内部者取引管理規程

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内部者取引管理規程

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【1】書式概要

 

上場企業やそのグループ会社で働いていると、まだ世の中に公表されていない重要な情報に触れる機会があります。たとえば「来月、大型の企業買収を発表する」「今期の決算は予想より大幅に良い」といった情報です。こうした情報を知っている人が公表前にその会社の株を売買すると、インサイダー取引という違法行為になってしまいます。

 

この規程は、そうした事態を未然に防ぐために会社として定めるルールブックです。誰がどんな情報を管理するのか、社員はいつ株を買ってよくていつダメなのか、情報漏洩を防ぐにはどうすればいいのか。これらを明確にすることで、従業員が知らないうちに違法行為をしてしまうリスクを減らせます。

 

金融商品取引法では、上場会社に対してインサイダー取引を防止するための体制整備が求められています。しかし、いざ自社で規程を作ろうとすると、何を盛り込めばいいのか分からないという声も多く聞かれます。

 

この雛型は、重要事実の定義から情報管理責任者の設置、売買禁止期間の設定、事前申請制度まで、実際の運用に必要な項目を網羅しています。Word形式でご提供しますので、自社の組織体制に合わせて自由に編集・カスタマイズが可能です。

 

新規上場(IPO)の準備段階、子会社としてグループ内の内部統制を整備するとき、既存の規程を見直すタイミングなどにお使いいただけます。

 

 

【2】条文タイトル一覧(全12条+附則+別表)

 

第1章 総則

第1条(目的)

第2条(定義)

第2章 重要事実の管理

第3条(重要事実の伝達等の禁止)

第4条(情報管理責任者の選任)

第5条(情報管理責任者の職務)

第6条(重要事実等の報告)

第7条(プロジェクト参加者の遵守義務)

第8条(情報の公表)

第3章 株券等の売買等

第9条(売買等の禁止)

第10条(売買等の事前申請)

第4章 その他 第11条(教育)

第12条(所管および改廃)

附則 別表 重要事実と軽微基準

 

【3】逐条解説

 

第1条(目的)

この規程が何のために存在するのかを宣言する条文です。インサイダー取引の未然防止という目的を冒頭で明示することで、以下に続くルールすべてがこの目的に沿ったものであることを示しています。社内研修などでも「なぜこの規程があるのか」を説明する際の出発点になります。

 

第2条(定義) 規程内で使われる専門用語の意味を整理した条文です。「重要事実とは何か」「役職員の範囲はどこまでか」「公表とはどの時点を指すのか」など、解釈のブレが生じやすい言葉を定義しています。たとえば退職後1年以内の元社員も「役職員」に含まれる点は、意外と見落とされがちです。派遣社員やアルバイトも対象になることを明記しておくと、「自分は関係ない」という誤解を防げます。

 

第3条(重要事実の伝達等の禁止)

業務上知り得た重要情報をむやみに他人に話してはいけない、というルールです。飲み会で「うちの会社、来月すごい発表があるんだよね」とうっかり話してしまうケースや、家族に「今度大きな案件が決まりそう」と漏らしてしまうケースを想定しています。情報管理責任者の許可なく伝達することを禁じることで、情報漏洩の入口を塞ぎます。

 

第4条(情報管理責任者の選任)

インサイダー取引防止の司令塔となる責任者を置くことを定めた条文です。取締役会決議で選任するため、会社として正式に任命された役職であることが明確になります。実務上は総務部長や法務部長が兼任するケースが多いですが、専任を置く会社もあります。

 

第5条(情報管理責任者の職務)

選任された情報管理責任者が具体的に何をするのかを定めています。重要事実の管理、親会社への報告、役職員への指導助言という三つの柱が示されています。たとえば新入社員に対して「こういう情報を聞いたらすぐ報告してね」と指導するのも、この職務に含まれます。

 

第6条(重要事実等の報告)

社員が重要事実を知ったときの報告ルートを定めた条文です。「直ちに」という表現がポイントで、数日後ではなくその日のうちに報告することが求められます。たとえば取引先との打ち合わせで「御社との提携を発表します」と聞いた場合、会社に戻ったらすぐに情報管理責任者へ連絡する必要があります。

 

第7条(プロジェクト参加者の遵守義務)

M&Aや新規事業など、重要事実につながるプロジェクトに関わるメンバーへの特別ルールです。正式発表前の段階から関連情報を厳重に管理し、プロジェクト外の人には話さないことを義務付けています。コードネームを使ったり、資料を施錠保管したりといった運用が想定されます。

 

第8条(情報の公表)

重要事実をいつ、どのように公表するかを定めた条文です。「できる限り早期に」という原則を掲げつつ、公表時期の決定権限と実際に公表を行う部署を明確にしています。公表が遅れると、その間に情報が漏れてインサイダー取引が起きるリスクが高まるため、スピード感が重視されます。

 

第9条(売買等の禁止)

インサイダー取引そのものを禁止する中核的な条文です。重要事実を知った人だけでなく、その配偶者も売買禁止の対象になる点が特徴です。また、決算発表日とその前後の期間は、重要事実を知っているかどうかに関係なく一律で取引が禁止されます。「四半期決算の発表が近いから、今は株を買わないでおこう」という判断が必要になります。

 

第10条(売買等の事前申請)

親会社の株を売買したい場合の申請手続きを定めた条文です。申請書に売買の種類、数量、時期などを記載し、情報管理責任者の承認を受ける流れになります。承認には有効期間があり、その期間内であっても途中で重要事実を知ってしまったら取引できなくなります。「承認をもらったから大丈夫」と油断しないよう注意が必要です。

 

第11条(教育)

社員への教育・研修を義務付ける条文です。規程を作っただけでは意味がなく、その内容を全社員に周知徹底することが求められます。入社時研修での説明、年1回の全社研修、eラーニングの実施など、具体的な方法は各社の事情に合わせて決めることになります。

 

第12条(所管および改廃)

この規程を管理する部署と、変更する際の手続きを定めた条文です。所管部署を総務部とし、改廃には取締役会決議が必要としています。法改正があった場合や組織変更があった場合に、誰がどのように規程を見直すのかが明確になります。

 

 

【4】FAQ

 

Q1. この規程はどのような会社に必要ですか?

上場企業およびその子会社・関連会社に必要です。また、IPO(新規上場)を目指している会社も、上場準備の段階でこうした規程を整備しておくことが求められます。

 

Q2. 正社員以外も対象になりますか?

 はい。契約社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイトも対象です。さらに退職後1年以内の元社員も規程の適用を受けます。

 

Q3. 家族が株を買う場合はどうなりますか?

配偶者は本人と同様に売買禁止の対象となります。また、家族名義であっても実質的に本人の判断で行う取引は規制対象です。

 

Q4. 決算発表の前後はなぜ取引できないのですか?

決算情報は株価に大きな影響を与える重要事実です。発表前後は社内に未公表情報が存在する可能性が高いため、一律で取引を禁止することでリスクを回避しています。

 

Q5. 情報管理責任者は誰がなるべきですか?

総務部長、法務部長、経営企画部長などが兼任するケースが多いです。重要事実に接する機会が多く、かつ社内での調整力がある役職者が適任です。

 

Q6. 承認をもらった後に重要事実を知ったらどうなりますか?

承認の有効期間内であっても、途中で重要事実を知った場合は取引できなくなります。すでに注文を出していた場合は取り消す必要があります。

 

Q7. この規程に違反するとどうなりますか?

社内処分の対象となるほか、金融商品取引法違反として刑事罰(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)が科される可能性があります。会社にも課徴金が課されることがあります。

 

Q8. 別表の「軽微基準」とは何ですか?

すべての事実がインサイダー取引規制の対象になるわけではなく、影響が小さいものは除外されます。その基準を定めたものが軽微基準です。たとえば一定金額以下の資産譲渡などが該当します。

 

 

【5】活用アドバイス

 

この雛型を効果的に使うためのポイントをいくつかご紹介します。

 

まず、自社の組織体制に合わせてカスタマイズしてください。雛型では「総務部」「総務人事部」などの部署名が入っていますが、御社の実際の組織名に置き換える必要があります。また、親会社・子会社の関係も会社によって異なりますので、グループ構成に応じて修正してください。

 

次に、別表の「重要事実と軽微基準」は必ず最新の法令に基づいて作成してください。金融商品取引法は改正されることがありますので、導入時と定期的な見直し時に確認することをお勧めします。

 

申請書の様式も別途用意する必要があります。第10条で定める事前申請の具体的なフォーマットは、この規程とセットで整備してください。

 

規程を制定したら、必ず全役職員への周知を行ってください。社内イントラへの掲載、研修の実施、入社時の説明など、複数のチャネルで繰り返し伝えることが大切です。

 

最後に、実際の運用状況を定期的にチェックしてください。申請件数の推移、違反事例の有無、問い合わせ内容などを分析し、必要に応じて規程の見直しにつなげることで、実効性のある運用が可能になります。

 

 

【6】この文書を利用するメリット

 

この雛型を活用することで、いくつかの大きなメリットが得られます。

 

一つ目は、専門家に依頼するコストを大幅に削減できることです。弁護士に一から規程を作成してもらうと数十万円かかることも珍しくありませんが、この雛型をベースにすれば、必要な部分だけを専門家にチェックしてもらう形で済みます。

 

二つ目は、作成にかかる時間を短縮できることです。ゼロから条文を考えるのは大変な作業ですが、雛型があれば自社に合わせた修正だけで済むため、数週間かかる作業を数日に圧縮できます。

 

三つ目は、必要な項目の漏れを防げることです。この雛型は実務で必要とされる項目を網羅していますので、「あの条文を入れ忘れた」という事態を避けられます。

 

四つ目は、すぐに編集できる形式であることです。Word形式でご提供しますので、特別なソフトは不要です。自社の状況に合わせて部署名を変えたり、条文を追加・削除したりすることが簡単にできます。

 

五つ目は、上場審査や監査への対応がスムーズになることです。IPO準備中の会社であれば、主幹事証券会社や監査法人から内部管理体制の整備状況を確認されます。この規程を整備しておくことで、体制が整っていることを示す材料になります。

 

 

 

 

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