【1】書式概要
この無償による精子提供契約書は、個人間の精子提供に関する法的枠組みを明確にするための包括的な雛型です。この文書では、提供者と受領者の権利と義務、親権の放棄、秘密保持、医療機関との関係、情報提供の範囲など、精子提供に関わる重要な事項を詳細に規定しています。
生殖補助医療を希望する方々が安心して精子提供を受けられるよう、法的リスクを最小限に抑えつつ、当事者双方の意思を明確に文書化することができます。この契約書雛型は、専門家の監修のもと作成されており、必要に応じて当事者の状況に合わせてカスタマイズすることが可能です。
個人間での精子提供を検討されている方々にとって、法的トラブルを未然に防ぎ、将来的な親子関係や責任の所在を明確にするための重要な一歩となるでしょう。
適宜ご編集の上でご利用いただければと存じます。2024年4月1日施行の改正民法対応版です。
〔条文タイトル〕
第1条(当事者)
第2条(目的)
第3条(精子の提供)
第4条(提供者の表明保証)
第5条(受領者の表明保証)
第6条(親権および扶養義務の放棄)
第7条(受領者の権利および義務)
第8条(連絡体制)
第9条(医療機関との関係)
第10条(精子の使用制限)
第11条(秘密保持)
第12条(情報提供)
第13条(遺伝情報の取扱い)
第14条(責任制限)
第15条(当該子との接触)
第16条(契約の変更)
第17条(契約解除)
第18条(紛争解決)
第19条(準拠法)
第20条(その他)
【2】逐条解説
第1条(当事者)
この条項では契約の当事者である「提供者」と「受領者」を特定します。両者の氏名、住所、生年月日を明記することで、契約の主体を明確に特定します。法的拘束力を持たせるために、正確な個人情報の記載が必要です。
第2条(目的)
契約の目的を明示する条項です。無償での精子提供と、その精子を生殖補助医療に使用することが本契約の目的であることを明確にします。また「当該子」の定義を設け、以降の条文で使用する重要な用語を明確にしています。
第3条(精子の提供)
精子提供の具体的な方法や条件を規定しています。提供の回数や時期、必要な医学的検査について詳細に定め、提供者が対価を請求しないことを明確にしています。特に感染症検査や遺伝子検査など、医療上必要な検査の受診義務と結果開示の同意を含むことで、受領者の安全を確保しています。
第4条(提供者の表明保証)
提供者側の表明と保証事項を列挙しています。健康状態や遺伝性疾患の情報開示、判断能力、成年であること、過去の精子提供歴の開示など、提供者が契約締結時点で真実であると保証する事項を明示しています。これにより受領者は提供者の適格性を判断できます。
第5条(受領者の表明保証)
受領者側の表明と保証事項を規定しています。提供された精子の使用目的の限定、リスクの理解、医療プロセスについての説明を受けていることなどを保証させることで、提供者の意図に反した使用を防止しています。
第6条(親権および扶養義務の放棄)
提供者が生まれてくる子に対して法的な親子関係を主張しないこと、親権や扶養義務を放棄することを明確にする重要な条項です。相続権の放棄や、親子関係確認の訴訟に対する不争条項も含まれており、将来の法的トラブルを防止するための核心的な規定となっています。
第7条(受領者の権利および義務)
受領者が当該子の法的な親権者としての全ての権利と義務を持つことを明確にします。提供者への経済的支援の要求禁止や、当該子への提供者の存在の説明に関する決定権など、受領者の権利と責任の範囲を定めています。
第8条(連絡体制)
当事者間の連絡方法や連絡先変更時の通知義務、緊急時の連絡方法についての取り決めを規定しています。長期にわたる契約関係において、適切な連絡体制を維持するための条項です。
第9条(医療機関との関係)
精子提供と生殖補助医療が適切な医療機関を通じて行われることを定め、医療機関の規則や指示に従う義務を明示しています。精子の保存に関する事項も医療機関の規定に従うことを明確にしています。
第10条(精子の使用制限)
提供された精子の使用目的を制限し、第三者への提供や商業利用、研究目的での使用を禁止しています。また妊娠が成立しなかった場合の再提供の可能性についても言及していますが、提供者にその義務はないことを明確にしています。
第11条(秘密保持)
契約内容や精子提供の事実に関する秘密保持義務を定めています。同時に、当該子への情報開示や医療上の必要性がある場合などの例外事項も明記し、柔軟性を持たせています。この義務は契約終了後も継続することを明確にしています。
第12条(情報提供)
提供者の健康状態や遺伝性疾患に関する情報提供義務と、受領者の当該子に関する情報提供の自由裁量を規定しています。特に医療上重要となる遺伝情報の共有について取り決めています。
第13条(遺伝情報の取扱い)
提供者の遺伝情報の取扱いについて規定しています。遺伝情報が当該子に伝達される可能性の了承や、プライバシー保護の観点からの配慮、医療上必要な場合の情報提供義務などを定めています。
第14条(責任制限)
提供者の責任範囲を限定する条項です。当該子の健康状態や発育状況、生殖補助医療の成否、受領者の健康上の問題について責任を負わないことを明確にしています。受領者がリスクを理解し承諾することも明示しています。
第15条(当該子との接触)
提供者と当該子との将来的な接触に関する取り決めです。原則として接触を求めないことを基本としつつ、当該子が成年後に接触を希望した場合の対応や、接触の方法・範囲について協議する余地を残しています。
第16条(契約の変更)
契約変更には当事者双方の書面による合意が必要であることを定めています。社会状況や法令変更による契約変更の必要性が生じた場合の協議義務も規定しています。
第17条(契約解除)
契約違反や表明保証違反などによる契約解除の条件を明示しています。また精子提供後に契約が解除された場合の精子の取扱いについての協議義務も定めています。
第18条(紛争解決)
紛争発生時の解決手順を段階的に定めています。まず誠実協議、次に調停やADR、最後に裁判所による解決という流れを規定し、管轄裁判所も明示しています。
第19条(準拠法)
契約の解釈と適用に日本法が適用されることを明確にしています。これにより契約に関する法的判断の基準を明確にしています。
第20条(その他)
未規定事項や解釈に疑義が生じた場合の協議義務、一部無効の場合でも他の条項は影響を受けないという分離可能性条項を定めています。これにより契約全体の安定性を確保しています。