【1】書式概要
近年、イラストや画像を大量に収集してAIに学習させるサービスが急増しています。その中で、自分の作品が知らないうちに学習用データとして使われていたと気づいたクリエイターの方も多いのではないでしょうか。この書式は、そうしたAI事業者に対して「自分の著作物を無断で使うな」「すでに学習されたデータから削除してほしい」という意思を明確に伝えるための警告書テンプレートです。
イラストレーター、漫画家、デジタルアーティストなど、絵を描くことを仕事や活動の中心にしている方が、自分の権利を守るために使うことを想定しています。たとえば、自分の作品がAI学習用のデータセットに含まれていることをSNSや調査で発見したとき、あるいは自分の画風を真似た生成物がネット上に出回っていることに気づいたとき、このテンプレートを使って相手企業に正式な警告を送ることができます。
この書式には、対象となる著作物の特定、相手の行為の説明、著作権法に基づく違法性の指摘、そして具体的な請求事項(削除・今後の利用停止・回答期限の設定)まで、必要な項目がすべて盛り込まれています。チェックボックス形式で該当する理由を選べるようになっているため、専門的な知識がなくても自分の状況に合わせて使いやすい構成になっています。Word形式でお渡ししますので、ご自身の情報や相手先の情報を入力して、そのまま印刷・送付できます。法的な対応を検討する第一歩として、ぜひご活用ください。
【2】条文タイトル
この文書は「条文」形式ではなく「項目」形式で構成されています。以下のとおり整理します。
- 第1項(対象著作物)
- 第2項(貴社の行為)
- 第3項(本件行為の違法性)
- 第4項(請求事項)
- 第5項(法的措置について)
【3】逐条解説
第1項(対象著作物)
この項目では、警告の対象となる自分の著作物を具体的に特定します。どの作品について権利を主張しているのかを相手にはっきり伝えることが目的です。作品名、公開しているURL、いつ公開したか、どんな内容の作品なのかを記載します。複数の作品がある場合は、別紙に一覧表をつけることもできます。
たとえば、Pixivで公開しているオリジナルキャラクターのイラストが無断で学習されていた場合、その作品ページのURLと公開日を記入することで、「この特定の作品について言っている」と相手に誤解なく伝わります。曖昧な指摘では相手も対応しづらいので、できるだけ具体的に書くことが大切です。
第2項(貴社の行為)
ここでは、相手企業がどのサービスで、どのように自分の著作物を使っているのかを説明します。サービス名やURLを明記し、いつ、どうやってその事実を確認したのかも記載します。
実際の使い方としては、「○○というAI画像生成サービスで、自分のイラストが学習データに含まれていることをデータセット検索ツールで確認した」といった形で具体的に書きます。確認日と確認方法を書いておくことで、「思い込みや勘違いではなく、ちゃんと調べた上で言っている」ということを示せます。
第3項(本件行為の違法性)
著作権法との関係で、なぜ相手の行為が違法なのかを説明する重要な項目です。著作権法30条の4は、AIの学習など「思想や感情の享受を目的としない利用」を一定範囲で認めていますが、「著作権者の利益を不当に害する場合」は例外とされています。
この項目ではチェックボックス形式になっていて、自分の状況に該当するものを選びます。たとえば、自分の画風をそっくり真似た画像が生成できる状態になっている、自分の作品と市場で競合する画像の生成に使われている、オプトアウト(利用拒否)の意思表示をしていたのに無視されたなど、具体的な理由を示すことができます。「その他」欄もあるので、上記に当てはまらない場合は自由に記載できます。
第4項(請求事項)
相手に対して具体的に何をしてほしいのかを伝える項目です。この書式では3つの請求を行います。まず、すでに保有しているデータセットから自分の著作物を削除すること。次に、今後は自分の著作物を学習用に使わないこと。そして、この警告書が届いてから14日以内に、対応が完了したことを書面で回答すること。
回答期限を設けることで、相手に「いつまでに対応すべきか」を明確に伝えられます。14日という期間は、一般的な警告書でよく使われる目安です。この期間内に誠実な対応がなければ、次のステップ(法的措置)に進む根拠にもなります。
第5項(法的措置について)
最後に、期限までに対応がない場合の次のアクションを予告します。差止請求(侵害行為をやめさせる請求)や損害賠償請求を含む法的措置を取る可能性があることを伝えます。また、文化庁やその他の関係機関への情報提供も検討していることを付け加えています。
この項目があることで、単なるお願いではなく「本気で権利を守るつもりがある」という姿勢を示せます。実際に訴訟を起こすかどうかは別として、こうした警告を正式に送ることで、相手が自主的に対応してくれるケースも少なくありません。
【4】FAQ
Q1. この警告書を送るタイミングはいつがいいですか?
A1. 自分の作品がAI学習用データとして使われていることを確認できた時点で送ることをお勧めします。SNSでの指摘だけでは相手企業が対応しないことも多いため、書面で正式に通知することで対応を促しやすくなります。
Q2. 相手企業の住所や代表者名がわからない場合はどうすればいいですか?
A2. 法人であれば、法務局で登記情報を取得するか、国税庁の法人番号公表サイトで所在地を調べることができます。また、相手企業のウェブサイトに会社概要や特定商取引法に基づく表記があれば、そこから情報を得られることもあります。
Q3. 内容証明郵便で送る必要がありますか?
A3. 必須ではありませんが、内容証明郵便で送ると「いつ、どんな内容の書面を送ったか」という証拠が残ります。後々トラブルになった際に有利になりますので、可能であれば内容証明郵便での送付をお勧めします。
Q4. 14日以内に回答がなかった場合、どうすればいいですか?
A4. まずは電話やメールで確認の連絡を入れてみてください。それでも対応がない場合は、弁護士への相談や、より強い内容の2回目の警告書送付、さらには法的措置の検討を進めることになります。
Q5. 個人でも企業に警告書を送って大丈夫ですか?
A5. はい、著作権者であれば個人でも警告書を送ることができます。ただし、相手企業が大手の場合や対応が複雑になりそうな場合は、弁護士に相談することも選択肢として考えてください。
Q6. ペンネームで活動していますが、本名を書く必要がありますか?
A6. この書式ではペンネームの記載欄も設けていますが、正式な警告書として効力を持たせるためには本名(戸籍上の氏名)の記載をお勧めします。ペンネームだけでは相手が本人確認できず、対応してもらえない可能性があります。
Q7. 海外の企業に対しても使えますか?
A7. この書式は日本の著作権法に基づいて作成されているため、日本国内の企業を想定しています。海外企業に対しては、その国の法律に基づいた対応が必要になる場合がありますので、国際的な著作権問題に詳しい専門家への相談をお勧めします。
【5】活用アドバイス
① 証拠をしっかり集めてから送る
警告書を送る前に、自分の作品が学習に使われている証拠を集めておきましょう。データセット検索ツールのスクリーンショット、該当ページのURL、確認した日時の記録などを残しておくと、後の対応がスムーズになります。
② 自分の著作物の公開履歴を整理する
作品名、公開URL、公開日などをリスト化しておくと、複数作品をまとめて請求する場合に役立ちます。別紙一覧として添付することで、どの作品について言っているのかを相手に明確に伝えられます。
③ 送付方法を検討する
普通郵便よりも、レターパックプラス(追跡・配達証明あり)で送ることをお勧めします。相手が「受け取っていない」と言い逃れできなくなります。
④ コピーを保管しておく
送付した警告書のコピーは必ず手元に残しておきましょう。将来的に弁護士に相談する場合や、追加の対応が必要になった場合に必要になります。
⑤ 回答期限後のアクションを事前に考えておく
14日の回答期限が過ぎても連絡がなかった場合にどうするか、あらかじめ考えておくと慌てずに済みます。2回目の警告を送るのか、弁護士に相談するのか、SNSで公表するのかなど、次のステップを想定しておきましょう。
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