【1】書式概要
この書式は、賃貸不動産のオーナーと借り主が、お互いの合意によって賃貸契約を終了し、物件を明け渡す際に使用する契約書です。通常の賃貸契約の満了とは異なり、契約期間の途中であっても双方が納得した条件で円満に契約を解決したい場合に活用します。
賃貸経営を行っていると、建物の老朽化による建て替え、土地の売却、相続による処分など、やむを得ない事情で入居者に退去をお願いしなければならない状況が発生します。また、借り主側も転勤や家族構成の変化などで、契約期間中に退去したいケースがあります。このような時に、トラブルを避けて双方が納得できる形で解決するための書式となっています。
特に重要なのは、立退料の支払い条件や明け渡し期日、未払い賃料の処理方法などが明確に定められている点です。Word形式で作成されているため、パソコンで簡単に編集でき、具体的な金額や日付、物件情報を入力するだけで、すぐに使用できます。専門的な知識がなくても、必要な箇所を埋めていくだけで適切な契約書が完成します。
不動産管理会社、個人の大家さん、賃貸仲介業者の方々にとって、入居者との円滑な関係を維持しながら問題を解決するための実用的なツールとして活用いただけます。
【2】条文タイトル
第1条(賃貸借契約の合意解除) 第2条(明渡し) 第3条(立退料) 第4条(未払賃料の支払) 第5条(損害金) 第6条(残置動産の処分) 第7条(協議事項) 第8条(合意管轄)
【3】逐条解説
第1条(賃貸借契約の合意解除)
この条文では、賃貸契約を双方の合意により終了させることを定めています。単純な契約解除とは異なり、オーナーと入居者の両方が納得した上での解決であることを明確にしています。物件の詳細情報(所在地、家屋番号、構造など)と元の賃貸契約の内容(契約日、期間、家賃)を具体的に記載することで、対象となる契約を特定します。例えば、マンションの一室であれば「○○市○区○町1-2-3、○○マンション101号室」といった具合に詳細を記載します。
第2条(明渡し)
物件の引き渡し方法について規定しています。通常の賃貸契約終了時に求められる原状回復義務を免除することが特徴的です。これは立退料を支払う代わりに、入居者の負担を軽減する配慮となっています。現状のまま引き渡せばよいため、壁紙の張り替えやクリーニング費用などを入居者が負担する必要がありません。ただし、故意による損傷がある場合は別途協議が必要になることもあります。
第3条(立退料)
オーナーが入居者に支払う補償金について定めています。立退料の金額は物件の立地、入居期間、引っ越し費用、近隣物件の家賃相場などを考慮して決定されます。例えば、ファミリー向けマンションであれば引っ越し費用として50万円程度、単身者向けアパートであれば20-30万円程度が一般的な相場となっています。この金額は地域や物件の条件によって大きく変動するため、事前の十分な話し合いが重要です。
第4条(未払賃料の支払)
入居者が滞納している家賃の処理方法を定めています。立退料とは別に、未払い分は支払い義務があることを明確にしています。振込先の詳細情報を記載し、支払い期限を設定することで、後々のトラブルを防げます。例えば、3ヶ月分の家賃が未払いの場合、立退料から差し引くのではなく、別途支払いを求めることが一般的です。
第5条(損害金)
約束した期日までに退去しなかった場合のペナルティを定めています。通常の家賃よりも高額に設定されることが多く、確実な履行を促す効果があります。日割り計算の規定により、1日でも遅れた場合に適用されます。例えば、月額10万円の賃料物件で15万円の損害金を設定した場合、1日遅れるごとに5000円の追加負担が発生します。
第6条(残置動産の処分)
退去後に残された家具や荷物の扱いについて規定しています。入居者が所有権を放棄することで、オーナーが自由に処分できるようになります。処分費用は入居者負担となるため、できるだけ荷物を残さないよう事前に整理することが重要です。大型家具や家電製品の処分には数万円かかることもあるため、退去前に十分な準備期間を設けることが望ましいです。
第7条(協議事項)
契約書に記載されていない問題が発生した場合の対応方法を定めています。双方の話し合いによる解決を基本とすることで、柔軟な対応が可能になります。例えば、退去時に予期しない設備の不具合が発見された場合や、近隣住民とのトラブルが生じた場合などに適用されます。
第8条(合意管轄)
万が一裁判になった場合の裁判所を指定しています。物件所在地を管轄する地方裁判所を指定することが一般的です。これにより、どちらか一方が遠方に転居した後でも、適切な裁判所で解決できます。東京都内の物件であれば東京地方裁判所、大阪府内であれば大阪地方裁判所といった具合に設定します。
【4】活用アドバイス
この契約書を効率的に活用するためには、まず双方が十分に話し合いを行い、お互いの事情を理解した上で具体的な条件を決めることが重要です。立退料の金額については、近隣の同様物件の相場や引っ越し費用の実情を調べてから設定しましょう。
契約書の記入時には、物件情報や日付、金額などの数字を間違いなく記載することが大切です。特に口座情報や物件の住所は、一文字でも間違えると大きなトラブルに発展する可能性があります。記入後は必ず双方で内容を確認し、疑問点があれば遠慮なく質問することをお勧めします。
また、この契約書は退去に関する合意を文書化するものですが、実際の引っ越し作業や鍵の受け渡しなどの詳細な段取りについては、別途打ち合わせを行うことが効果的です。退去日の立ち会いスケジュールや清掃の範囲なども事前に決めておくと、当日の作業がスムーズに進みます。
【5】メリット
この契約書を利用する最大のメリットは、賃貸に関するトラブルを未然に防げることです。口約束だけでは後から「言った」「言わない」の問題が発生しがちですが、書面で合意内容を残すことで、双方が安心して手続きを進められます。
オーナー側にとっては、立退料の支払いと引き換えに確実に物件を回収できる点が大きな利点です。通常の明け渡し請求では時間がかかることが多いですが、この方法なら比較的短期間で解決できます。また、原状回復義務を免除することで、入居者との関係を良好に保ちながら契約を終了できます。
入居者側のメリットとしては、立退料を受け取れることに加え、原状回復の費用負担がないことが挙げられます。通常であれば退去時にクリーニング代や修繕費を請求されることが多いですが、この契約では現状のまま引き渡せば済みます。引っ越し費用の一部を立退料で賄えるため、経済的な負担も軽減されます。
さらに、Word形式で編集可能なため、専門家に依頼することなく、必要に応じて内容をカスタマイズできる点も実用的です。時間とコストの節約につながり、迅速な問題解決が可能になります。
|