【1】書式概要
この示談書は、コンクリート塀の老朽化による崩壊が原因で隣接する建物に損害を与えてしまった際に使用する専門的な書式です。近年、築年数の古い住宅地では塀の老朽化が深刻な問題となっており、台風や地震などの自然災害をきっかけに突然崩壊するケースが増加しています。
このような事故が発生した場合、被害者と加害者の間で損害の範囲や賠償金額について合意に達した内容を正式に文書化することが重要になります。口約束だけでは後々のトラブルの原因となりかねないため、きちんとした書面で取り決めを残しておく必要があります。
本書式は改正民法にも対応しており、建物の外壁損傷や窓ガラスの破損、雨樋の変形といった具体的な損害項目から、仮住居費用や調査費用などの付随的な損害まで網羅的に記載できる構成となっています。また、建物管理者賠償責任保険の適用についても詳細に定めており、保険会社との手続きもスムーズに進められます。
Word形式で提供されているため、お客様の状況に応じて自由に編集・カスタマイズが可能です。空欄部分に具体的な金額や日付、住所などを入力するだけで、すぐに使用できる実用的な書式となっています。
【2】条文タイトル
- 第1条(事故の概要)
- 第2条(物的損害の内容)
- 第3条(損害賠償の内容)
- 第4条(保険の適用)
- 第5条(示談金の支払)
- 第6条(再発防止)
- 第7条(示談の効力)
- 第8条(秘密保持)
- 第9条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(事故の概要)
この条文では事故の基本的な情報を整理します。発生日時と場所を正確に記録することで、後の保険手続きや必要に応じた証拠保全において重要な基礎資料となります。事故の態様については、コンクリート塀の老朽化という原因を明確にし、高さや長さなどの具体的な数値も記載します。これにより事故の規模や影響範囲を客観的に把握できるようになります。
第2条(物的損害の内容)
建物に生じた損害を詳細に列挙する条文です。外壁の損傷面積、破損した窓ガラスの枚数、雨樋の損傷範囲、門扉の変形状況など、修理や交換が必要な箇所を具体的に記載します。例えば「外壁の損傷(面積約15平方メートル)」「窓ガラスの破損(3枚)」といった形で数値化することで、後の修理費用の算定根拠が明確になります。
第3条(損害賠償の内容)
実際の賠償金額を体系的に整理した条文です。物的損害の修理費用だけでなく、事故により発生した付随的な費用も含めて計算します。仮住居費用は建物の修理期間中に別の場所に住む必要がある場合の宿泊費、調査費用は建築士による損害調査の報酬、引越費用は一時的な移転に伴う実費などが該当します。これらを合計した総額が最終的な賠償金額となります。
第4条(保険の適用)
建物管理者賠償責任保険の適用について定めた条文です。保険会社名、証券番号、保険期間などの基本情報を記載し、保険金による支払いが行われることを明確にします。これにより被害者は保険会社から確実に賠償を受けられることが保証され、加害者側も個人の資産から直接支払う必要がなくなります。
第5条(示談金の支払)
賠償金の支払い方法と期限を具体的に定めた条文です。支払期限を明確にすることで、被害者は安心して修理工事の手配を進められます。銀行振込による支払いとし、振込手数料は加害者負担とすることで、被害者が受け取る金額に不足が生じないよう配慮されています。
第6条(再発防止)
同様の事故を防ぐための具体的な措置を約束する条文です。所有する全てのコンクリート塀の安全性検査実施、必要に応じた補修や建替え、定期的な点検体制の構築などを義務付けます。これにより近隣住民の安全確保と、加害者の社会的責任履行を両立させることができます。
第7条(示談の効力)
示談成立により、本件事故に関する全ての請求権が消滅することを確認する条文です。被害者は示談書に定める以外の追加請求はできなくなり、双方にとって事故に関する紛争が完全に解決されたことを意味します。これにより将来的な蒸し返しを防ぎ、当事者双方が安心して日常生活を送れるようになります。
第8条(秘密保持)
示談内容の秘密保持について定めた条文です。近隣住民への配慮や当事者のプライバシー保護の観点から、示談内容を第三者に開示しないことを約束します。ただし、法令に基づく開示請求や保険金請求に必要な場合などの例外規定も設けており、必要な手続きに支障が生じないよう配慮されています。
第9条(協議事項)
示談書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法を定めた条文です。当事者双方が誠意をもって協議することを約束し、円満な解決を目指します。この規定により、細かな執行上の問題が発生しても、対立ではなく話し合いによる解決を促進することができます。
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