【1】書式概要
この文書は、企業が従業員や役員に対してストックオプション制度を導入する際に必要となる社内規程の雛型です。近年、優秀な人材確保や従業員のモチベーション向上を目的として、多くの企業がストックオプション制度を導入しています。特にIT企業やベンチャー企業では、限られた現金報酬を補完する重要な制度として広く活用されています。
この規程雛型は、新株予約権の付与対象者の範囲から権利行使の条件、譲渡制限、消却事由まで、ストックオプション制度運用に必要な基本的な項目を網羅的に定めています。企業の株式価値向上と従業員の利益を連動させることで、企業と従業員の利害を一致させる効果的な仕組みを構築できます。
実際の使用場面としては、新規事業立ち上げ時の創業メンバーへの付与、優秀な中途採用者への入社インセンティブ、既存従業員の長期定着促進、IPO準備段階での組織強化などが挙げられます。また、M&Aや事業承継の際の経営陣への動機付けにも活用されています。
Word形式で提供されているため、自社の状況に応じて条文の修正や追加が容易に行えます。取締役会や株主総会での承認を得た後、すぐに制度運用を開始できる実用的な文書として設計されています。人事制度の整備や企業価値向上を検討している経営者、人事担当者、総務担当者の方々にとって、制度導入の第一歩となる重要な資料です。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(定義) 第3条(付与対象者) 第4条(株式の種類および数量) 第5条(新株予約権の総数) 第6条(発行価額) 第7条(新株予約権証券の発行) 第8条(譲渡) 第9条(行使価額) 第10条(権利行使期間) 第11条(消却)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は規程全体の位置づけを明確にしています。会社法や定款といった上位規範に反しない範囲で、この規程が社内のストックオプション制度を統一的に運用するための基準となることを宣言しています。例えば、定款でストックオプション発行に関する特別な定めがある場合は、そちらが優先されます。
第2条(定義)
ストックオプションの本質を「株主以外の者への特に有利な条件での新株予約権発行」と定義しています。通常の新株予約権は市場価格で発行されますが、ストックオプションは従業員等への報酬的意味合いから、より有利な条件で発行される点が特徴です。
第3条(付与対象者)
付与対象者を3つのカテゴリーに分類しています。取締役と従業員を基本としつつ、子会社の役職員も含めることで企業グループ全体での制度運用を可能にしています。第3号の「その他」条項により、外部の重要な協力者や顧問なども対象に含めることができます。
第4条(株式の種類および数量)
発行する株式の種類を普通株式に限定し、発行数量の上限設定プロセスを定めています。上限設定により既存株主の希釈化リスクを制御でき、株主総会での承認により株主の意思を反映させる仕組みになっています。
第5条(新株予約権の総数)
1個の新株予約権につき100株という基本単位を設定しています。これにより権利行使時の計算が簡素化され、個人別の付与数量調整も取締役会レベルで柔軟に行えます。例えば、役員には10個、一般従業員には5個といった差を設けることが可能です。
第6条(発行価額)
新株予約権自体の発行価額を株主総会で決定するプロセスを定めています。通常、従業員向けストックオプションでは発行価額は無償または名目的な金額に設定されることが多く、この条項により適切な価額設定が可能になります。
第7条(新株予約権証券の発行)
物理的な証券発行を希望する権利者への対応を定めています。近年は電子化が進んでいますが、権利の明確化や担保設定などの目的で証券発行を求めるケースもあり、そうした要請に応える規定です。
第8条(譲渡)
ストックオプションの譲渡を取締役会の承認制にすることで、制度の趣旨である従業員の動機付けを維持しています。無制限な譲渡を認めてしまうと、権利が第三者に流出し、制度本来の目的が失われる可能性があるためです。
第9条(行使価額)
株式取得時の価額算定方法を詳細に定めています。発行時点の株価に5%のプレミアムを上乗せすることで、株価上昇への動機付けを図っています。また、株式分割等による調整規定により、権利者の利益を適切に保護しています。
第10条(権利行使期間)
権利行使できる期間を取締役会で決定する仕組みとし、在籍要件も設けています。通常は付与から2~3年後から行使可能とし、10年程度の期間を設定することが多く、退職により権利が失効する条件が一般的です。
第11条(消却)
権利が無効となる場面を明確に定めています。M&Aや組織再編時、権利者の死亡や退職時には、制度の継続が困難または不適切になるため、会社が権利を無償で消却できる仕組みを整えています。これにより制度運用の安定性を確保しています。
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