【1】書式概要
この書式は、婚姻届を提出していないカップル、いわゆる事実婚や内縁関係にあるお二人が、そのパートナーシップを解消する際に取り交わす合意書の雛型です。
法律上の婚姻であれば、離婚届を役所に提出することで関係を終了させることができます。しかし、事実婚の場合はそもそも届出がないため、役所での手続きがありません。そのため、二人の間で「関係を終わりにすること」「お金や財産をどう分けるか」「子どもがいる場合の養育費や面会のルール」などを書面できちんと残しておくことが、後々のトラブルを防ぐうえで非常に大切になります。
この合意書を使う場面としては、長年連れ添ったパートナーと別れることになったとき、同棲を解消して財産関係を清算したいとき、お子さんの親権や養育費について明確に取り決めておきたいとき、あるいは厚生年金の分割について合意しておきたいときなどが挙げられます。円満に別れる場合でも、口約束だけでは後から「言った言わない」の争いになりかねませんので、こうした書面を作成しておくことをお勧めします。
Word形式でご提供しますので、お二人の状況に合わせて自由に編集していただけます。慰謝料の有無、お子さんの有無、年金分割をするかどうかなど、該当しない条項は削除したり、金額や日付を書き換えたりして、そのままご利用いただけます。
弁護士や行政書士に依頼すると数万円以上かかることも珍しくありませんが、この雛型を使えばご自身で作成できますので、費用を大幅に抑えることができます。また、公証役場で公正証書にする際のたたき台としてもご活用いただけます。
【2】条文タイトル
第1条(事実婚関係の解消) 第2条(事実婚期間の確認) 第3条(財産分与) 第4条(慰謝料) 第5条(未成年の子に関する事項) 第6条(年金分割) 第7条(住居の明渡し) 第8条(通知義務) 第9条(秘密保持) 第10条(清算条項) 第11条(公正証書) 第12条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(事実婚関係の解消)
この条文は、合意書の核心部分です。二人が事実婚関係を終わらせることについて、お互いに納得しているという意思表示を明確にします。法律婚の離婚届に相当するもので、「本日をもって」という表現で解消日を特定しています。後から「まだ別れていない」「そんなつもりはなかった」といった主張が出てくることを防ぐ効果があります。
第2条(事実婚期間の確認)
事実婚がいつ始まっていつ終わったのかを明記する条文です。これがなぜ重要かというと、財産分与や年金分割の対象期間を確定させるためです。たとえば、同棲を始めたのが2018年4月で、今回の合意書を交わすのが2025年1月であれば、その約7年間が事実婚期間となります。この期間に築いた財産が分与の対象になりますし、年金分割もこの期間について行うことになります。
第3条(財産分与)
事実婚期間中に二人で築いた財産をどう分けるかを定めます。たとえば、共同で貯めた預金、一緒に購入した家具や車、不動産などが対象になります。一方が多く稼いでいた場合でも、もう一方が家事を担っていたのであれば、その貢献も評価されます。実際の記載例としては、「甲が取得する財産:居住用マンション、乙が取得する財産:普通預金500万円」のように具体的に列挙します。金銭で調整する場合は、支払期日と振込先も明記しておくと安心です。
第4条(慰謝料)
別れの原因を作った側が相手に支払う慰謝料について定めます。たとえば、一方の浮気や暴力が原因で関係が破綻した場合などに慰謝料が発生することがあります。ただし、円満に別れる場合や双方に非がある場合は、慰謝料なしとすることも多いです。この合意書ではA案(支払いあり)とB案(支払いなし)の両方を用意していますので、該当する方を残して使います。
第5条(未成年の子に関する事項)
お子さんがいる場合、誰が親権者になるか、養育費をいくら支払うか、面会交流はどうするかを取り決めます。事実婚の場合、子どもは母親の戸籍に入っていることが多く、父親が認知しているかどうかで親権の扱いが変わってきます。養育費の相場は、双方の収入やお子さんの年齢によって異なりますが、家庭裁判所が公表している算定表が参考になります。面会交流については、「月2回、土曜日に」など具体的に決めておくと、後のトラブルを防げます。
第6条(年金分割)
事実婚期間中の厚生年金を分け合う制度について定めます。正式な婚姻ではなくても、事実婚として認められれば年金分割の対象になります。按分割合は最大0.5(半分ずつ)まで設定できます。ただし、年金事務所での手続きが必要で、事実婚であったことを証明する資料(住民票の続柄欄に「夫(未届)」や「妻(未届)」と記載されているなど)が求められます。年金分割を希望しない場合や、そもそも該当しない場合は、その旨を明記しておきます。
第7条(住居の明渡し)
どちらかが出ていく場合の取り決めです。たとえば、甲名義のマンションに一緒に住んでいた場合、乙がいつまでに退去するかを明記します。引っ越しの準備期間として1〜2か月程度の猶予を設けることが多いです。すでに別居している場合や、どちらも出ていく場合は、この条文自体を削除しても構いません。
第8条(通知義務)
別れた後も、住所や連絡先が変わったら相手に知らせる義務を定めています。特にお子さんがいる場合は、養育費の振込先が変わったり、面会交流の連絡をとったりする必要があるため、この条文は重要です。勤務先の変更も通知対象にしているのは、養育費の支払いが滞った場合に給与差押えなどの手続きをとる可能性があるためです。
第9条(秘密保持)
別れた経緯や相手のプライバシーを第三者に漏らさないという約束です。SNSで愚痴を書いたり、共通の友人に詳細を話したりすることを防ぐ効果があります。「正当な理由なく」という限定をつけているので、弁護士への相談や裁判手続きなど、必要がある場合は例外となります。
第10条(清算条項)
この合意書に書いてあること以外には、お互いに何も請求しないという最終確認です。後から「実はあのときの生活費を返してほしい」「貸していたお金がある」といった蒸し返しを防ぐための非常に重要な条文です。この条文があることで、合意書の締結をもって二人の金銭関係はすべて解決済みということになります。
第11条(公正証書)
合意書の内容を公証役場で公正証書にするかどうかを定めます。公正証書にしておくと、養育費や財産分与の支払いが滞った場合に、裁判を経ずにいきなり給与や預金の差押えができるようになります(強制執行認諾文言付きの場合)。作成費用は内容や金額によって異なりますが、数万円程度が目安です。費用を折半にするか、どちらか一方が負担するかも決めておきます。
第12条(協議事項)
合意書に書いていないことが出てきたり、解釈に疑問が生じたりした場合は、誠意をもって話し合って解決しましょうという条文です。たとえば、お子さんの進学に伴って養育費の増額が必要になった場合や、転勤で面会交流の方法を変えたい場合などに、この条文に基づいて協議することになります。
【5】活用アドバイス
まず、この合意書を作成する前に、二人でしっかり話し合いの時間を設けてください。財産の洗い出し、養育費の金額、面会交流の頻度など、決めなければならないことは意外と多いものです。感情的になりやすい場面ですが、できるだけ冷静に、将来のことを見据えて話し合うことが大切です。
合意書の記入にあたっては、空欄になっている部分(氏名、日付、金額など)を漏れなく埋めてください。特に財産分与の対象となる財産は、預金であれば金融機関名・口座番号まで、不動産であれば所在地や登記簿上の表示まで、できるだけ具体的に記載することをお勧めします。曖昧な記載は後のトラブルの原因になります。
A案・B案のように選択肢がある条文については、該当する方を残し、該当しない方は削除してください。たとえば、慰謝料の支払いがない場合はB案を残してA案を削除します。条文番号がずれる場合は、適宜修正してください。
署名・押印は、できれば二人が同席して行うことをお勧めします。郵送でやり取りする場合は、先に一方が署名・押印したものを相手に送り、相手も署名・押印した後に1通を返送してもらう流れになります。合意書は2通作成し、甲乙それぞれが1通ずつ保管します。
養育費や財産分与など金銭の支払いを伴う内容がある場合は、公正証書にすることを強くお勧めします。公証役場に連絡して予約を取り、この合意書を持参すれば、公証人が公正証書を作成してくれます。費用は内容によって異なりますが、事前に公証役場に問い合わせれば概算を教えてもらえます。
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