この条文が非常に重要で、委任者の判断能力が低下しても契約の効力が続くことを明記しています。通常の委任契約は本人の判断能力喪失で終了しますが、この特約により、認知症になった後も財産管理を継続できます。これが任意後見契約との大きな違いです。
【4】活用アドバイス
この契約書を使う際は、まず「代理権目録」の内容を自分の状況に合わせてカスタマイズすることが大切です。すべての項目が必要とは限りませんので、実際に任せたい内容だけを残すようにしましょう。例えば不動産を所有していない方は不動産関連の項目を削除できます。
契約の発効時期は慎重に検討してください。すぐに始める必要があるのか、将来に備えた準備なのかによって選択が変わります。将来発効型にする場合は、発効条件をできるだけ明確に記載することで、後々のトラブルを防げます。
報酬額の設定も重要なポイントです。専門家に依頼する場合は市場相場を参考にし、家族に依頼する場合でも適正な報酬を設定することで、長期的に良好な関係を維持できます。無報酬にすると、かえって受任者の負担になることもあります。
定期報告の頻度と報告先も実情に合わせて設定しましょう。3ヶ月ごと、6ヶ月ごとなど、業務の複雑さに応じて調整できます。第三者への報告を設定しておくと、不正防止や透明性確保に役立ちます。
公証役場で公正証書にすることを強くお勧めします。特に第12条の「意思能力喪失後も効力が続く」という部分は、公正証書にすることで金融機関などの第三者に対しても証明力が高まります。
【5】この文書を利用するメリット
自分の判断能力がしっかりしているうちに、信頼できる人に財産管理を任せる準備ができます。認知症や病気になってから慌てて対策を考えるのではなく、余裕を持って備えられる点が大きな利点です。家族に迷惑をかけたくないという思いを具体的な形にできます。
成年後見制度と違い、家庭裁判所の手続きが不要なため、費用も時間も大幅に節約できます。後見制度では裁判所への定期報告や許可申請が必要ですが、この契約では当事者間で柔軟に運用できます。また、後見人には親族が選ばれない場合もありますが、この契約では自分で相手を選べます。
契約内容を自由に設定できるため、自分のニーズに合わせたオーダーメイドの財産管理が実現します。任せる範囲、報酬、報告の頻度など、すべて話し合いで決められます。生活スタイルや財産の内容は人それぞれですから、この柔軟性は大きな魅力です。
受任者にとっても、明確な権限と責任の範囲が書面で定められているため、安心して業務に取り組めます。後から「そんなことまで頼んだ覚えはない」といったトラブルを防げますし、第三者(銀行など)に対しても正当な代理人であることを証明できます。
将来の任意後見契約へスムーズに移行できる橋渡しとしても機能します。判断能力がある間はこの契約で対応し、本格的に判断能力が低下したら任意後見に切り替えるという二段階の対策が可能です。