【1】書式概要
この契約書は、企業が弁護士や法律事務所と顧問契約を結ぶ際に使用する書式です。会社を経営していると、取引先とのトラブル、従業員との労働問題、契約書のチェック、新規事業の法令確認など、さまざまな場面で専門家のアドバイスが必要になります。そんなとき、いちいち弁護士を探して依頼するのではなく、月々決まった料金で気軽に相談できる関係を作っておくのが顧問契約です。
この書式は特に依頼する企業側に配慮した内容になっており、弁護士側の都合だけで一方的に条件を決められることがないよう工夫されています。例えば顧問料を値上げする場合は3ヶ月前の通知と企業側の同意が必要ですし、企業側からは1ヶ月前の通知でいつでも契約を終了できる一方、弁護士側からは2ヶ月前の通知と相当な理由が必要という設計です。また守秘義務違反や利益相反行為があった場合は即座に契約を解除できる条項も盛り込まれています。
実際の使用場面としては、初めて顧問弁護士を雇う中小企業やスタートアップ企業、これまで口頭だけの関係だったものをきちんと書面化したい経営者、別の法律事務所に切り替える際などに活用できます。Word形式で提供されますので、企業名や顧問料の金額、契約期間などをご自身で自由に編集することが可能です。専門用語もできるだけ分かりやすく書かれているため、法律に詳しくない方でもスムーズに利用できる内容となっています。
【2】条文タイトル
第1条(業務内容) 第2条(業務の方法) 第3条(顧問料) 第4条(守秘義務) 第5条(契約期間) 第6条(別途業務の取扱い) 第7条(利益相反の禁止) 第8条(責任) 第9条(契約の変更・解約) 第10条(協議事項) 第11条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(業務内容)
この条項では、弁護士が何をしてくれるのかを定めています。基本的には会社の事業に関わる法律問題について助言や相談対応をしてくれるという内容です。「適切かつ迅速に」という文言を入れることで、弁護士側に丁寧で素早い対応を求める姿勢を明確にしています。
第2条(業務の方法)
相談の仕方について決めた条項です。電話やメール、対面での面談、最近ではZoomなどのオンライン会議も含まれます。重要なのは「原則3営業日以内に回答」という部分で、弁護士が放置して返事をくれないという事態を防ぐ効果があります。例えば取引先から契約書が届いて急いで確認したいとき、1週間も2週間も待たされては困りますよね。緊急時にはさらに早い対応を求められる点も明記されています。また簡単な書類作成なども無料でやってもらえることになっており、顧問料の範囲内でできるだけ多くのサポートを受けられる設計です。
第3条(顧問料)
毎月支払う料金について定めた条項です。金額は空欄になっているので実際の交渉で決めます。支払方法は銀行振込で、振込手数料はこちら持ちという一般的な内容ですが、大事なのは第3項です。弁護士側が勝手に値上げできないようになっており、値上げしたいなら3ヶ月前に通知して企業側の同意が必要です。同意しなければ従来の料金のままでいいので、突然の値上げで困ることがありません。
第4条(守秘義務)
弁護士が知った会社の情報を外部に漏らさないという約束です。顧問弁護士には経営の内情や取引先の情報、場合によっては不祥事の相談など、かなりセンシティブな話をすることになります。これが漏れたら大変ですから、契約終了後も5年間は守秘義務が続くとしています。もし違反したら損害賠償を請求できることも明記されており、抑止力になります。ただし裁判所からの命令など法律で開示が求められる場合や、こちらが了承した場合は別です。
第5条(契約期間)
契約がいつからいつまで有効かを決める条項です。最初は1年間で、期間満了の2ヶ月前までに「やめます」と言わなければ自動的に1年延長される仕組みです。これを自動更新といいます。毎年契約書を作り直す手間が省けて便利ですし、長期的な信頼関係を築きやすくなります。
第6条(別途業務の取扱い)
顧問料で対応してもらえるのは日常的な相談や簡単な書類作成までで、実際に裁判になったり、相手方との交渉を任せたり、複雑な契約書を一から作ってもらったりする場合は追加料金が発生するという内容です。これは一般的な慣行で、顧問料はあくまで「相談料」のようなものだと理解してください。ただし追加料金については事前に話し合って金額を決め、書面で了承してから仕事が始まるので、後から高額請求されるリスクは避けられます。また顧問料の範囲でもできる限りアドバイスはしてくれるとされているので、すぐに追加料金という話にはなりません。
第7条(利益相反の禁止)
弁護士がうちの会社の不利になることをしてはいけない、という条項です。例えば競合他社の顧問も同時に引き受けるとか、取引先とトラブルになったときに相手側の味方をするといったことは禁止されます。もしそういう可能性がある依頼を受けそうになったら、事前に報告して了承を得ることが義務付けられています。これによって安心して内部情報を共有できます。
第8条(責任)
弁護士は誠実に仕事をする義務があり、わざと間違えたり著しく不注意なアドバイスをしたりして損害が出た場合は賠償責任を負うという内容です。もちろん弁護士も人間なので完璧ではありませんが、プロとしての最低限の注意を払って業務にあたることが求められます。
第9条(契約の変更・解約)
契約内容を変えたいときや、やめたいときのルールです。企業側からはいつでも見直しを提案でき、1ヶ月前に通知すれば理由を問わず契約を終了できます。一方、弁護士側からやめる場合は2ヶ月前の通知と相当な理由が必要で、企業側に配慮した設計になっています。また弁護士が契約違反をしたり守秘義務を破ったりした場合は、こちらから即座に契約を打ち切れることも定められており、企業側の権利が強く保護されています。
第10条(協議事項)
契約書に書いていないことが起きたり、解釈で意見が分かれたりしたときは、お互い話し合って解決しましょうという条項です。いきなり裁判という話にならないよう、まずは冷静に協議する姿勢を示しています。
第11条(管轄裁判所)
万が一裁判になった場合、どこの裁判所で争うかを決めた条項です。企業の本店所在地を管轄する裁判所としているので、わざわざ遠くの裁判所まで出向く必要がなく便利です。これも企業側に配慮したポイントといえます。
【4】活用アドバイス
この契約書を使う際は、まず具体的な数字を埋めることから始めましょう。特に第3条の顧問料は月額いくらにするか事前に弁護士とよく話し合ってください。相場は企業規模や相談頻度によって月3万円から10万円程度まで幅があります。
次に第6条の別途業務について、どこまでが顧問料に含まれてどこからが追加料金なのか、具体例を挙げながら確認しておくとトラブル防止になります。例えば「簡単な契約書チェックは何ページまで無料か」「訴訟になった場合の報酬体系はどうなるか」などです。
また第2条で「3営業日以内に回答」とありますが、これは目安であって絶対ではありません。複雑な問題ならもっと時間がかかることもあるでしょう。ただしこう書いておくことで、弁護士側も優先的に対応してくれる効果があります。
契約書に署名捺印する前に、弁護士事務所の評判や実績、得意分野なども調べておくことをお勧めします。企業法務に強い事務所なのか、特定の業界に詳しいのかなど、自社のニーズに合っているかチェックしましょう。
【5】この文書を利用するメリット
最大のメリットは、企業側の立場がしっかり守られた内容になっている点です。多くの顧問契約書は弁護士側が用意するため、どうしても法律事務所に有利な内容になりがちですが、この書式は依頼する企業側の視点で作られています。
具体的には、料金の一方的な値上げを防ぐ仕組み、企業側から柔軟に解約できる条項、弁護士の守秘義務違反や利益相反に対する厳しいペナルティなどが盛り込まれています。弁護士と対等な立場で契約を結べることで、遠慮なく相談しやすい関係を築けます。
また専門用語が少なく分かりやすい表現で書かれているため、法律に詳しくない経営者でも内容を理解しやすく、安心して使えます。Word形式なので自社の状況に合わせて自由にカスタマイズできる点も大きな利点です。
この契約書があることで、口約束だけでは曖昧になりがちな顧問弁護士との関係が明確になり、何かあったときの対応もスムーズになります。会社を守るための備えとして、ぜひ活用していただきたい書式です。
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