【1】書式概要
この契約書は、企業が人事・経理・総務・情報システムなどの間接業務を専門会社に委託する際に使用するシェアードサービス業務委託契約書の雛型です。近年、多くの企業が業務効率化とコスト削減を目的として、間接業務の外部委託を積極的に検討していますが、そうした場面で必要となる契約書として作成されています。
特に大企業のグループ会社間でのシェアードサービス導入時や、中小企業が専門業者に経理・人事業務を委託する際に威力を発揮します。改正民法にも対応しており、現在の商慣習に即した内容となっています。Word形式での提供により、お客様の事業内容や取引条件に合わせて自由に編集・カスタマイズが可能です。
委託者側の企業はもちろん、受託者側のシェアードサービス会社や業務代行会社にとっても、双方の権利義務を明確化し、トラブルを未然に防ぐ重要な書面として活用できます。個人情報保護や機密保持条項も充実しており、昨今の情報セキュリティ要求にも対応した実用的な契約書雛型です。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(定義) 第3条(業務委託の範囲) 第4条(個別契約) 第5条(業務実施) 第6条(委託料及び支払方法) 第7条(納期及び検収) 第8条(報告義務) 第9条(責任者の選任) 第10条(機密保持) 第11条(個人情報の取扱い) 第12条(知的財産権) 第13条(資料等の提供及び返還) 第14条(権利義務の譲渡禁止) 第15条(契約期間) 第16条(解除) 第17条(契約終了時の措置) 第18条(損害賠償) 第19条(反社会的勢力の排除) 第20条(表明保証) 第21条(協議事項) 第22条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は契約全体の趣旨を明確にするものです。委託者が間接業務の効率化を図るため、専門性を持つ受託者にシェアードサービスを委託することを宣言しています。例えば、製造業の本社が子会社の経理業務を集約して処理する場合や、IT企業が人事給与業務を専門会社に委託する際の根拠となります。
第2条(定義)
契約書で使用される専門用語を明確に定義することで、後々の解釈の違いを防ぎます。「シェアードサービス」「業務委託」「個別契約」「委託料」「成果物」の5つの重要な概念が定義されており、これらは契約書全体を通じて一貫した意味で使用されます。
第3条(業務委託の範囲)
委託する業務の種類を具体的に列挙しています。人事給与、経理財務、総務管理、情報システムの4つの主要業務に加え、当事者が合意すれば他の業務も追加できる柔軟性を持たせています。例えば、法務業務や調達業務なども後から追加することが可能です。
第4条(個別契約)
基本契約と個別契約の関係を整理しています。基本契約は大枠を定め、実際の業務ごとに個別契約で詳細を決める仕組みです。これにより、異なる業務特性に応じた柔軟な対応が可能となります。例えば、経理業務は月次処理、人事業務は年次処理といった違いに対応できます。
第5条(業務実施)
受託者の業務実施における基本的な義務を規定しています。善良な管理者の注意義務、委託者の指示への従属義務、再委託の制限などが含まれます。特に再委託については、機密性の高い間接業務の性質上、事前承諾を必要とする厳格な規定となっています。
第6条(委託料及び支払方法)
委託料の支払いに関する取り決めです。月次請求・月次支払いを基本とし、振込手数料は委託者負担とするなど、実務的な配慮がなされています。また、委託料改定時の協議規定も設けられており、長期契約に対応した内容となっています。
第7条(納期及び検収)
成果物がある業務について、納期と検収の手続きを定めています。委託者による検収期間の設定とみなし承認制度により、業務の停滞を防ぐ仕組みが導入されています。例えば、月次の財務報告書作成業務などで威力を発揮します。
第8条(報告義務)
受託者の報告義務について規定しています。進捗報告、重要事項の報告、定期的な実績報告の3つが柱となっており、委託者が業務状況を適切に把握できるよう配慮されています。特に、サービスレベルの達成状況報告は、品質管理の観点から重要です。
第9条(責任者の選任)
双方の責任者を明確にし、円滑なコミュニケーションを確保するための規定です。責任者は契約履行に関する権限を有し、日常的な連絡調整を行います。例えば、大規模なシステム移行プロジェクトでは、専任の責任者を配置することが一般的です。
第10条(機密保持)
間接業務には機密性の高い情報が含まれるため、厳格な機密保持義務を課しています。技術情報、営業情報、個人情報を含む包括的な規定となっており、契約終了後も一定期間義務が継続します。除外事項についても明確に定義されています。
第11条(個人情報の取扱い)
個人情報保護法への対応を明記した重要な条文です。人事給与業務では従業員の個人情報を大量に扱うため、安全管理措置、従業者への教育監督、返還・廃棄義務などが詳細に規定されています。現在の個人情報保護の要求水準に対応した内容です。
第12条(知的財産権)
業務過程で生まれる知的財産権の帰属を明確にしています。原則として委託者帰属とし、受託者の著作者人格権不行使も規定しています。例えば、システム開発を伴う業務や、新しい業務プロセスの構築などで重要となります。
第13条(資料等の提供及び返還)
委託者から提供される資料や機器の管理について規定しています。善良な管理者の注意義務、目的外使用の禁止、返還義務などが含まれ、情報漏洩や不正利用を防ぐための措置が講じられています。
第14条(権利義務の譲渡禁止)
契約上の地位や権利義務の第三者への譲渡を制限しています。シェアードサービス契約は当事者の信頼関係に基づくものであり、無断での譲渡は契約の趣旨に反するため、事前承諾を必要としています。
第15条(契約期間)
契約期間と自動更新について規定しています。基本契約の安定性を確保しつつ、更新時の見直し機会も設けられており、長期的な取引関係に適した内容となっています。更新拒絶の意思表示期間も明確に定められています。
第16条(解除)
契約解除の事由と手続きを定めています。一般的な債務不履行による解除と、重大事由による無催告解除の2つのパターンが規定されています。破産等の倒産手続きや反社会的勢力との関係発覚なども解除事由に含まれています。
第17条(契約終了時の措置)
契約終了時の処理について規定しています。業務の中止、資料の返還、継続する義務の明確化などが含まれ、円滑な業務移行を可能にしています。特に、機密保持義務などの存続規定は実務上重要です。
第18条(損害賠償)
損害賠償の範囲と制限について規定しています。通常損害に限定し、不可抗力による損害は除外するなど、合理的な責任分担が図られています。シェアードサービスの性質上、過度な責任を負わせない配慮がなされています。
第19条(反社会的勢力の排除)
現在の商慣習において必須となっている反社会的勢力排除条項です。表明保証、関係発覚時の解除権、損害賠償請求権などが包括的に規定されており、コンプライアンス体制の構築に寄与しています。
第20条(表明保証)
契約締結時点での双方の状況について保証する条文です。締結権限の保有、必要手続きの履践、法令遵守、反社会的勢力との無関係などが表明保証され、契約の有効性と適正性を担保しています。
第21条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法を規定しています。誠意をもった協議による解決を優先し、紛争の早期解決を図る仕組みとなっています。
第22条(管轄裁判所)
万が一の紛争に備えた管轄裁判所の合意です。専属的合意管轄とすることで、紛争解決の迅速化と予測可能性の向上を図っています。当事者の所在地や業務実施地を考慮して管轄を決定することが一般的です。
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