【1】書式概要
この示談契約書は、故意による身体接触で傷害を負わせた事件について、当事者間で円満に解決するための書式です。近年社会問題となっている「ぶつかりおじさん」のような迷惑行為による被害を受けた際に、警察や裁判所を通さずに民事的な解決を図りたい場合に活用できます。
電車内や駅構内、商業施設などで故意にぶつかられて怪我をした場合、加害者との間で治療費や慰謝料の支払いについて合意に達したときに使用します。この書式には被害者が実際に負担した治療費だけでなく、精神的な苦痛に対する慰謝料、仕事を休まざるを得なかった場合の休業損害、通院のための交通費なども含めて請求できる項目が網羅されています。
また、加害者による謝罪の受け入れ、今後同様の行為を行わない旨の誓約、契約内容の守秘義務なども盛り込まれており、双方にとって納得のいく解決が期待できる内容となっています。万が一支払いが滞った場合の遅延損害金や、契約違反があった場合の違約金についても明記されているため、合意後のトラブルも防げます。
Word形式で作成されているため、パソコンで簡単に編集でき、当事者の情報や金額、日付などを入力するだけですぐに使用できます。個人での使用はもちろん、専門家の方が顧客対応の際に活用することも可能です。
【2】条文タイトル
第1条(事件の確認) 第2条(謝罪) 第3条(治療費の支払い) 第4条(慰謝料の支払い) 第5条(休業損害の支払い) 第6条(交通費の支払い) 第7条(その他損害の支払い) 第8条(損害賠償額の合計) 第9条(支払方法) 第10条(期限の利益の喪失) 第11条(遅延損害金) 第12条(再発防止の誓約) 第13条(清算条項) 第14条(守秘義務) 第15条(契約違反に対する措置) 第16条(管轄裁判所) 第17条(その他)
【3】逐条解説
第1条(事件の確認)
この条項では、加害者が故意に被害者の身体に接触して傷害を負わせた事実を明確に認めさせる内容になっています。発生日時、場所、行為の内容、負った傷害の程度を具体的に記載することで、後々「そんなことはしていない」といった言い逃れを防ぐ効果があります。例えば「令和6年3月15日午後7時30分頃、JR新宿駅構内において、右肩を故意に押す暴行を加え、右肩打撲の傷害を負わせた」といったように詳細に記録します。
第2条(謝罪)
加害者による謝罪とその受け入れを明文化した条項です。単純に見えますが、この謝罪の記載があることで加害者が自らの非を認めたという証拠になります。被害者の心情的な部分にも配慮した内容で、精神的な回復にも寄与する重要な要素です。
第3条(治療費の支払い)
実際にかかった医療費の支払いについて定めています。通院期間と医療機関名を明記することで、治療の実態を証明できます。領収書や診断書と照合できるよう具体的に記載することが大切です。整形外科での初診料から通院終了まで、すべての医療費が対象となります。
第4条(慰謝料の支払い)
身体的な痛みだけでなく、恐怖感や不安感といった精神的な苦痛に対する賠償です。傷害の程度や治療期間の長短によって金額は変わりますが、被害者が受けた心の傷に対する対価として支払われます。日常生活への影響度合いも考慮要素の一つになります。
第5条(休業損害の支払い)
怪我のため仕事を休まざるを得なかった場合の収入減少分を補償する条項です。会社員であれば日給計算、自営業者であれば営業損失として算出されることが一般的です。有給休暇を使って通院した場合でも、本来であれば別の用途で使えたはずの有給を消費したとして請求できる場合もあります。
第6条(交通費の支払い)
通院のために要した交通費の実費を請求する条項です。電車代、バス代、タクシー代のほか、自家用車を使用した場合のガソリン代や駐車場代も含まれます。領収書の保管が重要で、通院回数分の往復交通費が対象となります。
第7条(その他損害の支払い)
前各条で網羅しきれない損害を請求するための条項です。例えば、怪我により破損した衣服の修理代や買い替え費用、付添人の交通費、介護費用などが該当します。柔軟な対応を可能にする包括的な規定として機能します。
第8条(損害賠償額の合計)
各項目の金額を合算した総支払額を明示する条項です。計算間違いを防ぎ、支払総額を明確にすることで後のトラブルを回避できます。内訳が分かることで、双方が納得しやすい構造になっています。
第9条(支払方法)
具体的な支払い方法と期限を定めた条項です。銀行振込が一般的で、振込手数料は加害者負担とするのが通例です。口座情報を詳細に記載することで、支払いの確実性を高めています。支払期限も明確に設定することが重要です。
第10条(期限の利益の喪失)
支払いが滞った場合に、分割払いの権利を失わせる条項です。これにより支払い遅延に対する抑制効果が期待できます。一度でも支払いが遅れれば、残額すべてを一括で支払わなければならなくなる厳しい内容です。
第11条(遅延損害金)
支払いが遅れた場合の遅延利息について定めています。年14.6パーセントという利率は民事上の遅延損害金として適正な水準です。支払いの翌日から完済まで日割り計算で加算されるため、早期支払いを促す効果があります。
第12条(再発防止の誓約)
加害者に対して同様の行為を今後行わないことを約束させる条項です。被害者だけでなく第三者に対しても同じ行為をしないことを誓約させることで、社会的な再犯防止効果も期待できます。
第13条(清算条項)
この契約で定めた内容以外には、当事者間に債権債務関係が存在しないことを確認する条項です。これにより、後から追加請求される心配がなくなります。示談成立後の蒸し返しを防ぐ重要な規定です。
第14条(守秘義務)
契約内容や事件の詳細を第三者に漏らさない義務を定めています。ただし、必要な場合の開示は認めており、バランスの取れた内容になっています。プライバシー保護の観点から重要な条項です。
第15条(契約違反に対する措置)
契約違反があった場合の対応を定めた条項です。契約解除権と100万円の違約金請求権を設けることで、契約履行を担保しています。さらなる損害賠償請求も可能としており、抑制効果は十分です。
第16条(管轄裁判所)
万が一紛争が生じた場合の裁判所を予め決めておく条項です。被害者の住所地を管轄する裁判所とすることで、被害者にとって利便性の高い解決が図れます。
第17条(その他)
契約の変更方法、一部無効の場合の取り扱い、準拠法について定めた条項です。書面による合意を要求することで、口約束による変更を防いでいます。日本法に準拠することも明記されており、安定した運用が期待できます。
|