第1条(賃貸借契約の解除)
この条項では、契約の前提となる基本情報を明確にしています。具体的には、当事者間で土地の賃貸借契約を合意解除したことを確認し、対象となる不動産(土地および建物)の詳細、元の賃貸借契約の情報(契約日、期間、賃料)を明記しています。
例えば、駐車場として貸していた土地の場合、「所在:東京都新宿区西新宿1丁目、地目:宅地、地積:100平方メートル」などと具体的に特定します。これにより、契約の対象物件が明確になり、後々のトラブルを防止できます。
第2条(明渡し期限)
土地の明渡し期限を定め、明渡し期限までは日割り計算した賃料で土地を使用できることを規定しています。この条項は、借主が立ち退きの準備をする期間を確保するとともに、その間の土地使用料の扱いを明確にする重要な役割を果たします。
実務では、例えば3ヶ月後の明渡し期限を設定することが多く、その間に借主は移転先を確保したり、建物の解体工事の段取りを組んだりします。明渡し期限までの日割り賃料を認めることで、借主の経済的負担に配慮しつつ、スムーズな明渡しを促進する効果があります。
第3条(明渡期限)
前条の明渡し期限までに、借主は建物を収去して土地を明け渡す義務があることを定めています。明け渡し時期を午前0時と明確にすることで、明渡しの完了時点に関する解釈の相違を防ぎます。
例えば、商業施設として利用されていた場合、営業終了後に原状回復工事を行い、期限日の午前0時までに完全に明け渡すという流れになります。この時間設定により、貸主は明渡し期限の当日から新たな利用計画を開始できます。
第4条(立退料)
期限内に土地を更地として明け渡した場合に支払われる立退料の金額と支払条件を規定しています。立退料は明渡しと引き換えに支払われるため、借主の迅速な明渡しを促す効果があります。
実際のケースでは、借地上の建物の価値や移転費用、営業損失などを考慮して立退料が決定されます。例えば、長年飲食店を営業していた借主が立ち退く場合、移転費用や顧客減少による営業損失を補填する意味で、数百万円の立退料が設定されることもあります。
第5条(期限内に明渡さない場合)
明渡し期限を守らなかった場合のペナルティを定めています。具体的には、明渡し期限から実際の明渡し完了までの期間に応じた損害金の支払い義務と、立退料請求権の喪失を規定しています。
例えば、月額30万円の違約金が設定されていれば、15日遅延した場合は15万円の損害金が発生するといった具合です。これにより、借主に期限遵守のインセンティブを与えるとともに、遅延により貸主が被る損害の補償を図っています。
第6条(残置物の処分)
明渡し期限後に土地に残された物品の取扱いを定めています。残置物は所有権放棄とみなされ、貸主が自由に処分できること、処分費用は借主負担であることを明記しています。
例えば、倉庫として使用されていた土地で、明渡し後に資材や機械が残されていた場合、貸主はそれらを処分する権利を持ち、処分費用を借主に請求できます。この条項により、残置物をめぐるトラブルを未然に防止できます。
第7条(立退料の不払い)
借主が期限内に土地を明け渡したにもかかわらず、貸主が立退料を支払わない場合の対応を規定しています。具体的には、借主は貸主に対して年率での損害金の支払いを請求できることを定めています。
実務では、例えば年5%の損害金が設定されていれば、100万円の立退料に対して、1か月遅延した場合は約4,000円の損害金が発生します。この条項により、貸主にも立退料の支払期限を守るインセンティブが生まれます。
第8条(明渡期限までの占有等の移転)
借主が明渡し期限までに土地や建物の現状を変更したり、第三者に占有を移転したりした場合の対応を規定しています。このような行為があった場合、借主は期限の利益を失い、直ちに土地を明け渡す義務が生じ、立退料も請求できなくなります。
例えば、明渡し期限が3か月後に設定されているにもかかわらず、借主が土地を第三者に転貸した場合、貸主は即時の明渡しを要求でき、立退料の支払義務も免れます。この条項により、借主による契約の潜脱行為を防止できます。
第9条(清算条項)
当事者間で、契約書に定める以外の債権債務が存在しないことを相互に確認する条項です。この条項により、将来的な追加請求などのトラブルを防止します。
例えば、過去の滞納賃料や修繕費などの未精算分がある場合でも、この条項によりそれらの請求権は消滅します。実務では、明渡し交渉が長期化した場合など、様々な請求が発生しうる状況での円満解決に役立ちます。
第10条(協議)
契約書に定めのない事項については、当事者間の協議により解決することを定めています。すべての事態を契約書で想定することは困難なため、予期せぬ状況に対応するための柔軟性を確保する条項です。
例えば、契約締結後に法改正があった場合や、自然災害により明渡し期限までに建物解体が困難になった場合などに、この条項に基づいて協議することになります。
第11条(管轄合意)
契約に関連する紛争が発生した場合の管轄裁判所を定めています。通常は、物件所在地を管轄する地方裁判所が指定されます。
例えば、大阪市内の土地であれば「大阪地方裁判所」が指定されることが多いでしょう。この条項により、紛争発生時の裁判管轄が明確になり、当事者の予測可能性が高まります。
この和解契約書は、土地の明渡しに関する当事者間の合意を明確にし、円滑な明渡しと適切な金銭授受を促進するための重要な書面です。特に立退料の支払条件や明渡し遅延時のペナルティ、残置物の取扱いなどは実務上のトラブルが多い事項であり、これらを明確に規定することで、当事者間の紛争リスクを大幅に減らすことができます。賃貸借関係の終了場面では、この契約書をベースに、個別の状況に応じた調整を加えて活用することをお勧めします。