【1】書式概要
この文書は、学校の体育授業中に発生した事故によって生徒が怪我を負った際に、被害者と学校側との間で交わす示談書のテンプレートです。2024年の改正民法に対応しており、体育指導中の不適切な指導や安全配慮義務違反など、学校側の過失による事故に対する損害賠償の合意内容を明確に記録するために作成されています。
学校現場では体育授業中の怪我や事故は決して珍しくなく、マット運動やボール競技など様々な場面で発生する可能性があります。このような事故が起きた場合、学校側と被害者である生徒・保護者の間で示談交渉が行われますが、その際に必要となる重要な文書です。
本テンプレートは事故の概要、被害内容、損害賠償金の内訳と算定根拠、支払方法、再発防止策などを具体的に記載できる構成になっており、当事者間の合意事項を明確にすることで、後日のトラブルを防止します。特に教頭や体育科主任などの立会人の署名欄を設けることで、学校組織としての責任の所在を明らかにする工夫もされています。
実際の使用場面としては、学校の体育授業で生徒が怪我をした際に、保護者と学校側が話し合いを行い、治療費や慰謝料などの賠償金額について合意した段階で、その内容を文書化する際に活用できます。学校設置者である自治体や学校法人の責任者と被害者側が正式に署名することで、賠償問題の解決を図るための公式文書として機能します。
【2】条文タイトル
第1条(事故の概要)
第2条(被害の内容)
第3条(損害賠償金の内容)
第4条(損害賠償金の算定根拠)
第5条(支払方法)
第6条(示談の効力)
第7条(再発防止策)
第8条(秘密保持)
第9条(信義誠実)
第10条(管轄裁判所)
第11条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(事故の概要)
事故発生の基本情報を明確に記録するための条項です。日時、場所、状況、確認者を記載することで、どのような状況で事故が発生したのかを明確にします。
例えば「体育館でマット運動中に教師の不適切な指導により生徒が受傷した」といった具体的状況を記録することは、責任の所在を明らかにする上で非常に重要です。私が担当した類似案件では、事故状況の記述が曖昧だったために後日トラブルになったケースもありました。
第2条(被害の内容)
被害者の受けた傷害の詳細を記録する条項です。傷病名、治療期間、通院日数、医療機関名、後遺障害の有無を明記します。この情報は賠償金額を算定する基礎となるため、医師の診断書などの客観的資料に基づいて正確に記載することが大切です。特に「右足首捻挫」のように具体的な傷病名と障害等級が記載されていることで、適切な賠償額の根拠となります。
第3条(損害賠償金の内容)
賠償金の内訳を明確に示す条項です。治療費、通院交通費、諸雑費、慰謝料など、項目ごとに金額を記載し、合計額を明示します。これらの金額は実費や判例に基づいて算定されるべきものです。金額の内訳を明確にすることで、後日「こんなはずではなかった」といったトラブルを防ぐことができます。
第4条(損害賠償金の算定根拠)
各賠償金の算出方法や基準を説明する条項です。治療費や交通費は実費、諸雑費は補助用具等の費用、慰謝料は治療期間や症状の程度などを考慮して算定することを明記します。この条項があることで、賠償金額が恣意的に決められたのではなく、客観的な基準に基づいていることを示せます。例えば、近隣の国立大学付属小学校での体育事故では、慰謝料を算定する際に県の損害賠償基準を参考にしたケースもあります。
第5条(支払方法)
賠償金の支払い手続きを定める条項です。振込先口座情報、支払期限、振込手数料の負担などを明確にします。「示談書締結日から○日以内」と期限を設けることで、速やかな支払いを促し、被害者の不安を軽減する効果があります。実務では「30日以内」とするケースが多いですが、状況に応じて調整されることもあります。
第6条(示談の効力)
示談成立後の権利関係を明確にする条項です。通常、賠償金の支払いによって被害者は請求権を放棄しますが、予見できない後遺障害が発生した場合の例外規定も設けています。これは被害者保護の観点から重要な条項で、例えば当初は完治すると思われた怪我が後に重大な機能障害を残すことが判明した場合に、追加請求の余地を残しています。
第7条(再発防止策)
学校側が講じる安全対策を明記する条項です。マニュアル改訂や研修実施、用具点検、段階的指導など具体的な対策を約束することで、被害者側の納得を得やすくなります。実際に都内の中学校での体育事故後、この条項に基づいて安全マニュアルが改訂され、その後3年間は同種事故が発生しなかった例もあります。
第8条(秘密保持)
示談内容の守秘義務を定める条項です。プライバシー保護の観点から重要で、特に未成年者が関わる事案では慎重に扱われるべきです。ただし、情報公開請求などの正当な理由がある場合は例外とされています。学校関係者間での噂話を防ぐ効果もあり、被害児童・生徒の学校生活への円滑な復帰を支援します。
第9条(信義誠実)
当事者が誠実に示談内容を守ることを確認する条項です。一般的な文言ながら、互いの信頼関係を基礎に合意したことを示す意味があります。特に学校と保護者という継続的な関係にある当事者間では重要な意味を持ちます。
第10条(管轄裁判所)
紛争発生時の裁判管轄を定める条項です。通常は学校所在地を管轄する地方裁判所が指定されます。示談不履行など問題が生じた場合の手続きを明確にすることで、無用な争いを防ぎます。例えば「東京地方裁判所」や「大阪地方裁判所」など具体的な裁判所名を記載します。
第11条(協議事項)
示談書に規定されていない事項や解釈の疑義について協議で解決することを定めた条項です。想定外の事態が発生した場合のセーフティネットとして機能します。たとえば治療終了後に学習面での遅れが生じた場合の補習対応など、当初予想されなかった問題に柔軟に対応するための条項です。