【1】書式概要
この「Letter of Intent(基本合意書)」雛型は、企業間の合併・買収(M&A)交渉の初期段階で使用される重要な文書です。日英両言語で表記されているため、国際的な取引において特に価値があります。この雛型は、株式取得の基本条件、取引の大まかな流れ、デューデリジェンスや取締役会の承認といった重要なプロセスを明確に示しています。
特筆すべき点として、この文書は法的拘束力を持たない意向表明として設計されており、正式な売買契約締結前の枠組みを提供するものです。改正民法に対応しており、企業間の基本合意を形成する際の重要な要素がすべて含まれています。株式取得価格、支払い方法、企業統合後の経営体制、取締役会の構成変更、必要な承認プロセス、情報開示の基準などが明確に定義されています。
この雛型を活用することで、M&A交渉の初期段階での意向確認がスムーズに進み、後の正式契約への移行が効率的になります。特に国際取引において重要となる日英両言語での表記は、コミュニケーションの齟齬を防ぎ、両当事者間の相互理解を促進します。法務部門や経営企画部門、国際取引に関わる企業担当者にとって、時間と専門知識を節約できる貴重なリソースとなるでしょう。
〔項目概要〕
- 株式取得の基本条件(株価)
- 総取引額
- 支払い方法
- 企業統合後の構造
- 取締役会の構成変更
- 契約書案の送付
- 契約締結と臨時取締役会のスケジュール
- 報告要件
- 共同プレスリリース
- 株主への推奨事項
- デューデリジェンスの機会
- 取締役会承認の必要性
- 法的拘束力に関する免責事項
【2】逐条解説
前文
この部分では基本合意書の性質と目的を明確にしています。特に重要なのは、この文書が法的拘束力を持たないことを明示している点です。両当事者は情報提供や誠実な交渉に最大限努力することに合意していますが、売買契約締結を強制するものではありません。あくまで取引の概要を示す文書として位置づけられています。
第1条
ABC社がXYZ社の発行済み普通株式を1株あたり15ドルで現金取得する意向を示しています。これは買収価格の基本条件を定めるもので、取引の根幹となる部分です。
第2条
全株式の取得総額が1億5,000万ドルになることを明示しています。これにより取引規模が明確になり、資金調達や取引承認の際の重要な参考情報となります。
第3条
対価の支払い方法が現金であることを規定しています。これは株式交換や他の方法ではなく、現金による取引であることを明確にするものです。
第4条
買収後の企業構造について、XYZ社はABC社の完全子会社として存続することを定めています。これにより組織再編の基本方針が示されています。
第5条
経営統合に関する重要事項として、XYZ社の取締役1名がABC社の取締役会に加わることを定めています。これは買収後の統合プロセスとガバナンス体制に関する合意です。
第6条
手続きの流れとして、ABC社が売買契約書の草案をXYZ社に送付することを明記しています。これにより交渉プロセスの第一段階が設定されています。
第7条
契約書への署名とXYZ社の臨時取締役会の開催時期を12月と予定しており、取引完了へのタイムラインを示しています。
第8条
情報開示に関する規定で、米国証券取引委員会(SEC)の要件に基づき四半期ごとの報告が必要であることを明示しています。具体的な報告要件は別途覚書で詳細化される予定です。
第9条
広報戦略として、売買契約合意後に両社による共同プレスリリースを発表し、合併の詳細を公表することを定めています。これは株主や市場への情報開示の方針です。
第10条
XYZ社の取締役会が株主に対して全会一致で合併に賛成票を投じるよう推奨することを明記しています。これにより株主総会での承認取得を円滑にする意図が示されています。
第11条
両当事者がデューデリジェンス(資産査定)を実施する機会を持つことを保証しています。これは取引前の重要な調査プロセスの権利を確保するものです。
第12条
両社とも本取引を進めるには各社の取締役会の承認が必要であることを規定しています。これはコーポレートガバナンス上の重要な手続き要件です。
第13条
前文と同様の内容を再確認する形で、この基本合意書が法的拘束力を持たず、法的責任や義務を生じさせるものではないことを強調しています。これにより、文書の性質と限界が明確に示されています。