【1】書式概要
毎年10月を過ぎると、神社の社務所には「巫女さんを募集したいのだけど、どんな書類を準備すればいいの?」という問い合わせが増えはじめます。年末年始の初詣シーズンに向けて、短期のアルバイトを受け入れる神社にとって、雇用に関する書類の整備は年中行事のひとつといえるかもしれません。
このセットは、そんな神社の担当者さんのために作った「巫女アルバイト雇用契約書」と「SNS利用に関する誓約書」の2点セットです。さらにアルバイト本人が手元で確認できる「SNSガイドライン早見表」も別紙として付属しています。
雇用契約書には、業務内容や時給・給与支払日といった基本的な労働条件に加え、装束の身だしなみ規定(髪色・ネイル・アクセサリー禁止など)や貸与した装束を汚損した際の扱い、繁忙期における欠勤への対応まで盛り込みました。未成年者を雇用する場合の保護者同意欄もそのまま使えます。
SNS誓約書は、近年とくに神社が頭を悩ませている「装束姿の無断投稿」問題に対応した書式です。禁止事項を明確に列挙したうえで、違反した場合は雇用契約を即時解除できること、損害賠償を請求できることも明記しています。契約終了後も誓約の効力が続く設計になっているため、辞めた後の投稿トラブルにも備えられます。
Word形式なので、神社名・時給・勤務時間などを書き換えるだけで、そのまま印刷して使えます。法律の知識がなくても扱えるよう、できるだけ平易な言葉で書いてあります。
【2】条文タイトル
■ 巫女アルバイト雇用契約書
第1条(業務の内容) 第2条(服装・身だしなみ) 第3条(装束の貸与・取扱い) 第4条(遅刻・欠勤) 第5条(秘密保持) 第6条(SNS・写真動画の投稿制限) 第7条(ハラスメント防止) 第8条(契約の終了) 第9条(準拠法・管轄裁判所)
■ SNS利用に関する誓約書
第1条(装束姿の無断投稿禁止) 第2条(神社内部情報の投稿禁止) 第3条(誤解を招く発信の禁止) 第4条(個人アカウントでの言及) 第5条(違反時の対応) 第6条(誓約の有効期間) 第7条(既存投稿の取扱い)
【3】逐条解説
■ 巫女アルバイト雇用契約書
第1条(業務の内容)
お守りやおみくじの頒布、参拝者の案内、巫女舞の奉奏など、巫女の仕事は意外と多岐にわたります。「言った・言わなかった」のトラブルを防ぐために、業務の範囲を最初に明確にしておくことがこの条文の目的です。「その他神社業務補助」という包括的な文言も入れてあるため、当日の急な対応にも対処しやすくなっています。
第2条(服装・身だしなみ)
神社という場の性格上、巫女の外見は参拝者に直接伝わる印象の一部です。この条文では、髪色・ネイル・アクセサリー・香水・メイクについて具体的に規定しています。「ネイルはダメ」と口頭で伝えるだけでは、人によって解釈が変わります。書面に明記しておくことで、採用後のトラブルをぐっと減らせます。とくにネイル禁止は、お守りを手渡しする際のお客様への印象にも関わるため、実務上も重要な規定です。
第3条(装束の貸与・取扱い)
巫女装束は白衣と緋袴がセットで数万円以上するものも珍しくありません。貸与した装束に食べこぼしや経血などの汚損が生じた場合、誰がどこまで負担するのかを事前に決めておくための条文です。故意または重大な過失がある場合に弁償を求めることができる設計にしているため、過剰な萎縮を招かずに済みます。
第4条(遅刻・欠勤)
元日の朝5時から巫女が一人も来ない、というのは神社にとって深刻な問題です。この条文では無断欠勤が続いた場合の即時解除を認めるとともに、繁忙期における急な欠勤への注意を明示しています。「体調不良でどうしても休みたい」という場合でも、事前連絡を促す文言を入れることで、無連絡のまま来ない事態を防ぎやすくなっています。
第5条(秘密保持)
業務中に知り得た情報、たとえば「有名人が参拝に来た」「今年のお賽銭はいくらだった」といった情報は、口外されると神社の信頼を傷つけます。この条文は契約終了後も効力が続く設計になっており、辞めた後のSNS投稿にも対応しています。
第6条(SNS・写真動画の投稿制限)
この条文は、詳細を別紙のSNS誓約書に委ねる橋渡し役の条文です。雇用契約書の中にSNS誓約書の存在を位置づけることで、「誓約書はもらっていない」という言い訳を封じる効果があります。両書類が一体のものであることを明確にしています。
第7条(ハラスメント防止)
巫女アルバイトは若い女性が多く、参拝者から不当な言動を受けるケースもゼロではありません。神社側が「適切な措置を講じる」義務を明示しておくことで、アルバイトが安心して働ける環境を整える姿勢を示せます。採用時の安心感にもつながります。
第8条(契約の終了)
期間満了が基本ですが、途中での解約についても規定しています。繁忙期における一方的な中途解約を「やむを得ない事由がある場合に限る」としているのが特徴です。完全に禁止するのは労働基準法上問題がありますが、抑止力として機能する文言を盛り込んでいます。
第9条(準拠法・管轄裁判所)
万が一、給与の未払いや損害賠償をめぐる紛争になった場合に、どの裁判所で争うかを決めておく条文です。神社の所在地を管轄裁判所としているため、遠方からの応募者とのトラブルでも地元で対応できます。
■ SNS利用に関する誓約書
第1条(装束姿の無断投稿禁止)
これがこの誓約書の核心部分です。「巫女コスプレ」感覚でTikTokやInstagramに投稿するケースが実際に増えており、神社の品位を傷つけるとして問題視されています。どのSNSプラットフォームを対象とするかも具体的に列挙しているため、「このアプリは書いてなかった」という言い逃れを防げます。
第2条(神社内部情報の投稿禁止)
5つの禁止対象を列挙しています。なかでも「他の巫女・神職の顔・個人情報」は盲点になりがちです。職場の仲間と一緒に撮った写真を悪気なく投稿してしまうケースは多く、本人が拒否できない状況で撮影・投稿されることもあります。この条文があることで、被写体となった他のスタッフの権利も守れます。
第3条(誤解を招く発信の禁止)
「神社のバイトって暇だよ」「神職の人めちゃくちゃ怒る」といった個人の感想がSNSに拡散して炎上するケースは珍しくありません。神道・宗教への批判的な発信も含めて禁止することで、神社の対外的な信頼を守ります。
第4条(個人アカウントでの言及)
完全に禁止するのではなく、神社の承認を得た場合に限り認めるという現実的なルールにしています。宣伝効果も期待できるため、柔軟な運用ができます。「どうしても書きたい」というアルバイトには、神社の確認を取るよう習慣づけられます。
第5条(違反時の対応)
削除要求・即時解除・損害賠償請求の3段階を明示しています。「投稿を削除しない場合はプラットフォームへの通報も行う」という一文は、抑止力として非常に有効です。実際にプラットフォームへの通報で削除が認められた事例もあるため、絵空事ではありません。
第6条(誓約の有効期間)
「辞めてからは関係ない」とならないよう、契約終了後も誓約の効力が続くことを明記しています。辞めた翌日に「在職中はバレないから我慢してたけど…」という投稿をされるリスクを抑えます。
第7条(既存投稿の取扱い)
誓約書を締結する前にすでに関連投稿をしているケースも想定しています。申告制にしたうえで、神社から削除要求があれば従う義務を定めています。後から発覚したときのための根拠条文にもなります。
【4】FAQ
Q. 巫女アルバイトを毎年雇っているが、今まで契約書を使っていなかった。今からでも使えますか?
A. はい、今年から導入するだけで十分効果があります。「今まで大丈夫だったから」という発想がいちばん危ないのが雇用トラブルです。一度もめると精神的・経済的なコストは書類作成の何十倍にもなります。今年の募集から使いはじめることをおすすめします。
Q. 未成年の巫女を雇う場合、保護者の同意は必ずとる必要がありますか?
A. 労働基準法上、未成年者を雇用する際は保護者(親権者)の同意が必要です。このセットには保護者同意欄を設けているので、別途同意書を用意する手間が省けます。同意欄への署名をもって、保護者が雇用条件を確認したことの証拠にもなります。
Q. SNS誓約書は雇用契約書とは別に署名させる必要がありますか?
A. はい、別書類として署名をとることが大切です。雇用契約書の中で「別途誓約書に従う」と定めることで両書類が連動しますが、誓約書単体で効力を持たせるためにも、個別に署名・捺印をもらっておいてください。
Q. すでにSNSに巫女姿の写真を投稿してしまっているアルバイトはどうすればいいですか?
A. SNS誓約書の第7条に「締結前の既存投稿について申告するよう求め、神社から削除要求があれば従う義務を定める」条文があります。まず申告させ、神社として問題があると判断した投稿については削除を求めてください。拒否する場合はプラットフォームへの通報という手段もあります。
Q. キャンセルや急な欠勤があった場合、損害賠償は請求できますか?
A. 雇用契約上、従業員への損害賠償請求は一般的に難しく、金額も限定的です。この契約書は損害賠償を主な目的とするのではなく、「書類がある」というプレッシャーで無断欠勤を抑止することに主眼を置いています。繁忙期の中途解約については「やむを得ない事由がある場合に限る」としており、抑止効果が期待できます。
Q. Word以外の形式で使えますか?
A. Word形式のファイルなので、GoogleドキュメントやPagesでも開くことができます。ただし、フォントや書式が一部崩れる場合があります。最終的にはWordで編集・確認してから印刷されることをおすすめします。
【5】活用アドバイス
▶ 募集要項と一緒に渡す
巫女の募集をかける際、応募用紙と一緒にこのセットの雛形(神社名・時給等を入力済みのもの)を事前に配布または送付しておくと、採用決定後の手続きがスムーズになります。「こういう約束事があります」と最初に見せておくことで、入職後のギャップも減らせます。
▶ SNSガイドライン早見表は手元に持たせる
別紙のSNSガイドライン早見表は、A5サイズに縮小印刷して各自に配布するのが実用的です。「迷ったら見る」というカードとして持ち歩いてもらうことで、書類を渡しただけで終わらない運用が実現します。
▶ 毎年同じファイルを使い回す
神社名・担当者名・連絡先・時給などをあらかじめ入力した「マスターファイル」を一つ作っておけば、毎年は勤務期間と氏名を書き換えるだけで済みます。Wordのファイル管理を年ごとにフォルダ分けしておくと、過去の契約内容も確認しやすくなります。
▶ 署名は必ず自署でもらう
スタンプや代筆ではなく、本人の自署をもらうことで「署名した覚えがない」という言い逃れを防げます。未成年者の場合は保護者署名も忘れずに。署名済みの書類はスマホで撮影してクラウドに保存しておくと、紛失リスクに備えられます。
▶ 身だしなみ規定は採用面接時にも説明する
第2条の身だしなみ規定(ネイル禁止・髪色制限等)は、書類を渡すだけでなく、採用面接の時点で口頭でも説明しておくと親切です。「知らなかった」という声を減らすことが、初日からの信頼関係につながります。
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