【１】書式概要
この雛型は、いわゆる「ブラック企業」で見られるような厳しい内容の誓約書を再現したものです。残業や休日出勤を当然とする取り扱いや、退職後の競業禁止、SNS投稿の禁止、損害賠償の強い制約などが盛り込まれており、実際に使用するには大きな法的リスクが伴う内容です。
しかし、人事労務の教材や研修資料として「問題のある誓約書の例」として紹介する際には非常に有用です。特に労務コンプライアンス研修や社内勉強会、弁護士・社労士のセミナー資料などで活用できます。Word形式で編集可能となっているため、自社の研修や資料作成に合わせて加工することができます。
【２】逐条解説（例を交えて）
労働時間に関する事項
「残業は当然と理解し…」と記載されていますが、労働基準法において残業は労使協定（36協定）に基づき制限されるものであり、当然視するのは問題です。例えば、繁忙期に「毎日3時間残業が当然」とする会社があれば、従業員に過度の負担がかかり過労リスクを高めます。
給与・待遇に関する事項
「基本給に残業代が含まれている」とする定めは、裁判例でも問題視されています。固定残業制を導入する場合は、別途の明示や合理的な設定が必要であり、無条件に「請求しない」とするのは違法の可能性が高いです。
退職に関する事項
「退職時に会社が被った損害を賠償」「退職後3年間の競業禁止」は過度な制約です。例えば、同業他社に転職しただけで賠償請求されるような条項は、裁判で無効と判断される可能性が極めて高いです。
機密保持・競業避止
在職中の秘密保持義務は一般的に正当ですが、「退職後永続的に」「SNSでの発言禁止」まで定めると、過度に表現の自由を制限する恐れがあります。
懲戒・損害賠償
「ミスによる損害を全額賠償」とするのは現実的ではありません。通常は故意や重大な過失がある場合に限定されます。
その他
「家族や友人への愚痴も禁止」という条項は、プライベートの自由に過度に踏み込み、人格権の侵害にあたるおそれがあります。
【３】活用アドバイス
この雛型は、実務でそのまま利用するものではなく「反面教師」として使うことが最も効果的です。例えば、管理職研修で「このような誓約書はなぜ問題なのか」を議論する教材として利用することで、労務リスクへの理解を深められます。また、労務コンプライアンスに関心を持つ中小企業の経営者や、顧問先を指導する社労士にとっても有効です。
【４】この文書を利用するメリット
・ブラック企業的な発想がどこに潜んでいるのかを直感的に学べる
・従業員や経営者に「これはやってはいけない」という意識を持たせられる
・研修やセミナー資料として即活用できる
・Word形式なので加工が容易で、自社の教材や事例集に転用できる
|
