス
この示談書はM&A取引後のリスク対応に特化した実務文書です。利用する際は、まず自社が置かれている状況に合わせて条文を調整することが重要です。
特に金額や支払期限、遅延利率などは実務に即して修正してください。また、弁護士や会計士と相談しながら運用することで、より安全性が高まります。Word形式で編集可能なため、取引ごとに迅速にカスタマイズできる点を最大限活用すると良いでしょう。
【5】この文書を利用するメリット
この文書を使うことで、買収後に簿外債務が発覚した場合でも、当事者間で責任の所在や補償条件を明確にでき、迅速な解決が可能となります。結果として、長期的な訴訟リスクを軽減し、M&A後の企業運営に集中できる環境を整備できます。また、既存の雛型を使うことでゼロから契約書を作成する時間やコストを削減できる点も大きなメリットです。
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