【1】書式概要
この書式は、賃貸物件のオーナー様が賃借人による無断譲渡や無断転貸の契約違反を発見した際に使用する正式な解除通知書のテンプレートです。近年、賃貸経営においてこうしたトラブルは決して珍しいことではありません。例えば、契約者本人が住まずに友人や知人に又貸ししているケース、民泊として無断で第三者に提供しているケース、同居人として装って実質的に転貸しているケースなど、様々な形で発生しています。
この書式を使用する場面として最も多いのは、近隣住民からの苦情や定期的な巡回で契約者以外の人物が居住していることが判明した時です。また、郵便物の宛先が契約者以外になっている、水道光熱費の使用量が異常に多い、複数の自転車やバイクが置かれているといった兆候から発覚することもあります。
この通知書の特徴は、改正民法に完全対応している点にあります。従来の書式では対応しきれない新しい規定も織り込まれており、より確実な手続きが可能になっています。物件情報から契約条件、違反行為の具体的指摘まで、必要な項目がすべて整理されているため、記入するだけで即座に使用できます。
賃貸経営を行う個人オーナーから不動産管理会社まで、幅広くご活用いただける実用的なテンプレートです。トラブル発生時の迅速な対応により、さらなる被害の拡大を防ぎ、適切な賃貸経営の維持に役立てていただけます。
【2】解説
契約日の記載について
この欄では当初の賃貸借契約を締結した年月日を記入します。契約解除の根拠となる原契約を明確にするため、正確な日付の記載が重要になります。例えば平成から令和への改元をまたぐ契約の場合、どちらの年号で契約したかも確認が必要です。
物件情報の詳細記載について
所在地から構造、床面積まで詳細に記載する理由は、解除対象となる物件を特定するためです。特にマンションやアパートの場合、部屋番号の記載漏れがトラブルの原因となることがあります。家屋番号は登記簿上の番号を、構造は鉄筋コンクリート造や木造などの正式名称を記載します。
賃料・支払条件の明示について
月額賃料と支払期日を明記することで、契約の基本的な金銭条件を確認します。これにより、無断譲渡・転貸によって本来の契約関係が損なわれていることを際立たせる効果があります。支払期日については「翌月分を毎月末日まで」といった具体的な記載が一般的です。
契約期間の確認について
定期借家契約か普通借家契約かに関わらず、契約期間の記載は解除通知の有効性を裏付ける重要な要素です。期間満了前の解除であることを明確にし、契約違反による解除である旨を強調します。
譲渡・転貸禁止条項の援用について
この項目が通知書の核心部分となります。原契約書の第何条に譲渡・転貸禁止が規定されているかを明示し、違反行為が解除事由に該当することを法的根拠とともに示します。多くの賃貸借契約書では第6条付近にこの規定が置かれることが多いのですが、契約書によって条文番号は異なります。
違反行為の具体的指摘について
単に「無断譲渡・転貸している」と記載するだけでは不十分で、具体的に誰に対してどのような使用をさせているかを明記します。第三者の氏名が判明している場合はその氏名を、不明な場合でも「契約者以外の者」といった形で特定可能な記載をします。これにより、曖昧さを排除し、違反行為の存在を明確に主張できます。