第1条(目的)の解説
この条文では合意書全体の目的を明確化しています。共有動産の競売実施と代金分配という二つの要素を一つの合意でまとめて処理する旨を定めており、手続きの一体性を確保する役割を果たします。目的条項があることで、後の解釈に際しても合意の趣旨が明確になります。
第2条(本件動産)の解説
売却対象となる動産の特定と、各当事者の持分割合を定める重要な条文です。動産の詳細な記載により特定を図り、所在地の明記で現物の所在を明確にします。持分割合は後の代金分配の基礎となるため、相続持分や出資割合など根拠に基づいて正確に記載する必要があります。
第3条(競売の実施)の解説
競売手続きの実施方法と責任分担を定めています。競売実施者への依頼、甲による代表契約締結、費用の均等負担など、実務的な取り決めが中心となります。競売会社への委託が一般的ですが、個人間売買の仲介業者を利用する場合もあります。書面による確認を求めているのは後のトラブル防止のためです。
第4条(最低売却価格)の解説
競売における最低価格を設定する条文です。相場より著しく安い価格での落札を防ぐ効果があります。価格変更には全員合意を要するとしているのは、一部の当事者による独断的な価格変更を防ぐためです。鑑定評価額の7割程度を目安とすることが多いようです。
第5条(競売前の準備)の解説
競売を成功させるための事前準備について定めています。正確な情報提供義務、専門家による鑑定の実施、必要な修理や整備など、売却価格を向上させるための取り組みを規定しています。特に機械設備などでは、動作確認や簡易な修理により売却価格が大幅に改善されることがあります。
第6条(競売の実施と成立)の解説
実際の競売実施における当事者の義務と、落札後の対応を定めています。競売妨害の禁止は重要で、例えば一部の当事者が競売会場で不利な情報を流すような行為を防ぎます。落札者の代金不払いへの対応も実務的に重要な規定です。
第7条(代金の分割)の解説
売却代金の分配方法を具体的に定める核心的な条文です。諸経費控除後の分配、分配期限の設定、実際の支払い方法まで詳細に規定しています。甲による代表受領と振込分配は事務処理の効率化を図ったものです。分配期限を設けることで迅速な処理を確保します。
第8条(税金等の処理)の解説
売却に伴う税務処理を定めています。譲渡所得税などは各自の責任とし、共通費用は協議で決定するという実用的な規定です。税務については専門家への相談が必要な場合も多く、事前に税理士等への確認をお勧めします。
第9条(契約不適合責任)の解説
改正民法に対応した重要な条文です。従来の瑕疵担保責任に代わる契約不適合責任について、当事者の連帯責任と費用負担を持分割合に応じて行う旨を定めています。例えば売却した車両にリコール対象部品が使用されていた場合の対応費用などが該当します。
第10条(守秘義務)の解説
競売に関する情報の機密保持を定めています。売却価格や当事者の事情などが第三者に漏れることを防ぐ効果があります。ただし、競売実施に必要な開示や法令による開示要請は例外としており、実務上の必要性にも配慮しています。
第11条(契約の変更)の解説
合意書の変更には全員の書面合意を要するとした条文です。口約束による変更や一部当事者による勝手な変更を防ぐ効果があります。重要な取り決めの変更は慎重に行うべきという考えに基づいています。
第12条(地位の譲渡禁止)の解説
当事者としての地位を第三者に譲渡することを制限する条文です。例えば相続が発生した場合を除き、他の当事者の同意なく第三者が合意に参加することを防ぎます。信頼関係に基づく合意の性格を保護する規定です。
第13条(反社会的勢力の排除)の解説
近年の契約書では標準的となった反社排除条項です。当事者が反社会的勢力でないことの表明保証を求めており、コンプライアンス上重要な規定です。競売実施者との契約でも同様の条項が求められることが一般的です。
第14条(紛争解決)の解説
トラブル発生時の解決方法を定めています。まず当事者間の協議を優先し、それで解決しない場合の管轄裁判所を指定しています。専属的合意管轄により、複数の裁判所での係争を防ぐ効果があります。動産の所在地を管轄する裁判所を指定することが多いです。
第15条(有効期間)の解説
合意書の効力が続く期間を定めています。代金分配完了までとすることで、手続き全体が終了するまで合意の効力を維持します。長期間に及ぶ場合もあるため、明確な終期の設定は重要です。
第16条(準拠法)の解説
この合意書に適用される法律を明確化する条文です。日本法の適用を明記することで、解釈上の疑義を防ぎます。国際的な要素がある場合には特に重要な規定となります。